2辺とその間でない角が与えられた場合
2辺とその間でない角が与えられた場合は、三角形がただ1つ決定するとは限らない。
たとえば、$b$、$c$ と $B$ が与えられている場合を考えてみよう。
$B$ を鋭角としたとき、$b$ の値によって次の4つの場合があるとわかる。このとき、点 $\text{A}$ を中心とする半径 $b$ の円を考えるとわかりやすい。
- $\boldsymbol{c\leqq{b}}$ の場合
$\triangle\text{ABC}$ は1つだけ存在する。 - $\boldsymbol{c\sin{B}{\lt}b{\lt}c}$ の場合
2つの $\triangle\text{ABC}$ が存在する。 - $\boldsymbol{c\sin{B}=b}$ の場合
$\triangle\text{ABC}$ は1つだけ存在する。
このとき、$\triangle\text{ABC}$ は $C=90^\circ$ の直角三角形となる。 - $\boldsymbol{b{\lt}c\sin{B}}$ の場合
このような三角形は存在しない。
d. 2辺とその間でない角が与えられた場合
- $A=30^\circ$、$a=\sqrt{2}$、$b=2$ である三角形において、$B$、$C$、$c$ を求めよ。
- $A=45^\circ$、$a=2$、$b=\sqrt{2}$ である三角形において、$B$、$C$、$c$ を求めよ。
- 正弦定理 $\dfrac{a}{\sin{A}}=\dfrac{b}{\sin{B}}$ を用いて
\[\sin{B}=\dfrac{2\sin30^\circ}{\sqrt{2}}=\dfrac{2\cdot\dfrac{1}{2}}{\sqrt{2}}=\dfrac{\sqrt{2}}{2}\]
より、$\boldsymbol{B=45^\circ}$ または $\boldsymbol{135^\circ}$ となる。
- $B=45^\circ$ のとき
$\blacktriangleleft$ このときは、次の図のようになっている。三角形の内角の和は $180^\circ$ なので \[C=180^\circ-(30^\circ+45^\circ)=\boldsymbol{105^\circ}\] また、点 $\text{C}$ からみる第1余弦定理 $c=b\cos{A}+a\cos{B}$ より \begin{align} c=&2\cos30^\circ+\sqrt{2}\cos45^\circ\\ =&2\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{2}+\sqrt{2}\cdot\dfrac{\sqrt{2}}{2} =\boldsymbol{\sqrt{3}+1} \end{align}
- $B=135^\circ$ のとき
$\blacktriangleleft$ このときは、次の図のようになっている。三角形の内角の和は $180^\circ$ なので \[C=180^\circ-(30^\circ+135^\circ)=\boldsymbol{15^\circ}\] また、点 $\text{C}$ からみた第1余弦定理 $c=b\cos{A}+a\cos{B}$ より \begin{align} c=&2\cos30^\circ+\sqrt{2}\cos135^\circ\\ =&2\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{2}+\sqrt{2}\cdot\left(-\dfrac{\sqrt{2}}{2}\right)\\ =&\boldsymbol{\sqrt{3}-1} \end{align}
- $B=45^\circ$ のとき
正弦定理 $\dfrac{a}{\sin{A}}=\dfrac{b}{\sin{B}}$を用いて
\begin{align} \sin{B}=\dfrac{\sqrt{2}\sin45^\circ}{2} =\dfrac{\sqrt{2}\cdot\dfrac{\sqrt{2}}{2}}{2}=\dfrac{1}{2} \end{align} より、$B=30^\circ$ または $150^\circ$ となるが、$B=150^\circ$ のときは、$A+B=45^\circ+150^\circ\gt180^\circ$ となって不適。よって、$\boldsymbol{B=30^\circ}$ となる。
三角形の内角の和は $180^\circ$ なので \[C=180^\circ-(45^\circ+30^\circ)=\boldsymbol{105^\circ}\] また、点 $\text{C}$ からみる第1余弦定理 $c=b\cos{A}+a\cos{B}$ より \begin{align} c=&\sqrt{2}\cos45^\circ+2\cos30^\circ\\ =&\sqrt{2}\cdot\dfrac{\sqrt{2}}{2}+2\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{2}\\ =&\boldsymbol{1+\sqrt{3}} \end{align}
四角形の計量
四角形の計量
四角形 $\text{ABCD}$ において、$\text{AB}=5$、$\text{BC}=8$、$\text{CD}=5$、$\angle\text{ABC}=60^\circ$、$\angle\text{CAD}=45^\circ$ のとき、次の問に答えよ。
- $\text{AC}$ の長さを求めよ。
- $\text{AD}$ の長さを求めよ。
- 四角形 $\text{ABCD}$ の面積を求めよ。
- $\triangle\text{ABC}$ に点 $\text{B}$ からみる余弦定理
\begin{align}
\text{AC}^2=&\text{AB}^2+\text{BC}^2\\
&\qquad-2\cdot\text{AB}\cdot\text{BC}\cos{\angle\text{ABC}}
\end{align}
を用いて
$\blacktriangleleft$ 2辺とその間の角が与えられている\begin{align} \text{AC}^2=&5^2+8^2-2\cdot5\cdot8\cos60^\circ\\ =&25+64-80\cdot\frac{1}{2}=49 \end{align} よって、$\boldsymbol{\text{AC}=7}$ である。
- $\triangle\text{CAD}$ に点 $\text{A}$ からみる余弦定理
\begin{align}
\text{DC}^2=&\text{AD}^2+\text{AC}^2\\
&\qquad-2\cdot\text{AD}\cdot\text{AC}\cos{\angle\text{CAD}}
\end{align}
を用いて
$\blacktriangleleft$ 2辺とその間でない角が与えられている\begin{align} &5^2=\text{AD}^2+7^2-2\cdot\text{AD}\cdot7\cos45^\circ\\ \Leftrightarrow~&25=\text{AD}^2+49-2\cdot7\cdot\dfrac{\sqrt{2}}{2}\text{AD}\\ \Leftrightarrow~&\text{AD}^2-7\sqrt{2}\text{AD}+24=0 \end{align} 2次方程式の解の公式より \begin{align} \text{AD}=&\dfrac{7\sqrt{2}\pm\sqrt{\left(7\sqrt{2}\ \right)^2-4\cdot24}}{2}\\ =&\dfrac{7\sqrt{2}\pm\sqrt{98-96}}{2}=\dfrac{7\sqrt{2}\pm\sqrt{2}}{2}\\ =&\boldsymbol{3\sqrt{2}}または\boldsymbol{4\sqrt{2}} \end{align}
$\triangle\text{ABC}$ の面積を $S_1$、$\triangle\text{CAD}$ の面積を $S_2$ とすると \begin{align} S_1=&\dfrac{1}{2}\cdot\text{AB}\cdot\text{BC}\sin\angle\text{ABC}\\ =&\dfrac{1}{2}\cdot5\cdot8\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{2}=10\sqrt{3}\\ S_2=&\dfrac{1}{2}\text{AC}\cdot\text{AD}\sin\angle\text{CAD}\\ =&\dfrac{1}{2}\cdot7\cdot\text{AD}\cdot\dfrac{\sqrt{2}}{2} \end{align} つまり、$\text{AD}=3\sqrt{2}$ のときは $S_2=\dfrac{21}{2}$、$\text{AD}=4\sqrt{2}$ のときは $S_2 = 14$。
四角形 $\text{ABCD}$ の面積は $S_1+S_2$ に等しいので、 \[\text{AD}=3\sqrt{2}のときは\boldsymbol{10\sqrt{3}+\dfrac{21}{2}}\] \[\text{AD}=4\sqrt{2}のときは\boldsymbol{10\sqrt{3}+14}\] が求める答えになる。
この問では図のように2つの場合がある。