Processing math: 100%

(a+b)nの展開式(2項定理)

一般に, (a+b)n の展開式における anrbr の係数は, n 個の (a+b) のうち, r 個から b を,残りの nr 個から a を取り出す方法の総数 nCr となる.このことから,次の式(2項定理(binomial theorem))が成り立つことがわかる.

2項定理

n を自然数とするとき, (a+b)n

(a+b)n= nC0an+ nC1an1b++ nCn1abn1+ nCnbn

と展開できる.

2項定理の係数になるという意味で,組合せの総数 nCr のことを2項係数(binomial coefficient)ともいう.

例えば, (a+2b)4 は2項定理を用いて

(a+2b)4= 4C0a4+ 4C1a3(2b)+ 4C2a2(2b)2+ 4C3a(2b)3+ 4C4(2b)4= a4+4a3(2b)+6a2(2b)2+4a(2b)3+(2b)4= a4+8a3b+24a2b2+32ab3+16b4

と展開できる.

展開された式の係数

次の展開式において, [] 内で指定された項の係数を求めよ.

  1. (2x+1)6[x2]
  2. (2x3y)5[x3y2]
  3. (x212x)7[1x]
  4. (x12x2)12[]

  1. (2x+1)6 を展開したとき, x2 を含む項は
  2. 6C4(2x)214

    2項定理を部分的に使った

    となる.よって, x2 の係数は

    6C422=60
  3. (2x3y)5 を展開したとき, x3y2 を含む項は
  4. 5C2(2x)3(3y)2

    2項定理を部分的に使った

    となる.よって, x3y2 の係数は 5C223(3)2=720

  5. (a+b)7 の展開において, a=x2,b=12x としたものが (x212x)7 である. a2b5 を計算すると 1x の項ができるので,このときの係数を求める.
  6. 7C5a2b5= 7C5(x2)2(12x)5= 7C5(12)51x= 21321x

    2項定理を部分的に使った

    よって,求める係数は 2132である.

  7. (a+b)12 の展開において, a=x,b=12x2 としたものが (x12x2)12 である. a8b4 を計算すると定数項ができるので,このときの係数を求める.

    12C4a8b4= 12C4x8(12x2)4= 12C4(12)4= 49516

    2項定理を部分的に使った

    よって,求める係数は 49516 である.

2項定理の応用

次の展開式において, [] 内で指定された項の係数を求めよ.

  1. (2x+yz)8[x2y3z3]
  2. (x2yz)5[x2yz2]

  1. (2x+yz)8={2x+(yz)}8 として考える.
  2. これを展開したとき, x2 の項は

    8C6(2x)2(yz)6

    2項定理を部分的に使った

    として計算される.

    さらに (yz)6 を展開したとき, y3 の項は

    6C3y3(x)3

    2項定理を部分的に使った

    として計算される.

    よって, (2x+yz)8 を展開したときの x2y3z3 の係数は

    8C6 22 6C3(1)3= 4 8C2 6C3=2240
  3. (x2yz)5={x+(2yz)}5 として考える. これを展開したとき, x2 の項は
  4. 5C3x2(2yz)3

    2項定理を部分的に使った

    として計算される.

    さらに (2yz)3 を展開したとき, y の項は

    3C2(2y)(z)2

    2項定理を部分的に使った

    として計算される.

    よって, (x2yz)8 を展開したときの x2yz2 の係数は

     5C3 3C2(2)(1)2= 2 5C2 3C1=60

2項係数の和

2項定理を用いて次の等式を証明せよ.

  1. 2n= nC0+ nC1+ nC2++ nCn1+ nCn
  2. 0= nC0 nC1+ nC2+(1)n1 nCn1+(1)n nCn
  3. (1)n= nC02 nC1+22 nC2+(2)n1 nCn1+(2)n nCn

2項定理

 (a+b)n= nC0an+ nC1an1b+ nC2an2b2++ nCn1abn1+ nCnbn

において

  1. a=b=1 とおくと
  2. 2n= nC0+ nC1+ nC2++ nCn1+ nCn

    となり,確かに成立する.

  3. a=1,b=1 とおくと
  4. 0= nC0 nC1+ nC2+(1)n1 nCn1+(1)n nCn

    となり,確かに成立する.

  5. a=1,b=2 とおくと
  6.  (1)n= nC02 nC1+22 nC2+(2)n1 nCn1+(2)n nCn

    となり,確かに成立する.