(a+b)nの展開式(2項定理)
一般に, (a+b)n の展開式における an−rbr の係数は, n 個の (a+b) のうち, r 個から b を,残りの n−r 個から a を取り出す方法の総数 nCr となる.このことから,次の式(2項定理(binomial theorem))が成り立つことがわかる.
2項定理
n を自然数とするとき, (a+b)n は
(a+b)n= nC0an+ nC1an−1b+⋯+ nCn−1abn−1+ nCnbnと展開できる.
2項定理の係数になるという意味で,組合せの総数 nCr のことを2項係数(binomial coefficient)ともいう.
例えば, (a+2b)4 は2項定理を用いて
(a+2b)4= 4C0a4+ 4C1a3(2b)+ 4C2a2(2b)2+ 4C3a(2b)3+ 4C4(2b)4= a4+4a3(2b)+6a2(2b)2+4a(2b)3+(2b)4= a4+8a3b+24a2b2+32ab3+16b4と展開できる.
展開された式の係数
次の展開式において, [] 内で指定された項の係数を求めよ.
- (2x+1)6[x2]
- (2x−3y)5[x3y2]
- (x2−12x)7[1x]
- (x−12x2)12[定数項]
- (2x+1)6 を展開したとき, x2 を含む項は 6C4(2x)214
- (2x−3y)5 を展開したとき, x3y2 を含む項は 5C2(2x)3(−3y)2
- (a+b)7 の展開において, a=x2,b=−12x としたものが (x2−12x)7 である. a2b5 を計算すると 1x の項ができるので,このときの係数を求める. 7C5a2b5= 7C5(x2)2(−12x)5= 7C5(−12)51x= −2132⋅1x
- (a+b)12 の展開において, a=x,b=−12x2 としたものが (x−12x2)12 である. a8b4 を計算すると定数項ができるので,このときの係数を求める.
12C4a8b4= 12C4x8(−12x2)4= 12C4(−12)4= 49516
↑ 2項定理を部分的に使った
よって,求める係数は 49516 である.
↑ 2項定理を部分的に使った
となる.よって, x2 の係数は
6C4⋅22=60↑ 2項定理を部分的に使った
となる.よって, x3y2 の係数は 5C2⋅23⋅(−3)2=720
↑ 2項定理を部分的に使った
よって,求める係数は −2132である.
2項定理の応用
次の展開式において, [] 内で指定された項の係数を求めよ.
- (2x+y−z)8[x2y3z3]
- (x−2y−z)5[x2yz2]
- (2x+y−z)8={2x+(y−z)}8 として考える.
- (x−2y−z)5={x+(−2y−z)}5 として考える. これを展開したとき, x2 の項は 5C3x2(−2y−z)3
これを展開したとき, x2 の項は
8C6(2x)2(y−z)6↑ 2項定理を部分的に使った
として計算される.
さらに (y−z)6 を展開したとき, y3 の項は
6C3y3(−x)3↑ 2項定理を部分的に使った
として計算される.
よって, (2x+y−z)8 を展開したときの x2y3z3 の係数は
8C6⋅ 22⋅ 6C3⋅(−1)3= −4⋅ 8C2⋅ 6C3=−2240↑ 2項定理を部分的に使った
として計算される.
さらに (−2y−z)3 を展開したとき, y の項は
3C2(−2y)(−z)2↑ 2項定理を部分的に使った
として計算される.
よって, (x−2y−z)8 を展開したときの x2yz2 の係数は
5C3⋅ 3C2⋅(−2)⋅(−1)2= −2⋅ 5C2⋅ 3C1=−602項係数の和
2項定理を用いて次の等式を証明せよ.
- 2n= nC0+ nC1+ nC2+⋯+ nCn−1+ nCn
- 0= nC0− nC1+ nC2−⋯+(−1)n−1 nCn−1+(−1)n nCn
- (−1)n= nC0−2 nC1+22 nC2−⋯+(−2)n−1 nCn−1+(−2)n nCn
2項定理
(a+b)n= nC0an+ nC1an−1b+ nC2an−2b2+⋯+ nCn−1abn−1+ nCnbnにおいて
- a=b=1 とおくと 2n= nC0+ nC1+ nC2+⋯+ nCn−1+ nCn
- a=1,b=−1 とおくと 0= nC0− nC1+ nC2−⋯+(−1)n−1 nCn−1+(−1)n nCn
- a=1,b=−2 とおくと (−1)n= nC0−2 nC1+22 nC2−⋯+(−2)n−1 nCn−1+(−2)n nCn
となり,確かに成立する.
となり,確かに成立する.
となり,確かに成立する.