乗法定理
条件付確率の定義である (???) の分母を払うと
P(A∩B)=P(A)PA(B)が成り立つ.これを確率の乗法定理(multiplication theorem)という.
乗法定理
ある試行における事象を A,B とするとき
P(A∩B)=P(A)PA(B)が成り立つ.
吹き出し無題
分母を払っただけで,「定理」というのはおかしい気がするかもしれないが,この式には,「条件付確率での (???) の n(A∩B)n(A) で簡単に条件付確率 PA(B) が求まるときには,逆にこれを利用して P(A∩B) が求められますよ」という意味が込められている.
先程の例でいうなら,スペードのエースを引く確率 P(A∩B) を求めるのに, まずスペードを引く確率 P(A)=37 に,スペードを引いた条件の下でそれがエースである確率 PA(B)=13 を かけて
P(A∩B)=37×13=17とすればよいことをいっている.
暗記条件付確率と乗法定理~その1~
5本のうち2本が当りのくじがあり,そこから1本ずつくじを引く.
A :「1回目のくじ引きで当りが出る」
B :「2回目のくじ引きで当りが出る」
という事象 A,B を考える.このとき,積事象 A∩B つまり
A∩B :「1回目と2回目のくじ引きで連続して当りが出る」
という事象の確率 P(A∩B) を以下の2通りで求めよ.
- 標本空間を連続して2回を引いたときのくじの組合せとして P(A∩B) を求めよ.
- 乗法定理 P(A∩B)=P(A)PA(B) を利用して求めよ.
- 5本のくじから連続して2本くじを引くときの組合せは 5C2 通りあり,これは同様に確からしい.このうち,2本とも当りであるのは1通りであるから
▴ 5本のくじに番号をつけると,2本のくじ引きの組合せは①②,①③,①④,①⑤,②③,②④,②⑤,③④, ③⑤,④⑤ の 5C2 通りある.①と②を当りくじとすれば,連続して2回当るのは①②の場合である.
P(A\cap{B})=\frac{1}{_{5}\mathrm{C}_{2}}=\boldsymbol{\frac{1}{10}}となる.
- P(A) つまり,1回目のくじ引きで当る確率は P(A)=\frac{2}{5}
P_A(B) つまり,1回目のくじ引きで当った条件の下,2回目のくじ引きで当る確率は
P_A(B)=\frac{n(A\cap{B})}{n(A)}=\frac{1}{4}よって,乗法定理より
\begin{align} P(A\cap{B})&=P(A)P_A(B)\\ &=\frac{2}{5}\times\frac{1}{4}=\boldsymbol{\frac{1}{10}} \end{align}となる.
条件付確率と乗法定理~その2~
4本の当りくじを含む10本のくじがある. 甲,乙がこの順にこのくじを1本ずつ引く. ただし,引いたくじはもとに戻さない. このとき次の問に答えよ.
- 甲が当ったという条件の下で,乙が当る確率を求めよ.
- 甲が当り,乙も当る確率を求めよ.
- 乙の当る確率を求めよ.
事象 A,B を
A :「甲が当る」
B :「乙が当る」
とおく.
- 甲が当った状況では,くじは9本残っていて,その中に当りくじは3本あるから P_A(B)=\frac{3}{9}=\boldsymbol{\frac{1}{3}}
- 求める確率はP(A\cap{B}) である. \begin{align} P(A\cap{B})&=P(A)\cdot P_A(B)\\ &=\frac{4}{10}\cdot\frac{1}{3}=\boldsymbol{\frac{2}{15}} \end{align}
- 甲が当り,乙が当るのは2. より \dfrac{2}{15} である.また,甲がはずれて,乙が当るのは
\begin{align}
P(\overline{A}\cap{B})&=P(\overline{A})\cdot P_{\overline{A}}(B)\\
&=\frac{6}{10}\cdot\frac{4}{9}=\frac{4}{15}
\end{align}
\blacktriangleleft 乗法定理
よって, \dfrac{2}{15}+\dfrac{4}{15}=\boldsymbol{\dfrac{2}{5}} となる.
《別解:標本空間を乙の引くくじにとる》
乙の引きうるくじは10通りあり,これらは同様に確からしい. このうち当りくじは4本あるので,乙が当りくじを引く確率は
\frac{4}{10}=\boldsymbol{\frac{2}{5}}
\blacktriangleleft 条件付確率
\blacktriangleleft 乗法定理