平方による比較

$a > 0$ かつ $b > 0$ のとき, $a + b > 0$ で

\begin{align} a^2-b^2=(a+b)(a-b) \end{align}

であるから, $a – b$ の符号と $a^2 – b^2$ の符号は同じものになり次のことがいえる.

平方による比較

(注)

$a\geqq0$ かつ $b\geqq0$ のとき

\[a>b~\Longleftrightarrow~a^2>b^2\]

が成り立つ.

このことから,2つの数 $a,b$ がともに $0$ 以上のときには, $a > b$ が成り立つことを証明する代わりに, $a^2 > b^2$ が成り立つことを証明すればよいことがわかる. この論法は,次の例題でみるように,根号を含む不等式の変形の際に活躍する.

平方による比較

次の不等式を証明せよ.等号のあるものについては,等号が成り立つ場合を調べよ.

  1. $ a > 0$ かつ $b > 0$ のとき
    $\sqrt{a}+\sqrt{b}>\sqrt{a+b}$を証明せよ.
  2. $a\geqq0$ かつ $b\geqq0$ のとき,
    $3\sqrt{a}+2\sqrt{b}\geqq\sqrt{9a+4b}$ を証明せよ.

  1. $\sqrt{a}+\sqrt{b}~(>0)\geqq0,\sqrt{a+b}~(>0)\geqq0$ なので, (左辺)$^2 > $ (右辺)$^2$ を示せばよい.        $\blacktriangleleft$ 平方による比較

    (左辺)$^2 − $ (右辺)$^2$

    \begin{eqnarray} &=&a+2\sqrt{ab}+b-(a+b)\\ &=&2\sqrt{ab}>0 \end{eqnarray}

    よって,(左辺) $>$ (右辺)が証明された.

  2. $3\sqrt{a}+2\sqrt{b}\geqq0,\sqrt{9a+4b}\geqq0$ なので,

    (左辺) $^2\geqq$ (右辺) $^2$ を示せばよい.     $\blacktriangleleft$ 平方による比較

    (左辺) $^2 −$ (右辺) $^2$

    \begin{align} &=\left(3\sqrt{a}+2\sqrt{b}\ \right)^2-\left(\sqrt{9a+4b}\ \right)^2\\ &=9a+12\sqrt{ab}+4b-(9a+4b)\\ &=12\sqrt{ab}\geqq0 \end{align}

    (左辺) $\geqq$ (右辺)が証明された.

    特に,等号が成立するのは, $12\sqrt{ab}=0$ ,すなわち $a = 0$ または $b = 0$ のときである.

さきほども述べたように,不等式 $A\geqq B$ を証明する基本は,それと同値の内容の $A-B\geqq0$ を証明することである. ある値が $0$ 以上になることをいうには,一般にはいろいろな方法があるが, 次の節から扱う有名な不等式を利用することが多い.