不等式の証明の基本について
不等式 $A > B$ を証明するには, $A$ がだんだん小さくなるように変形していって,それでもなお $B$ より大きいことを示せばよい. たとえば,$\sqrt{x^4+2x^2+2}>x^2+1$を示すには
\begin{eqnarray} \text{(左辺)}&=&\sqrt{x^4+2x^2+2}\\ &\gt&\sqrt{x^4+2x^2+1} ← 根号の中の値が1だけ小さくなっている\\ &=&\sqrt{(x^2+1)^2}\\ &=&x^2+1=\text{(右辺)} \end{eqnarray}とすればよい.
しかし,一般には $A > B$ と同値である $A − B > 0$ を示すことの方が簡単なことが多い. そのため,このテキストでも適宜 $A − B > 0$ を示す方法を利用する.
不等式の証明
不等式 $A > B$ を証明するには,それと同値の内容である, $A − B > 0$ を示せばよい.
なお $A>B\Rightarrow A\geqq{B}$ であるため, $A\geqq{B}$ を証明するには $A>B$ をいえば十分である.
不等式の証明-その1-
次の不等式を証明せよ.
- $a > 1,b > 1$ ならば,
$\qquad ab + 1 > a + b$ - $a > c,b > d$ ならば,
$\qquad ab + cd > ad + bc$
(左辺) $-$ (右辺)を計算すると
\begin{align} &ab+1-(a+b) \\ &=a(b-1)-(b-1) \\ &=(a-1)(b-1) \end{align}$a > 1,b > 1$ より,$a − 1 > 0,b − 1 > 0$ だから,$(a − 1)(b − 1) > 0$ が成り立つ.
以上より, $ab + 1 > a + b$ が証明された.
(左辺) $-$ (右辺)を計算すると
\begin{align} & (ab+cd)-(ad+bc) \\ &=a(b-d)-c(b-d) \\ &=(a-c)(b-d) \end{align}$a > c,b > d$ より, $a − c > 0,b − d > 0$ だから, $(a − c)(b − d) > 0$ が成り立つ.
以上より, $ab + cd > ad + bc$ が証明された.