三角不等式とは何か
2つの数 $a,b$ において
\begin{align} |a+b|\leqq|a|+|b| \end{align}が成立し,これを三角不等式(triangle inequality)という.
たとえば, $a = 2,b = 3$ とすると
(左辺)$=|2+3|=5$
(右辺)$=|2|+|3|=5$
となり,確かに(左辺) $\leqq$ (右辺)が成り立つ.
また, $a = − 2,b = 5$ とすると
(左辺)$=|-2+5|=3$
(右辺)$=|-2|+|5|=7$
となり,やはり(左辺) $\leqq$ (右辺)が成り立つ.
上では2つの数における三角不等式をみたが,3つ以上の数についても三角不等式は成り立ち,一般には次のようになる.
三角不等式
$n$ 個の数 $a_1,~a_2,~\cdots,~a_n$ において
\begin{align} &|a_1+a_2+\cdots+a_n|\\ \leqq&|a_1|+|a_2|+\cdots+|a_n| \end{align}が成り立つ.
等号成立は, $a_1,~a_2,~\cdots,~a_n$ がすべて同符号のときである( $0$ は含んでもよい)
特に, $n = 2$ のとき $|a_1+a_2|\leqq|a_1|+|a_2|$ であり, $ n = 3$ のとき$|a_1+a_2+a_3|\leqq|a_1|+|a_2|+|a_3|$ である.
暗記三角不等式の証明
$a_1,a_2,a_3$ に関して,次の不等式を証明せよ.また,等号が成立する条件も求めよ.
- $|a_1+a_2|\leqq |a_1|+|a_2|$
- $|a_1+a_2+a_3|$
$\qquad\leqq |a_1|+|a_2|+|a_3|$
両辺とも負でないから,それぞれを2乗した式
\begin{align} (|a_1+a_2|)^2\leqq(|a_1|+|a_2|)^2 \end{align} $\blacktriangleleft$ 平方による比較を示せばよい.
(右辺) $-$ (左辺)
\begin{align} &=(|a_1|+|a_2|)^2-(|a_1+a_2|)^2 \\ &=|a_1|^2+2|a_1||a_2|+|a_2|^2\\ &\qquad-(a_1+a_2)^2 \\ &={a_1}^2+2|a_1||a_2|+{a_2}^2\\ &\qquad-({a_1}^2-2a_1a_2+{a_2}^2) \end{align} $\blacktriangleleft a$が実数のとき $|a| 2 = a2$である \begin{align} &=2(|a_1||a_2|-a_1a_2)\geqq 0 \end{align} $\blacktriangleleft a$ が実数のとき$|a|\geqq{a}$であるとなるので,(左辺) $\leqq$ (右辺)である.
等号が成立するのは, $|a_1||a_2|− a_1a_2 = 0$ ,すなわち
\begin{align} &|a_1||a_2|-a_1a_2=0 \\ \Leftrightarrow~&|a_1a_2|-a_1a_2=0 \\ \Leftrightarrow~&a_1a_2\geqq0 \end{align} $\blacktriangleleft | a | | b | = | ab |$ である.$\blacktriangle a\geqq0\Leftrightarrow~|a|=a$ である
すなわち, $a_1$ と $a_2$ が同符号のとき( $0$ を含んでもよい)となる.
(左辺)を計算すると
\begin{align} &|a_1+(a_2+a_3)| \\ &\leqq|a_1|+|a_2+a_3| \\ &\leqq|a_1|+|a_2|+|a_3| \end{align} $\blacktriangleleft a_2 + a_3$ を一かたまりとして(1)を利用した.$\blacktriangle a_2$ と $a_3$ に関して(1)を利用した.
となるので,(左辺) $\leqq$ (右辺)である.
等号が成立するのは
\begin{cases} a_1(a_2+a_3)\geqq0 \qquad\cdots(a)\\ a_2a_3\geqq0 \quad\qquad\qquad\cdots(b) \end{cases}(b)より,i) $a_2\geqq0$ かつ $a_3\geqq0$ ,または ii) $~a_2\leqq0$ かつ$a_3\leqq0$ とわかるが
i) $ a_2\geqq0$ かつ $a_3\geqq0$ のとき
(a)より, $a_1\geqq0$
ii) $a_2\leqq0$ かつ $a_3\leqq0$ のとき
(a)より, $a_1\leqq0$
すなわち, $a_1,a_2,a_3$ がすべて同符号のとき( $0$ を含んでもよい)となる.