多項式の除法の一意性

(注)

ここまで計算してきた経験から,多項式の除法では,商や余りが必ず存在し,さらにそれらが一通りに定まることは明らかであろう.

一般に,ある定義で定められたものがただ一通りに定まることを一意性(uniqueness)という .次に,多項式の除法の一意性について,まとめておこう.

多項式の除法の一意性

多項式$f(x),g(x)$において

\begin{align} &f(x)=g(x)Q(x)+r(x)\\ &\qquad(\deg r(x) \lt \deg g(x)) \end{align}

を満たす多項式$Q(x),r(x)$が

ただ一通りに

存在する.

【証明:背理法】

多項式$f(x)$と$g(x)$について

$f(x)=g(x)Q_1(x)+r_1(x)$
$\deg r_1(x) \lt \deg g(x)$ $\tag{1}\label{takousikinozyohounoitiisei1}$

$f(x)=g(x)Q_2(x)+r_2(x)$
$\deg r_2(x) \lt \deg g(x)$ $\tag{2}\label{takousikinozyohounoitiisei2}$

と2通りに表されたとする.

$\eqref{takousikinozyohounoitiisei1}-\eqref{takousikinozyohounoitiisei2}$より

\begin{align} &0=g(x)Q_1(x)+r_1(x)\\ &-g(x)Q_2(x)-r_2(x)\\ \Leftrightarrow~&g(x)\left\{Q_1(x)-Q_2(x)\right\}\\ &=r_2(x)-r_1(x) \end{align} $\tag{3}\label{takousikinozyohounoitiisei3}$

となる.

$\eqref{takousikinozyohounoitiisei3}$において,$Q_1(x) – Q_2(x)$が$0$ではないとすると,左辺の次数が右辺の次数より大きくなってしまう. よって,$Q_1(x) – Q_2(x)$は$0$,つまり$Q_1(x) = Q_2(x)$である.

また,このとき③の左辺は$0$となるので

\begin{align} &0=r_2(x)-r_1(x)\\ \Leftrightarrow~&r_1(x)=r_2(x) \end{align}

以上より,商と余りが一致することが示されたので,多項式の除法の商と余りは一通りに定まることが証明された.