極限の考え方の基本~例2~

では、その例として、$g(x)=\dfrac{x^2-1}{x-1}$ において $\displaystyle\lim_{x\to1}~g(x)$ がいくつになるのか考えてみよう。

たとえば $x$ を $0.9$ からスタートして、$0.99,0.999,0.9999,\cdots$ と $1$ に近づけていくと \begin{align} g(0.9)&=\dfrac{0.9^2-1}{0.9-1}\\ &=\dfrac{(0.9-1)(0.9+1)}{0.9-1}=1.9\\ g(0.99)&=\dfrac{0.99^2-1}{0.99-1}\\ &=\dfrac{(0.99-1)(0.99+1)}{0.99-1}=1.99\\ g(0.999)&=\dfrac{0.999^2-1}{0.999-1}\\ &=\dfrac{(0.999-1)(0.999+1)}{0.999-1}\\ &=1.999\\ g(0.9999)&=\dfrac{0.9999^2-1}{0.9999-1}\\ &=\dfrac{(0.9999-1)(0.9999+1)}{0.9999-1}\\ &=1.9999 \end{align} と計算できるので、次の表のようにまとめられる。

$x$$0.9$$0.99$$0.999$$0.9999$$\cdots$
$f(x)$$1.9$$1.99$$1.999$$1.9999$$\cdots$
この表を右に続けていく、つまり $x$ を $1$ に近づけていくと、$g(x)$ の値は $2$ に近づいていくことがわかる。

また、$x$ を $1.5$ からスタートして、$1.25,1.125,1.0625,\cdots$ と、距離を半分ずつつめながら $1$ に近づけていくと \begin{align} g(1.5)&=\dfrac{1.5^2-1}{1.5-1}\\ &=\dfrac{(1.5-1)(1.5+1)}{1.5-1}=2.5\\ g(1.25)&=\dfrac{1.25^2-1}{1.25-1}\\ &=\dfrac{(1.25-1)(1.25+1)}{1.25-1}=2.25\\ g(1.125)&=\dfrac{1.125^2-1}{1.125-1}\\ &=\dfrac{(1.125-1)(1.125+1)}{1.125-1}\\ &=2.125\\ g(1.0625)&=\dfrac{1.0625^2-1}{1.0625-1}\\ &=\dfrac{(1.0625-1)(1.0625+1)}{1.0625-1}\\ &=2.0625\\ &\qquad\vdots \end{align} と計算できるので、次の表のようにまとめられる。

$x$$1.5$$1.25$$1.125$$1.0625$$\cdots$
$f(x)$$2.5$$2.25$$2.125$$2.0625$$\cdots$
この表からも、$x$ を $1$ に近づけると、$g(x)$ は $2$ に近づくことがわかる。つまり \[\lim_{x\to1}~g(x)=2\] であるといえる。

上の2つの計算では、$g(x)$ の $x$ に値を代入してから約分して計算したが、$x\neq1$ であるかぎり \[g(x)=\dfrac{x^2-1}{x-1}=\dfrac{(x-1)(x+1)}{x-1}=x+1\] であるから、このように先に約分してから $x$ に値を代入する方が楽になる。

いま、$g(x)$ の値は $x=1$ では(分母が $0$ になるので)定義されないが、$\displaystyle\lim_{x\to1}g(x)$ は $2$ として存在する、つまり \[\underbrace{\displaystyle\lim_{x\to1}g(x)}_{この値は2}\neq\underbrace{g(1)}_{存在してない!}\] であることに注意しよう。

極限の考え方

極限の考え方

このことを、グラフで考えてみる。$g(x)$ は $x\neq1$ で \[g(x)=x+1\] と書けるので、$y=g(x)$ のグラフは図のようになり、$x=a$ で $g(x)$ が存在しなくても、 $\displaystyle\lim_{x\to{a}}g(x)$ は存在することがある。