外積の計算法則
ベクトルの外積に関して,次の計算法則が成り立つ.
外積に関する計算法則
- $\vec{a} \times \vec{b} = −\vec{b} \times \vec{a}$
結合法則
$\vec{a} \times (k\vec{b}) = k(\vec{a} \times \vec{b})$分配法則
$\vec{a} \times (\vec{b} +\vec{c}) = \vec{a} \times \vec{b} + \vec{a} \times\vec{c}$
【証明】
ゼロベクトルを含む場合の成立は明らかなので,以下ベクトルはすべてゼロベクトルでないとする.
まず,$\vec{a} \times \vec{b}$ と$\vec{b} \times \vec{a}$ の大きさは,共に$\vec{a}$ と$\vec{b}$ で張られる平行四辺形の面積であり等しい.
また,$\vec{a}$ から$\vec{b}$ へ右ねじを回して進む向きと,$\vec{b}$ から$\vec{a}$ へ右ねじを回して進む向きはちょうど逆になるから,$\vec{a} \times \vec{b}$ と$\vec{b} \times \vec{a}$ は互いに逆ベクトルとなり
\[\vec{a} \times \vec{b} = −\vec{b} \times \vec{a}\]が成り立つ.
$ k = 0$ のときの成立は明らかなので,それ以外の場合について証明する.
$\boldsymbol{k > 0}$ のとき
まず,$\vec{a} \times (k\vec{b})$ と$k(\vec{b} \times\vec{a})$ の大きさは,共に$\vec{a}$ と$\vec{b}$ で張られる平行四辺形の面積を$k$ 倍したものであり等しい.
また,$k\vec{b}$ と$\vec{b}$ は同じ向きを向いているから,$\vec{a}$ から$k\vec{b}$ へ右ねじを回して進む向きと,$\vec{a}$ から$\vec{b}$ へ右ねじを回して進む向きは等しくなる.
$\boldsymbol{k < 0}$ のとき
まず,$\vec{a} \times (k\vec{b})$ と$k(\vec{b} \times \vec{a})$ の大きさは,共に$\vec{a}$ と$\vec{b}$ で張られる平行四辺形の面積を$−k$倍したものであり等しい.
また,$k\vec{b}$ と$\vec{b}$ は逆を向いているから,$\vec{a}$ から$k\vec{b}$ へ右ねじを回して進む向きと,$\vec{a}$ から$\vec{b}$ へ右ねじを回して進む向きは逆になり,$\vec{a} \times \vec{b}$ を$k$ 倍することにより,結局同じ向きを向く
以上から,任意の実数$k$ に対して
\[\vec{a} \times (k\vec{b}) = k(\vec{a} \times \vec{b})\]が成り立つ.
まず準備として,$\vec{a}\times\vec{b}$ について少し考察しておく.
右図のように,$\vec{a},\vec{b},$および$\vec{a}$に垂直な平面に$\vec{b}$ を正射影した$\vec{b’}$ を考える.
このとき,$\vec{a}$ から$\vec{b}$ へ右ねじを回して進む向きと,$\vec{a}$ から$\vec{b’}$ へ右ねじを回して進む向きは等しい.また,$\vec{a}$ と$\vec{b}$ で張られる平行四辺形の面積と,$\vec{a}$と$\vec{b’}$ で張られる平行四辺形の面積も等しい.つまり
\[\vec{a} \times \vec{b} = \vec{a} \times \vec{b’}\]が成り立つ.
次に,$\vec{a} \times (\vec{b} +\vec{c})$ について考える.
右図のように,$\vec{a},\vec{b},\vec{c},$および$\vec{b} +\vec{c}$ をとる.さらに,$\vec{a}$ に垂直な平面にそれらを正射影した,$\vec{b’},\vec{c’},$および$(\vec{b} +\vec{c})’$ をとる.ここで,$(\vec{b} +\vec{c})’$ は,$\vec{b’}$と$\vec{c’}$ の和になっているので,$(\vec{b} +\vec{c})’= \vec{b’} + \vec{c’}$ である.
このとき,さきほどの話から$\vec{a}\times(\vec{b}+\vec{c}) = \vec{a}\times(\vec{b}+\vec{c})’,$つまり
\[\vec{a} \times (\vec{b} +\vec{c}) = \vec{a} \times (\vec{b’} + \vec{c’})\]が成り立つ.
この図を上からのぞき込んでみると,右図のようになる.
このとき,たとえば$\vec{a} \times \vec{b’}$ は,$\vec{a}$ から$\vec{b’}$ に右ねじを回して進む向きをもち,$\vec{a}$ と$\vec{b’}$ で張られる平行四辺形(長方形)の面積を大きさにもつベクトルである.
いいかえると,$\vec{a} \times \vec{b’}$ は,$\vec{b’}$ を$\vec{a}$ に垂直な平面内で反時計回りに$90^\circ$ 回転させた向きをもち, $ \left|\vec{b’}\right|$の$\left|\vec{a}\right|$ 倍の大きさをもつベクトルである.これは,$\vec{a} \times \vec{c’},\vec{a} \times (\vec{b’} + \vec{c’})$ についても同様に考えることができ,$\vec{a} \times (\vec{b’} + \vec{c’})$ は,$\vec{a} \times \vec{b’}$ と$\vec{a} \times \vec{c’}$ で張られる平行四辺形の対角線を表すベクトルとなる.
このことから
\[\vec{a} \times (\vec{b’} + \vec{c’}) = \vec{a} \times \vec{b’} + \vec{a} \times \vec{c’}\]が成り立ち,$\vec{a} \times \vec{b’},\vec{a} \times \vec{c’}$ がそれぞれ$\vec{a} \times \vec{b},\vec{a} \times\vec{c}$ と等しくなることに注意すると
\[\vec{a} \times (\vec{b} +\vec{c}) = \vec{a} \times \vec{b} + \vec{a} \times\vec{c}\]がいえる.