有理数

有理数とは何か

$6$ 個のものを $3$ 個 $1$ 組にすると、$6\div3=2$ 組ができる。 この $2$ という数は、$6$ の $3$ に対する比 (ratio) の値を表している。比の値は整数になることもあるが、$6$ の $5$ に対する比の値、つまり、$6\div5$ は整数では表せない。そこで新しい数 $\dfrac{6}{5}$ をつくる。

(注) (注)

一般に、整数 $a$ と、$0$ でない整数 $b$ によって $\dfrac{a}{b}$ の形で表せる数を、有理数 (rational number) という。

ある整数を $a$ とすると、一般に $\dfrac{a}{1}$ と表すことができるので、整数は有理数である。

有理数のうち、$\dfrac{4}{3}$ と $\dfrac{8}{6}$ などは、約分 (reduction) $\dfrac{\not{8}^{4}}{\not{6}_{3}}=\dfrac{4}{3}$ という作業を通じて、どちらも $\dfrac{4}{3}$ として同一視できる。この $\dfrac{4}{3}$ のように、もうこれ以上約分できない有理数のことを既約きやく分数 (irreducible fraction) という。

たとえば、次の数は全て有理数である。 \[-\dfrac{8}{3},~-2,~0,~\dfrac{11}{19},~\dfrac{18}{9},~26\]

有理数

整数 $a$ と $0$ でない整数 $b$ によって $\dfrac{a}{b}$ の形で表せる数を、有理数という。

有理数では、$0$ を分母とすることはない、すなわち $0$ で割り算することはないことに注意しよう。もし、仮に $\dfrac{1}{0}$ などという数を認めて、その値がたとえば $0$ だったとすると、$\dfrac{1}{0}=0$ の両辺に、$0$ を掛けて \[\begin{align} &\dfrac{1}{\not{0}}\times\not{0}=0\times0\\ \Leftrightarrow&1=0 \end{align}\] というおかしな結果(矛盾むじゅん)を生じてしまう。

有理数どうしの比の値

たとえば、有理数 $\dfrac{2}{3}$ と有理数 $\dfrac{10}{7}$ の比の値 $\dfrac{2}{3}\div\dfrac{10}{7}$ は、$\dfrac{\dfrac{2}{3}}{\dfrac{10}{7}}$ のように表すこともできる。このように、$\dfrac{a}{b}$ の分子または分母が、さらに分数で表されているとき、この全体の分数をふく分数 (complex fraction) という。

複分数は、「分母にある分数の分母」と「分子にある分数の分母」の最小公倍数を分母と分子に掛けることにより、普通の分数の形(分母も分子も整数の形)になおすことができる。よって、複分数も有理数である。

$\dfrac{\frac{2}{3}}{\frac{10}{7}}$ の場合は、3と7の最小公倍数21を分母と分子に掛けて次のようになる。 \[\begin{align}\dfrac{\dfrac{2}{3}}{\dfrac{10}{7}}&=\dfrac{\dfrac{2}{3}\times21}{\dfrac{10}{7}\times21}\\&=\dfrac{\dfrac{2}{\not{3}^{1}}\times\not{21}^{7}}{\dfrac{10}{\not{7}^{1}}\times\not{21}^{3}}=\dfrac{\not{2}^{1}\times7}{\not{10}^{5}\times3}=\dfrac{7}{15}\end{align}\]

複分数

次の複分数を、普通の分数の形になおしなさい。

  1. $\dfrac{\dfrac{1}{4}}{\dfrac{1}{7}}$
  2. $\dfrac{\dfrac{5}{8}}{\dfrac{25}{9}}$
  3. $\dfrac{\dfrac{11}{6}}{0.3}$

  1. $\dfrac{\dfrac{1}{4}}{\dfrac{1}{7}}=\dfrac{\dfrac{1}{4}\times28}{\dfrac{1}{7}\times28}=\dfrac{\dfrac{1}{\not{4}^{1}}\times\not{28}^{7}}{\dfrac{1}{\not{7}^{1}}\times\not{28}^{4}}=\boldsymbol{\dfrac{7}{4}}$
  2. $\begin{align}\dfrac{\dfrac{5}{8}}{\dfrac{25}{9}}&=\dfrac{\dfrac{5}{8}\times72}{\dfrac{25}{9}\times72}\\&=\dfrac{\dfrac{5}{\not{8}^{1}}\times\not{72}^{9}}{\dfrac{25}{\not{9}^{1}}\times\not{72}^{8}}=\dfrac{\not{5}^{1}\times9}{\not{25}^{5}\times8}=\boldsymbol{\dfrac{9}{40}}\end{align}$
  3. $\dfrac{\dfrac{11}{6}}{0.3}=\dfrac{\dfrac{11}{6}\times30}{0.3\times30}=\dfrac{\dfrac{11}{\not{6}^{1}}\times\not{30}^{5}}{9}=\boldsymbol{\dfrac{55}{9}}$

有理数と少数

有理数は筆算により 小数 (decimal number) になおすことができる。

有限小数と無限小数

有限小数と無限小数

たとえば、右図のような筆算を行うと

$\dfrac{5}{4}=1.25$ のように、割りきれて 有限小数 (finite decimal) になるもの
$\dfrac{7}{22}=0.3181818\cdots$ のように、割り切れず 無限小数 (infinite decimal) になるもの
がある。無限小数の中でも、上の $\dfrac{7}{22}$ の $1818\cdots$ のように、同じ数の並びが繰り返し現れるものを、特に 循環小数 (circulating decimal) という。

循環小数は、循環する部分がわかるように、記号「$\cdot$」(ドット)を使う。たとえば、$\dfrac{7}{22}$ は $\dfrac{7}{22}=0.3181818\cdots=0.3\dot{1}\dot{8}$ と表す。

有理数と循環小数

分数は小数で、小数は分数で表せ。

  1. $\dfrac{9}{16}$
  2. $\dfrac{5}{37}$
  3. $0.625$
  4. $0.\dot{4}2\dot{9}$

  1. (割り算を実行すればよい) $\boldsymbol{0.5625}$
  2. (割り算を実行すればよい) $\boldsymbol{0.\dot{1}3\dot{5}}$
  3. $0.625$ を分数で表すと $\dfrac{625}{1000}$。約分して $\boldsymbol{\dfrac{5}{8}}$ となる。
  4. まず \[x=0.429429429\cdots\tag{1}\label{yuurisuu1}\] とおく。循環の周期をそろえるために、これを1000倍すると \[1000x=429.429429\cdots\tag{2}\label{yuurisuu2}\] となる。$\eqref{yuurisuu2}-\eqref{yuurisuu1}$より \[\begin{array}{rrlrl}&1000x&=&429&.429429\cdots\\-)&x&=&0&.429429\cdots\\\hline&999x&=&429\end{array}\] よって、$x=\dfrac{429}{999}=\boldsymbol{\dfrac{143}{333}}$となる。

有理数の図示

$\dfrac{1}{2}$ を数直線上で表すには、下図のように $0$ と $1$ をつなぐ線分の2等分点をとり、その点に$\dfrac{1}{2}$ を対応させればよい。また、 $\dfrac{5}{2}$ ならば $\dfrac{1}{2}\times5$ と考えて、$0$ と$\dfrac{1}{2}$ をつなぐ線分を5つつないで得られる線分の右端の点を対応させればよい。

有理数の数直線の図

有理数の数直線の図
(注)

一般に、$\dfrac{a}{b}$ を数直線上で表すには、まず $0$ と $1$ をつなぐ線分の $b$ 等分点をとり、そのうち原点に一番近い点に $\dfrac{1}{b}$ を対応させる。そして、$0$ と $\dfrac{1}{b}$ をつなぐ線分を $a$ 個つないで得られる線分の端の点を、$\dfrac{1}{b}{\times}a$ に対応させればよい。

有理数の間には必ず有理数がある

例えば $\dfrac{1}{3}$ と $\dfrac{2}{3}$ の間には \[\dfrac{1}{3}=\dfrac{10}{30}\lt\overset{10と20の平均値}{\dfrac{15}{30}}\lt\dfrac{20}{30}=\dfrac{2}{3}\] として、$\dfrac{15}{30}=\dfrac{1}{2}$ という有理数が存在する。

有理数の間には必ず有理数がある

有理数の間には必ず有理数がある

一般に、2つの有理数 $\dfrac{a}{b},~\dfrac{c}{d}~\left(\dfrac{a}{b}\lt\dfrac{c}{d}\right)$ において \[\dfrac{a}{b}=\dfrac{ad}{bd}\lt\overset{adとbcの平均値}{\dfrac{\dfrac{ad+bc}{2}}{bd}}\lt\dfrac{bc}{bd}=\dfrac{c}{d}\] とすれば、2つの有理数の間に新しい有理数を考えることができる。

(注)

こうして、2つの異なる有理数をどのように選んでも、その間に必ず有理数が存在することがわかる。

2つの異なる有理数の間には必ず有理数があるのだから、これを数直線上のいろいろな場所で考えると、数直線上には有理数に対応する点がびっしり詰まっているとわかる。

無数の有理数の数直線の図

無数の有理数の数直線の図