等式の証明について
等式の証明を考える
恒等式 $A = B$ を証明するには, $A$ か $B$ の一方を変形して,他方を導けばよい.
たとえば
\[(x^2+x+1)(x^2-x+1)\] \[=x^4+x^2+1\]を証明するには
\begin{eqnarray} \text{(左辺)}&=&(x^2+x+1)(x^2-x+1)\\ &=&x^4-x^3+x^2+x^3\\ &&-x^2+x+x^2-x+1\\ &=&x^4+x^2+1\\ &=&\text{(右辺) } \end{eqnarray}とすればよい.
しかし,問題によっては $A = B$ と同値である
- $A = C$ かつ $B = C$
- $A − B = 0$
などの等式を証明する方が簡単なときもあるので,適宜使い分ける.
等式の証明〜その1〜
以下の等式を証明せよ.
- $(x+y)^2-(x-y)^2=4xy$
- $(a^2-b^2)(c^2-d^2)$
$=(ac+bd)^2-(ad+bc)^2$ - $(x^3+1)(x^2+x+1)$
$=(x+1)(x^4+x^2+1)$
左辺を展開し整理すると
(左辺)
\begin{eqnarray} &&=x^2+2xy+y^2-(x^2-2xy+y^2)\\ &&=4xy= \end{eqnarray}(右辺)
となる.
両辺をそれぞれ展開し整理すると
(左辺)
\[=a^2c^2-a^2d^2-b^2c^2+b^2d^2\](右辺)
\begin{eqnarray} &&=a^2c^2+2abcd+b^2d^2\\ &&\qquad\qquad-(a^2d^2+2abcd+b^2c^2)\\ &&=a^2c^2-a^2d^2-b^2c^2+b^2d^2 \end{eqnarray}よって,(左辺) $=$ 右辺)がいえる.
←「 $A = C$ かつ $B = C$ 」ならば「 $A = B$ 」という論法を使った}
左辺を変形して
(左辺)
\begin{eqnarray} &&=(x+1)(x^2-x+1)(x^2+x+1)\\ &&=(x+1)\{(x^2+1)^2-x^2\}\\ &&=(x+1)(x^4+x^2+1)= \end{eqnarray}(右辺)
となる.
等式の証明〜その2〜
以下の等式を証明せよ.
- $\dfrac{1}{x+2}+\dfrac{1}{x-2}=\dfrac{2x}{x^2-4}$
- $\dfrac{1}{x+1}+\dfrac{1}{y+1}$
$\qquad=\dfrac{1-xy}{(x+1)(y+1)}+1$ - $\dfrac{2}{x+2}-\dfrac{1}{x+3}$
$\qquad+\dfrac{x}{(x+2)(x+3)}=\dfrac{2}{x+3}$
左辺を通分して計算していくと
(左辺)
$=\dfrac{x-2}{(x+2)(x-2)}+\dfrac{x+2}{(x+2)(x-2)}$
$=\dfrac{x-2+x+2}{(x+2)(x-2)}=\dfrac{2x}{x^2-4}=$
(右辺)
となる.
両辺をそれぞれ通分して計算していくと
(左辺)
$=\dfrac{y+1}{(x+1)(y+1)}+\dfrac{x+1}{(x+1)(y+1)}$
$=\dfrac{x+y+2}{(x+1)(y+1)}$
(右辺)
$=\dfrac{1-xy}{(x+1)(y+1)}+\dfrac{(x+1)(y+1)}{(x+1)(y+1)}$
$=\dfrac{1-xy+xy+x+y+1}{(x+1)(y+1)}$
$=\dfrac{x+y+2}{(x+1)(y+1)}$
よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.
左辺を通分して計算していくと
(左辺)
$=\dfrac{2x+6}{(x+2)(x+3)}-\dfrac{x+2}{(x+2)(x+3)}$
$\qquad+\dfrac{x}{(x+2)(x+3)}$$=\dfrac{2x+4}{(x+2)(x+3)}$
$=\dfrac{2(x+2)}{(x+2)(x+3)}=\dfrac{2}{x+3}=$
(右辺)
となる.
条件つきの等式の証明
等式の中には,恒等式ではないが,ある条件のもとではつねに成り立つ等式がある.
たとえば, $a^2 − 2b^2 = ab$ は恒等式ではない( $a = b = 1$ を考えてみよ). しかし,$a + b = 0$ という条件の下では常に成り立つ. これを証明するには,条件 $a + b = 0$ から $b = − a$ が成り立つことを利用して
(左辺) $= a^2 − 2( − a)^2 = − a^2$
(右辺) $= a( − a) = − a^2$
より,(左辺)$=$(右辺)とすればよい.
一般に,ある条件のもとで成り立つ等式を証明するには,その条件式を証明すべき式に代入すればよい. そのことを次の例題で学んでいこう.
条件つきの等式の証明-その1-
次の等式を証明せよ.
- $a + b = 0$ のとき, $ab + a^2 = 0$
- $a + b = 0$ のとき, $a^2 − 2b^2 = ab$
- $ x + y = 1$ のとき,
$\qquad x^2 + y^2 + 1 = 2(x + y − xy)$
左辺を変形すると
(左辺)$ = a(a + b) = 0$ $\blacktriangleleft a+b=0$ を使った
よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.
$a + b = 0$より,$b = − a$ なので
(左辺)$=a^2 − 2( − a)^2 = − a^2$ $\blacktriangleleft b=-a$ を使った
(右辺) $= a( − a) = − a^2$
よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.
$x + y = 1$ より,$y = 1 − x$ なので
(左辺) $= x^2 + (1 − x)^2 + 1$ $\blacktriangleleft y=1-x$ を使った
$= x^2 + 1 − 2x + x^2 + 1 = 2(x^2 − x + 1)$
(右辺)$=2{x + (1 − x) − x(1 − x)}$ $\blacktriangleleft y=1-x$ を使った
$= 2(x + 1 − x − x + x^2) $
$= 2(x^2 − x + 1)$よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.
条件つきの等式の証明-その2-
次の等式を証明せよ.
- $xy = 1$ のとき,
$\qquad\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{1}{x}\right)=4$ - $x+\dfrac{1}{x}=3$ のとき,
$\qquad x^2+\dfrac{1}{x^2}=7$ - $xyz = 1$ のとき,
$\qquad\dfrac{1}{xy}+\dfrac{1}{yz}+\dfrac{1}{zx}=x+y+z$
$xy = 1$ より,$x\neq 0$ であるから,$y=\dfrac{1}{x}$ と変形できる.
これを左辺にもちいると
(左辺) $=\left(x+x\right)\left(\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{x}\right)$
$=2x\cdot\dfrac{2}{x}$
$=4=$ (右辺) となる.
$x+\dfrac{1}{x}=3$ を左辺にもちいると
(左辺) $=\left(x+\dfrac{1}{x}\right)^2-2\cdot x\cdot \dfrac{1}{x}$ $\blacktriangleleft a^2+b^2=(a+b)^2-2ab$ という変形を使った
$=3^2-2=7$ $\blacktriangleleft x+\dfrac{1}{x}=3$ を使った
より,(左辺) $=$ (右辺)である.
$xyz = 1$ より, $z=\dfrac{1}{xy}$ なので
(左辺) $=\dfrac{1}{xy}+\dfrac{1}{y\cdot\dfrac{1}{xy}}+\dfrac{1}{\dfrac{1}{xy}\cdot x}$
$=\dfrac{1}{xy}+x+y$
$=x+y+z=$ (右辺) $\blacktriangleleft z=\dfrac{1}{xy}$ を使った
となる.
比例式を条件にもつ等式の証明
$a:b = x:y$ の定義は $bx = ay$ である. 特に $x,y$ が $0$ でないとき,$\dfrac{a}{x}=\dfrac{b}{y}$ と変形できる. この $\dfrac{a}{x}=\dfrac{b}{y}$ のように,比の値が等しいことを示す式を比例式(proportional expression)という.
比例式を条件とする場合には,比の値を $k$,すなわち$ \dfrac{a}{x}=\dfrac{b}{y}=k$ などとおき, $a = xk$ かつ $b = yk$ の形で利用すると計算しやすい.
また
\[a:b:c=x:y:z\]を, $a,b,c$ の連比(continued ratio)といい, $a:b = x:y$ かつ $b:c = y:z$ かつ$c:a = z:x$ ,すなわち
$bx = ay $ かつ $cy = bz$ かつ $ az = cx$
と定義する. こちらの場合も, $x,y,z$ が $0$ でないとき,$\dfrac{a}{x}=\dfrac{b}{y}=\dfrac{c}{z}$ と変形できる.
比例式を条件にもつ等式の証明
$0$ でない実数 $a,~b,~c,~d,~x,~y,~z$ において,次の等式を証明せよ.
- $a:b = c :d$ のとき,
$\qquad\dfrac{a^2+b^2}{c^2+d^2}=\left(\dfrac{b}{d}\right)^2$ - $a:b = c :d$ のとき,
$\qquad\dfrac{a^2+c^2}{b^2+d^2}=\dfrac{ac}{bd}$- $a:b:c = x :y :z$ のとき,
$\qquad\dfrac{a^2+b^2+c^2}{x^2+y^2+z^2}=\dfrac{ab+bc+ca}{xy+yz+zx}$ - $a:b:c = x :y :z$ のとき,
$a = ck,b = dk$ とおくと $\blacktriangleleft$ 比例式の利用
(左辺) $=\dfrac{c^2k^2+d^2k^2}{c^2+d^2}$ $\blacktriangleleft a = ck,b = dk$ を使った
$=\dfrac{k^2(c^2+d^2)}{c^2+d^2}=k^2$
$=\dfrac{d^2k^2}{d^2}=k^2$
より,(左辺) $=$ (右辺)である.
$a = ck,b = dk$ とおくと $\blacktriangleleft$ 比例式の利用
(左辺)= $\dfrac{c^2k^2+c^2}{d^2k^2+d^2}$ $\blacktriangleleft a = ck,b = dk$ を使った
$=\dfrac{c^2(k^2+1)}{d^2(k^2+1)}=\dfrac{c^2}{d^2}$
(右辺)$=\dfrac{c^2k}{d^2k}=\dfrac{c^2}{d^2}$ $ \blacktriangleleft a = ck,b = dk$ を使った
より,(左辺) $=$ (右辺)である.
$a = xk,b = yk,c = zk$ とおくと $\blacktriangleleft$ 比例式の利用
(左辺)= $\dfrac{x^2k^2+y^2k^2+z^2k^2}{x^2+y^2+z^2}$ $\blacktriangleleft a = xk,b = yk,c = zk$ を使った
$=\dfrac{k^2(x^2+y^2+z^2)}{x^2+y^2+z^2}=k^2$
(右辺) $=\dfrac{xyk^2+yzk^2+xzk^2}{xy+yz+zx}$ $ \blacktriangleleft a = xk,b = yk,c = zk$ を使った
$=\dfrac{k^2(xy+yz+xz)}{xy+yz+zx}=k^2$
より,(左辺) $=$ (右辺)である.