コーシー・シュワルツの不等式

コーシー・シュワルツの不等式とは何か

コーシー・シュワルツの不等式

$a,b,x,y$ を実数とすると

\begin{align} (ax+by)^2\leqq(a^2+b^2)(x^2+y^2) \end{align}

が成り立ち,これをコーシー・シュワルツの不等式(Cauchy-Schwarz's inequality)という.

等号が成立するのは

\begin{align} a:b=x:y \end{align}

のときである.

暗記コーシー・シュワルツの不等式の証明-2変数版-

上のコーシー・シュワルツの不等式を証明せよ.また,等号が成立する条件も確認せよ.

(右辺) $-$ (左辺)より

\begin{align} &(a^2+b^2)(x^2+y^2)-(ax+by)^2\\ &=(a^2x^2+b^2x^2+a^2y^2+b^2y^2)\\ &-(a^2x^2+2abxy+b^2y^2)\\ &=b^2x^2-2(bx)(ay)+a^2y^2\\ &=(bx-ay)^2\geqq0 \end{align}

等号が成立するのは, $(bx − ay)^2 = 0$ ,すなわち $bx − ay = 0$ のときであり,これは

\begin{align} a:b=x:y \end{align}

のことである.         $\blacktriangleleft$ 比例式

暗記コーシー・シュワルツの不等式の証明-3変数版-

$a,b,c,x,y,z$ を実数とすると

\begin{align} & (ax+by+cz)^2\\ \leqq&(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) \end{align}

が成り立つことを証明せよ.

また,等号が成り立つ条件も求めよ.

(右辺) $-$ (左辺)より

\begin{align} & a^2(y^2+z^2)+b^2(x^2+z^2)\\ &\quad+c^2(x^2+y^2)\\ &\quad-2(abxy+bcyz+acxz)\\ &=a^2y^2-2(ay)(bx)+b^2x^2\\ &\quad+a^2z^2-2(az)(cx)+c^2x^2\\ &\quad+b^2z^2-2(bz)(cy)+c^2y^2\\ &=(ay-bx)^2+(az-cx)^2\\ &\quad+(bz-cy)^2\geqq 0 \end{align}

等号が成立するのは, $(ay-bx)^2=0,~(az-cx)^2=0,$
$~(bz-cy)^2=0$ すなわち,
$ ay-bx=0,~az-cx=0,$
$~bz-cy=0$ のときであり,これは

\begin{align} a:b:c=x:y:z \end{align} のことである. $\blacktriangleleft$ 比例式

一般の場合のコーシー・シュワルツの不等式に関しては,付録一般の場合のコーシー・シュワルツの不等式を参照のこと.

コーシー・シュワルツの不等式を利用して最小値を求める

コーシー・シュワルツの不等式を利用して,次の関数の最大値と最小値を求めよ.

  1. $f(x,~y)=x+2y$
    ただし,$x^2 + y^2 = 1$とする.
  2. $f(x,~y,~z)=x+2y+3z$
    ただし,$x^2 + y^2 + z^2 = 1$とする.

  1. $a = 1,b = 2$ とすると,

    コーシー・シュワルツの不等式より  $\blacktriangleleft(ax+by)^2\leqq(a^2+b^2)(x^2+y^2)$

    \begin{align} (x+2y)^2\leqq(1^2+2^2)(x^2+y^2) \end{align}

    さらに,条件より $x^2 + y^2 = 1$ であるから

    \begin{align} &\quad(x+2y)^2\leqq5\\ &\Leftrightarrow~-\sqrt{5}\leqq x+2y\leqq\sqrt{5} \end{align}

    $\tag{1}\label{kosishuwarutunohutousikisaisyouti1} $

    が成り立つ.

    $\eqref{kosishuwarutunohutousikisaisyouti1}$の等号が成り立つのは

    \begin{align} x:y=1:2 \end{align}

    のときである. $x = k,y = 2k$ とおき,$\blacktriangleleft$比例式の知識を使った

    $x^2 + y^2 = 1$ に代入すると

    \begin{align} &k^2+(2k)^2=1\\ \Leftrightarrow~&k=\pm\dfrac{\sqrt{5}}{5} \end{align}

    このとき,等号が成り立つ.

    以上より,最大値$f\left(\dfrac{\sqrt{5}}{5},~\dfrac{2\sqrt{5}}{5}\right)=\boldsymbol{\sqrt{5}}$ , 最小値 $f\left(-\dfrac{\sqrt{5}}{5},~-\dfrac{2\sqrt{5}}{5}\right)=\boldsymbol-{\sqrt{5}}$ となる.

  2. $a = 1,b = 2,c = 3$ とすると, コーシー・シュワルツの不等式より

    $\blacktriangleleft(ax+by+cz)^2$
    $\leqq(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)$

    \begin{align} &(x+2y+3z)^2\\ &\leqq(1^2+2^2+3^2)(x^2+y^2+z^2) \end{align}

    さらに,条件より $x^2 + y^2 + z^2 = 1$ であるから

    \begin{align} &(x+2y+3z)^2\leqq14\\ \Leftrightarrow&~-\sqrt{14}\leqq x+2y+3z\leqq\sqrt{14} \end{align}    

    $\tag{2}\label{kosishuwarutunohutousikisaisyouti2}$

    が成り立つ.

    $\eqref{kosishuwarutunohutousikisaisyouti2}$の等号が成り立つのは

    \begin{align} x:y:z=1:2:3 \end{align}

    のときである. $x = k,y = 2k,z = 3k$ とおき, $ x^2 + y^2 + z^2 = 1$ に代入すると     $\blacktriangleleft$ 比例式の知識を使った.

    \begin{align} &k^2+(2k)^2+(3k)^2=1\\ \Leftrightarrow~&k=\pm\dfrac{\sqrt{14}}{14} \end{align}

    このとき,等号が成り立つ.

    以上より,最大値
    $f\left(\dfrac{\sqrt{14}}{14},~\dfrac{2\sqrt{14}}{14},~\dfrac{3\sqrt{14}}{14}\right)$
    $=\boldsymbol{\sqrt{14}}$ ,
    最小値
    $f\left(-\dfrac{\sqrt{14}}{14},~-\dfrac{2\sqrt{14}}{14},~-\dfrac{3\sqrt{14}}{14}\right)$
    $=\boldsymbol{-\sqrt{14}}$ となる.

吹き出しコーシー・シュワルツの不等式とは何か

コーシー・シュワルツの不等式は\FTEXT 数学Bで学習するベクトルの内積の知識を用いて

\begin{align} \left(\vec{m}\cdot\vec{n}\right)^2\leqq|\vec{m}|^2|\vec{n}|^2 \end{align}

と表すことができる. もし,ベクトルを学習済みであったら,$\vec{m}=\begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix},\vec{n}=\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$を上の式に代入して確認してみよう.