導関数

導関数とは何か

$x=a$ での微分係数を求める

$f(x)=x^2$ とし、次の問いに答えよ。

  1. $f'(a)$ を求めよ。
  2. 1の結果に $a=3$、$-2$ を代入することにより、$f'(3)$、$f'(-2)$ を求めよ。

  1. 微分係数 $f'(a)$ の定義より \begin{align} &\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}\\ &=\dfrac{(a+h)^2-a^2}{h}\\ &=\dfrac{a^2+2ah+h^2-a^2}{h}\\ &=2a+h\\ &\to2a~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(a)=2a}$。
  2. 1の $a$ に $a=3$ を代入することにより \[\boldsymbol{f'(3)=6}\] また、$a=-2$ を代入することにより \[\boldsymbol{f'(-2)=-4}\] となる。

上の例題2の結果は、定義式から微分係数を求める~その1~ の1と2の答えと確かに一致する。

このように、同じ関数の微分係数は、いちいち定義式に戻り計算しなくても
「$x=a$ における微分係数 $f'(a)$ を求めておいて、$a$ に必要な値を代入する」
ことによって求められる。いいかたを変えれば、$a$ を変数とみれば $f'(a)$ は $a$ の関数になっているということである。変数であることをわかりやすくするため、$a$ を $x$ におきかえた $f'(x)$ を以下では使うことにする。

導関数

関数 $f(x)$ において、極限 $\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$ が存在するとき、これを $f(x)$ の導関数 (derived function) といい、$f'(x)$ で表す。すなわち \[f'(x)=\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\] である。

導関数の表し方

関数 $y=f(x)$ の導関数の表し方にはいくつかあり、$f'(x)$ の他にも $y'$ や $\dfrac{dy}{dx}$ や $\dfrac{d}{dx}f(x)$ で表すこともある。

$\dfrac{dy}{dx}$ は、$x$ の増分 $h$ を $\Delta{x}$、$y$ の増分 $f(x+h)-f(x)$ を $\Delta{y}$ としたとき \[f'(x)=\displaystyle\lim_{\Delta{x}\to0}\dfrac{\Delta{y}}{\Delta{x}}\] と書けることに由来する。$\dfrac{dy}{dx}$ は「ディーエックスぶんのディー・ワイ」ではなく「ディーワイ、ディーエックス」と読む。

たとえば、$y=x^2$ の導関数は \[y'=2xや\dfrac{dy}{dx}=2x\] などと表す。

また、$x$ の関数 $f(x)$ から導関数 $f'(x)$ を求めることを、$f(x)$ を $\boldsymbol{x}$ について微分 (differential) するという。関数を微分した結果を示すのに \[(x^2)'=2x\] と書くこともある。

導関数を求める

次の関数の導関数 $f'(x)$ を求めよ。

  1. $f(x)=x$
  2. $f(x)=x^2$
  3. $f(x)=x^3$
  4. $f(x)=2x^3-x^2$

  1. 導関数 $f'(x)$ の定義より \begin{align} \dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}&=\dfrac{(x+h)-x}{h}\\ &=1\\ &\to1~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(x)=1}$ となる。
  2. 導関数 $f'(x)$ の定義より \begin{align} \dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}&=\dfrac{(x+h)^2-x^2}{h}\\ &=\dfrac{2xh+h^2}{h}\\ &=2x+h\\ &\to2x~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(x)=2x}$ となる。
  3. 導関数 $f'(x)$ の定義より \begin{align} \dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}&=\dfrac{(x+h)^3-x^3}{h}\\ &=\dfrac{3x^2h+3xh^2+h^3}{h}\\ &=3x^2+3xh+h^2\\ &\to3x^2~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(x)=3x^2}$ となる。
  4. 導関数 $f'(x)$ の定義より \begin{align} &\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\ =&\dfrac{2(x+h)^3-(x+h)^2-(2x^3-x^2)}{h}\\ =&\dfrac{2(3x^2h+3xh^2+h^3)-(2xh+h^2)}{h}\\ =&\dfrac{(6x^2-2x)h+(3x-1)h^2+h^3}{h}\\ =&6x^2-2x+(3x-1)h+h^2\\ &\to6x^2-2x~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(x)=6x^2-2x}$ となる。

$x^n$の導関数

『導関数を求める』の例題から、$(x)'=1$、$(x^2)'=2x$、$(x^3)'=3x^2$ がわかった。このことより、$n$ が自然数のとき \[(x^n)'=nx^{n-1}\] が推測できる。

$x^n$ の導関数

$f(x)=x^n$ のとき、$f'(x)=nx^{n-1}$ であることを証明せよ。ただし、$n$ は自然数とする。
※FTEXT 数学Aで学んだ『2項定理』を使う。

2項定理より \begin{align} f(x+h)&=(x+h)^n\\ &={_{n}\text{C}_{0}}x^n+{_{n}\text{C}_{1}}x^{n-1}h+\\ &\qquad{_{n}\text{C}_{2}}x^{n-1}h^2+\cdots+{_{n}\text{C}_{n}}h^n \end{align} であるから \begin{align} &\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\ &=\{_{n}\text{C}_{0}x^n+{_{n}\text{C}_{1}}x^{n-1}h+{_{n}\text{C}_{2}}x^{n-1}h^2\\ &\qquad+\cdots+{_{n}\text{C}_{n}}h^n-x^n\}\div{h}\\ &={_{n}\text{C}_{1}}x^{n-1}+{_{n}\text{C}_{2}}x^{n-1}h+\cdots+{_{n}\text{C}_{n}}h^{n-1}\\ &\blacktriangleleft _{n}\text{C}_{0}=1であるから_{n}\text{C}_{0}x^n=x^n\\ &\quadなので-x^nと打ち消しあった\\ &\to{_{n}\text{C}_{1}}x^{n-1}~(h\to0)\\ &=nx^{n-1} \end{align} つまり、$f'(x)=nx^{n-1}$ である。

また、$f(x)=1$ の導関数は \[\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}=\dfrac{1-1}{h}=0\to0~(h\to0)\] となり、$x^0=1$ であるから次のようにまとめることができる。

$x^n$ の導関数

$n$ は $0$ 以上の整数とする。関数 $f(x)=x^n$ の導関数 $f'(x)$ は \[f'(x)=nx^{n-1}\] となる。

吹き出し$x^n$ の導関数

「$x^n$ の肩の指数 $n$ が降りてきて、その値が一つ減る」などと覚えるとよい。