相加平均と相乗平均の関係
$n = 2$ のときの相加平均と相乗平均の式は,それぞれ
\begin{align} \dfrac{a_1+a_2}{2}~,~~\sqrt{a_1a_2} \end{align}である.
いま, $\dfrac{a_1+a_2}{2}-\sqrt{a_1a_2}$ を計算していくと
\begin{align} &\qquad\dfrac{a_1+a_2}{2}-\sqrt{a_1a_2} \\ &=\dfrac{a_1-2\sqrt{a_1a_2}+a_2}{2}\\ &=\dfrac{1}{2}\left(\sqrt{a_1}-\sqrt{a_2}\ \right)^2\geqq0 \end{align}より
\begin{align} \dfrac{a_1+a_2}{2}\geqq\sqrt{a_1a_2} \end{align}すなわち,相加平均は相乗平均以上であることがわかる.
一般には次のような関係が成り立つ.
相加平均と相乗平均の関係
$n$ 個の $0$ 以上の数 $a_1,~a_2,~\cdots,~a_n$ において,相加平均$\dfrac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n}$ と 相乗平均 $\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n}$ の間には,次のような関係が成り立つ.
\begin{align} \dfrac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n}\geqq\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n} \end{align}等号が成立するのは, $a_1=a_2=\cdots=a_n$ のときである.
特に, $n = 2$ のときは
\begin{align} \dfrac{a_1+a_2}{2}\geqq\sqrt{a_1a_2} \end{align}(等号成立は $a_1=a_2$ ,)
であり, $n = 3$ のときは
\begin{align} \dfrac{a_1+a_2+a_3}{3}\geqq\sqrt[3]{a_1a_2a_3} \end{align}(等号成立は $a_1=a_2=a_3$ ,)
である.
吹き出し相加平均と相乗平均の関係
相加平均と相乗平均の関係式は,分母をはらった
\begin{align} a+b\geqq2\sqrt{ab} \end{align}の形で使われることが多い. 左辺の和 $a + b$ と,右辺の積 $ab$ の間の関係を与えたものだということに注目しよう.
暗記3文字の場合の相加平均と相乗平均の関係の証明
等式
\begin{eqnarray} &&x^3+y^3+z^3-3xyz\\ &=&(x+y+z)(x^2+y^2+z^2\\ &&\qquad\qquad\qquad-xy-yz-zx) \end{eqnarray}$\qquad\tag{1}\label{anki3mozinobaai} $
が成り立つことを利用して, $a_1\geqq0,a_2\geqq0,a_3\geqq0$ のとき
\begin{align} \frac{a_1+a_2+a_3}{3}\geqq\sqrt[3]{a_1a_2a_3} \end{align}を証明せよ.また,等号が成立する条件も求めよ.
$x=\sqrt[3]{a_1},y=\sqrt[3]{a_2},z=\sqrt[3]{a_3}$ とおくと,
$x\geqq0,y\geqq0,z\geqq0$ で,
$x^3+y^3+z^3=a+b+c,$
$xyz=\sqrt[3]{a_1}\sqrt[3]{a_2}\sqrt[3]{a_3}=\sqrt[3]{a_1a_2a_3}$ である.
$\eqref{anki3mozinobaai}$において
\begin{align} &\quad x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx\\ &=\dfrac{1}{2}\left\{(x-y)^2+(y-z)^2\right.\\ &\qquad\qquad\qquad\left.+(z-x)^2\right\}\geqq0 \end{align} $\blacktriangleleft$ 実数の平方であり
\begin{align} x+y+z\geqq0 \end{align}であるから
\begin{align} &x^3+y^3+z^3\geqq3xyz\\ &\Leftrightarrow~\dfrac{x^3+y^3+z^3}{3}\geqq xyz \end{align}よって
\begin{align} \dfrac{a_1+a_2+a_3}{3}\geqq\sqrt[3]{a_1a_2a_3} \end{align}また,等号が成立するのは $x = y = z,$ すなわち $a1 = a2 = a3$ のとき.
一般の場合の証明は,付録一般の場合の相加平均と相乗平均の関係を参照のこと.
相加平均と相乗平均の関係を利用した不等式の証明
ただし, $x > 0,y > 0,z > 0$ とする.
- $x+\dfrac{1}{x}\geqq 2 $
- $x+\dfrac{9}{x+2}\geqq 4$
- $\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right)\geqq 9$
- $(x+y)(y+z)(z+x)\geqq 8xyz $
$ x>0,\dfrac{1}{x}>0$ であるから,相加平均と相乗平均の関係より
$\blacktriangle x$と$\dfrac{1}{x}$をかけると約分され定数になることに着目した
\begin{align} x+\dfrac{1}{x}\geqq 2\sqrt{x\cdot\dfrac{1}{x}}=2 \end{align}また,等号が成立するのは $x=\dfrac{1}{x}$ ,すなわち $x = 1$ のときである. $\blacktriangleleft x > 0$ である
$x + 2 > 0,\dfrac{1}{x+2}>0$ であるから,相加平均と相乗平均の関係より
$\blacktriangle$ (1)のような形にもちこみたいため, $x$ ではなく $x + 2$ をかたまりとして考えてみる.
\begin{align} &(x+2)+\dfrac{9}{(x+2)}\\ &\geqq 2\sqrt{(x+2)\cdot\dfrac{9}{x+2}}=6 \end{align}よって, $x+\dfrac{9}{(x+2)}\geqq 4$ となる.
また,等号が成立するのは $x+2=\dfrac{9}{x+2}$ ,すなわち
\begin{align} &(x+2)^2=9 \\ \Leftrightarrow~&(x+5)(x-1)=0\\ \therefore~&x=1 \end{align} $\blacktriangleleft x > 0$ であるのときである.
$ x > 0,\dfrac{1}{x}>0,y > 0,\dfrac{1}{y}>0$であるから, 相加平均と相乗平均の関係より
\begin{align} & \left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right) \\ &=xy+\dfrac{4}{xy}+1+4 \\ &\geqq 2\sqrt{xy\cdot\dfrac{4}{xy}}+1+4=9 \end{align} $\blacktriangleleft xy$ と $\dfrac{1}{xy}$ をかけると約分されて定数になるような形があらわれたまた,等号が成立するのは, $xy=\dfrac{4}{xy}$ ,すなわち
\begin{align} &x^2y^2=4 \\ \therefore~&xy=2 \end{align} $\blacktriangleleft x > 0,y > 0$ より, $xy > 0$ であるのときである.
$x > 0,y > 0,z > 0$ であるから,相加平均と相乗平均の関係より
\begin{align} &x+y\geqq 2\sqrt{xy}\\ &y+z\geqq 2\sqrt{yz}\\ &z+x\geqq 2\sqrt{zx} \end{align}であるから,辺々を掛け合わせて
(左辺)
\begin{align} &\geqq (2\sqrt{xy})(2\sqrt{yz})(2\sqrt{zx})\\ &=8xyz \end{align}また,等号が成立するときは $x = y,y = z,z = x$ ,すなわち $x = y = z$ のときである.
相加平均と相乗平均の関係は,上の例題で見たような不等式の証明だけでなく,次の例題でみるように最小値を求める際にも利用できる.
相加平均と相乗平均の関係を利用して最小値を求める
次の関数の最小値を求めよ.
- $f(x)=x+\dfrac{1}{x}~~~(x>0) $
- $f(x,~y)=\dfrac{y}{x}+\dfrac{x}{y}~~~(x>0,~y>0)$
$ x > 0$より$\dfrac{1}{x}>0$であるから,相加平均と相乗平均の関係より
\begin{align} x+\dfrac{1}{x}\geqq2\sqrt{x\cdot\dfrac{1}{x}}=2 \end{align}$\blacktriangle$ ここまででいえたことは $f(x)\geqq2$ である
等号が成り立つのは $x=\dfrac{1}{x}$ ,すなわち
\begin{align} &x^2=1 \\ \therefore~~ &x=1 \end{align} $\blacktriangleleft x > 0$ である以上より,最小値は $f(1)=\boldsymbol{2}$ とわかる.
$\blacktriangle$ 等号が成立する $x$ の存在がわかって初めて最小値といえる.
$\dfrac{y}{x}>0~,~~\dfrac{x}{y}>0$ であるから,相加平均と相乗平均の関係より
\begin{align} &\dfrac{y}{x}+\dfrac{x}{y}\geqq2\sqrt{\dfrac{y}{x}\cdot\dfrac{x}{y}}=2 \end{align}$\blacktriangle$ ここまででいえたことは $f(x,~y)\geqq2$ である
等号が成り立つのは $\dfrac{y}{x}=\dfrac{x}{y}$ のとき.これを計算していくと
\begin{align} &x^2=y^2\\ \Leftrightarrow~&x^2-y^2=0\\ \Leftrightarrow~&(x-y)(x+y)=0 \end{align}$x > 0,y > 0$ なので, $x+y\neq0$ であるから, $x = y$ となる.
以上より,最小値は $f(x,x)=\boldsymbol{2}$ とわかる.
$\blacktriangle$ 等号が成立する $x$ と $y $ の存在がわかって初めて最小値といえる.
吹き出し相加平均と相乗平均の関係
相加平均と相乗平均の関係を使って最小値を求める方法は
- 関数がある値以上であることを示し(不等式の証明)
- その関数がある値になることを示す(等号成立条件)
という2つのプロセスから成り立っていることに注意しよう.