因数定理

多項式$f(x)$を1次式$x – a$で割ったときの商を$Q(x)$,余りを$r$とすると,$r$は定数であり

\begin{align} f(x)=(x-a)Q(x)+r \end{align}

が成り立つ.この式に$x = a$を代入すると

\begin{align} f(a)=(a-a)Q(a)+r=r \end{align}

となり,$f(a) = r$がわかり,これが剰余の定理だった.

特に,$f(x)$が$x – a$で割り切れる,つまり$\left(r=\right)~f(a)=0$のとき

\begin{align} f(x)=(x-a)Q(x) \end{align}

と表すことができる. さらにいいかえるならば,$x – a$は$f(x)$の因数になっている.

因数定理

$f (x)$を多項式とすると

「$x – a$が$f (x)$の因数である」$\Longleftrightarrow$「$f (a) = 0$」

この因数定理(factor theorem)を利用して,多項式の因数分解をすることができる. 次の例題で具体的にみていこう.

因数定理による因数分解-その1-

因数定理を利用して,次の式を因数分解せよ.

  1. $x^3+3x^2-4$
  2. $2x^3-7x^2+9$
  3. $x^4-6x^3+7x^2+6x-8$
  4. $x^4-8x^3-2x^2+72x-63$

$f(1)$や$f( − 1)$などを計算してみて$0$になるものをみつける.

  1. $f(x) = x3 + 3x2 – 4$とおく.

    \begin{align} f(1)=1+3-4=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x – 1$を因数にもつ. $\blacktriangleleft$先に$f( − 2) = 0$を見つけてもよい

    よって説明文

    \begin{align} f(x)&=(x-1)(x^2+4x+4)\\ &=\boldsymbol{(x-1)(x+2)^2} \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    因数定理による因数分解-その1-の解答その1
  2. $f(x) = 2x3 − 7x2 + 9$とおく.

    \begin{align} f(-1)=-2-7+9=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x + 1$を因数にもつ. $\blacktriangleleft$先に$f(3) = 0$や$f(\dfrac{3}{2})=0$を見つけてもよい

    よって説明文

    \begin{align} f(x)&=(x+1)(2x^2-9x+9)\\ &=\boldsymbol{(x+1)(2x-3)(x-3)} \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    因数定理による因数分解-その1-の解答その2
  3. $f(x) = x4 − 8x3 + 7x2 + 6x – 8$とおく.

    \begin{align} f(1)=1-6+7+6-8=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x – 1$を因数にもつ. $\blacktriangleleft$先に$f( − 1) = 0$や$f(2) = 0$などを見つけてもよい

    よって説明文

    \begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-5x^2+2x+8) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    因数定理による因数分解-その1-の解答その3

    さらに,$g(x) = x3 − 5x2 + 2x + 8$とおくと

    \begin{align} g(-1)=-1-5-2+8=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$g(x)$は$x + 1$を因数にもつ. $\blacktriangleleft$先に$g(2) = 0$や$g(4) = 0$などを見つけてもよい

    よって説明文

    \begin{align} g(x)&=(x+1)(x^2-6x+8)\\ &=(x+1)(x-2)(x-4) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    因数定理による因数分解-その1-の解答その4

    より,$f(x)=\boldsymbol{(x+1)(x-1)(x-2)(x-4)}$.

  4. $f(x) = x4 − 8x3 − 2x2 + 72x – 63$とおく.

    \begin{align} f(1)=1-8-2+72-63=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x – 1$を因数にもつ. $\blacktriangleleft$先に$f(3) = 0$や$f( − 3) = 0$などを見つけてもよい

    よって説明文

    \begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-7x^2-9x+63) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    因数定理による因数分解-その1-の解答その5

    さらに,$g(x) = x3 − 7x2 − 9x + 63$とおくと

    \begin{align} g(3)=27-63-27+63=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$g(x)$は$x – 3$を因数にもつ. $\blacktriangleleft$先に$g( − 3) = 0$や$g(7) = 0$などを見つけてもよい.

    よって説明文

    \begin{align} g(x)&=(x-3)(x^2-4x-21)\\ &=(x-3)(x+3)(x-7) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    因数定理による因数分解-その1-の解答その6

    より,$f(x)=\boldsymbol{(x-1)(x-3)(x+3)(x-7)}$である.

多項式$f(x)$を因数定理を利用して因数分解するとき,$f(a) = 0$となる$a$を見つけることが大切である. この$a$を見つける手段として,次の定理を知っておくとよい.

多項式の因数を見つけるための定理

係数$a_0,~a_1,~\cdots,~a_n$がすべて整数である多項式

\begin{align} f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0 \end{align}

に対し,既約分数$\dfrac{p}{q}$が,$f\left(\dfrac{p}{q}\right)=0$を満たすとき

$p$は$a_0$の約数,$q$は$a_n$の約数

である(ただし,約数には負の数も含めるとする).

この定理の証明は多項式の因数を見つけるための定理を参照のこと.

吹き出し因数定理

$\dfrac{p}{q}$は$\pm$(定数項の約数) $/$ (最高次の係数の約数)と覚えるとよい.

たとえば,$f(x) = 2x^3 − 5x^2 + 7x – 6$の因数分解について考えてみると,最高次の係数の約数には $1~,~~2$があり,定数項の約数には$1~,~~2,~~3,~~6 $があるので,$f(a) = 0$となる$a$の候補は

\begin{align} \dfrac{1}{1}~,~~\dfrac{2}{1}~,~~\dfrac{3}{1}~,~~\dfrac{6}{1}~,~~\dfrac{1}{2}~,~~\dfrac{2}{2}~,~~\dfrac{3}{2}~,~~\dfrac{6}{2} \end{align}

と,これらにマイナスをつけた数がある.

これらを順に

\begin{align} &f(1)=2-5+7-6\neq0\\ &f(2)=2\cdot2^3-5\cdot2^2+7\cdot2-6\neq0\\ &\qquad\qquad\vdots \end{align}

などと調べていくと,$f\left(\dfrac{3}{2}\right)=0$となるので

\begin{align} f(x)=(2x-3)(x^2-x+2) \end{align}

と因数分解できる.

因数定理による因数分解-その2-

次の多項式を因数分解せよ

  1. $3x^3-4x^2+4x-1$
  2. $24x^3-22x^2+x+2$

  1. $f(x) = 3x^3 − 4x^2 + 4x – 1$とおくと $\blacktriangleleft f(a) = 0$となる$a$の候補は$\pm\dfrac{1}{1}~,~\pm\dfrac{1}{3}$がある

    \begin{align} f\left(\dfrac{1}{3}\right)=0 \end{align}

    であるから

    \begin{align} f(x)=\boldsymbol{(3x-1)(x^2-x+1)} \end{align} $\blacktriangleleft x^2 − x + 1$は判別式の値が負となるので,これ以上因数分解できない

    となる.

  2. $f(x) = 24x^3 − 22x^2 + x + 2$とおくと

    $\blacktriangle f(a) = 0$となる$a$の候補は $\pm\dfrac{1}{1}~,~\pm\dfrac{1}{2}~,~\pm\dfrac{1}{3}~,~\pm\dfrac{1}{4}~,$

    $~\pm\dfrac{1}{6}~,~\pm\dfrac{1}{8}~,~\pm\dfrac{1}{12}~,~\pm\dfrac{1}{24}~, ~\pm\dfrac{2}{3} $がある

    \begin{align} f\left(\dfrac{1}{2}\right)=0 \end{align}

    であるから

    \begin{align} f(x)=(2x-1)(12x^2-5x-2) \end{align}

    となる.また,$12x^2 − 5x − 2 = (3x − 2)(4x + 1)$と因数分解できるので

    \begin{align} f(x)=\boldsymbol{(2x-1)(3x-2)(4x+1)} \end{align}

    となる.