因数定理を利用した高次方程式の解法
すぐに因数分解が思いつかなくても,因数定理を利用して因数を探し当て, 因数分解を行うことができた.因数分解ができれば,高次方程式を解くこともできる.
高次方程式
次の方程式を解け.
- $x^3+3x^2-4=0$
- $2x^3-7x^2+9=0 $
- $x^4-6x^3+7x^2+6x-8=0$
- $x^4-8x^3-2x^2+72x-63=0$
$f(x) = x^3 + 3x^2 − 4$とおく.
\begin{align} f(1)=1+3-4=0 \end{align}であるから,因数定理より$f(x)$は$x – 1$を因数にもつのがわかる. $\blacktriangleleft$先に$f ( − 2) = 0$を見つけてもよい
よって,$f(x) = 0$は
\begin{align} &(x-1)(x^2+4x+4)=0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x+2)^2=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=1,~-2} \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図$f(x) = 2x^3 − 7x^2 + 9$とおく.
\begin{align} f(-1)=-2-7+9=0 \end{align}であるから,因数定理より$f(x)$は$x + 1$を因数にもつのがわかる.$\blacktriangleleft$先に$f (3) = 0$や$f\left(\dfrac{3}{2}\right)=0$を見つけてもよい
よって,$f(x) = 0$は
\begin{align} &(x+1)(2x^2-9x+9)=0\\ \Leftrightarrow~&(x+1)(2x-3)(x-3)=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=-1,~\dfrac{2}{3},~3} \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図$f(x) = x^4 − 8x^3 + 7x^2 + 6x – 8$とおく.
\begin{align} f(1)=1-6+7+6-8=0 \end{align}であるから,因数定理より$f(x)$は$x – 1$を因数にもつのがわかる. $\blacktriangleleft$先に$f ( − 1) = 0$や$f (2) = 0$などを見つけてもよい
よって
\begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-5x^2+2x+8) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図さらに,$g(x) = x^3 − 5x^2 + 2x + 8$とおくと
\begin{align} g(-1)=-1-5-2+8=0 \end{align}であるから,因数定理より$g(x)$は$x + 1$を因数にもつのがわかる. $\blacktriangleleft$先に$g(2) = 0$や$g(4) = 0$などを見つけてもよい
よって
\begin{align} g(x)&=(x+1)(x^2-6x+8)\\ &=(x+1)(x-2)(x-4) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図より,$f(x) = (x + 1)(x − 1)(x − 2)(x − 4)$である.
以上より,$f (x) = 0$の解は,$\boldsymbol{x=-1,~1,~2,~4}$となる.
$f (x) = x^4 − 8x^3 − 2x^2 + 72x − 63$とおく.
\begin{align} f(1)=1-8-2+72-63=0 \end{align}であるから,因数定理より$f (x)$は$x – 1$を因数にもつのがわかる.$\blacktriangleleft$先に$f(3) = 0$や$f ( − 3) = 0$などを見つけてもよい
よって
\begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-7x^2-9x+63) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図さらに,$g(x) = x^3 − 7x^2 − 9x + 63$とおくと
\begin{align} g(3)=27-63-27+63=0 \end{align}であるから,因数定理より$g(x)$は$x – 3$を因数にもつのがわかる$\blacktriangleleft$先に$g( − 3) = 0$や$g(7) = 0$などを見つけてもよい.
よって
\begin{align} g(x)&=(x-3)(x^2-4x-21)\\ &=(x-3)(x+3)(x-7) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図より,$f(x) = (x − 1)(x − 3)(x + 3)(x − 7)$である.
以上より,$f (x) = 0$の解は,$x=1,~3,~-3,~7$となる.
上の例題の(1)のように,方程式$(x − 1)(x + 2)^2 = 0$の解$x = − 2$を,この方程式の2重解(double solution)という. また,たとえば方程式$(x − 1)(x + 2)^3 = 0$の解$x = − 2$を,この方程式の3重解(triple solution)という.
複素数の範囲では,方程式の2重解を重なった2個の解,3重解を重なった3個の解などと数えることにすると, 2次方程式では2個の解,3次方程式は3個の解,4次方程式では4個の解をもつ. 一般の場合では,次のことが知られている.
代数学の基本定理
$n$次方程式では,複素数の範囲で,$n$個の解をもつ.
方程式の重解条件
3次方程式$3x^3 − (3 + a)x^2 + a = 0$が重解をもつとき,定数$a$ の値とそのときの解をすべて求めよ. ただし,$a $は実数である.
$3x^3 − (3 + a)x^2 + a$
$= (x − 1)(3x^2 − ax − a)$であるので,$f (x) = 3x^2 − ax – a$とおくと,
3次方程式が重解をもつためには,$f (x) = 0$が$x = 1$に解をもつか,$f (x) = 0$が重解をもてばよい.
1)$f (x) = 0$が$x = 1$に解をもつとき
$f (1) = 0$より
\begin{align} 3-a-a=0\Leftrightarrow~\boldsymbol{a=\dfrac{3}{2}} \end{align}このとき,$f(x)=3x^2-\dfrac{3}{2}x-\dfrac{3}{2}$であるから,3次方程式の解は
\begin{align} &(x-1)\left(3x^2-\dfrac{3}{2}x-\dfrac{3}{2}\right)=0\\ \Leftrightarrow~&\dfrac{3}{2}(x-1)^2(2x+1)=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=1,~-\dfrac{1}{2}} \end{align}2)$f (x) = 0$が重解をもつとき
判別式を考えて
\begin{align} D=a^2+12a=0\Leftrightarrow~\boldsymbol{a=0,~-12} \end{align}となる.
$a = 0$のとき
\begin{align} &f(x)=0\\ \Leftrightarrow~&3x^2=0\Leftrightarrow~x=0 \end{align}であるので,3次方程式の解は$\boldsymbol{x=1,~x=0}$である.
$a = − 12$のとき
\begin{align} &f(x)=0\\ \Leftrightarrow~&3x^2+12x+12=0\\ \Leftrightarrow~&3(x+2)^2=0\\ \Leftrightarrow~&x=-2 \end{align}であるので,3次方程式の解は$\boldsymbol{x=1,~x=-2}$である.