式の一部をまとめる
『多項式の乗法の公式』で学んだ公式を工夫して用いると、 複雑な式の計算がかなり容易にできるようになる。 ここでは、展開の工夫として代表的な2つの方法を取り上げる。
多項式の一部を1つの文字とみなすと、今までの公式がより広く使える。
まず、$(a+b+c)^2$ の展開を考ええてみよう。$A=a+b$ とおくと \begin{align} &(a+b+c)^2\\ =&(A+c)^2\\ &\blacktriangleleft A=a+bとおき、\\ &\qquad式の一部を一つの文字とみなす\\ =&A^2+2Ac+c^2\\ &\blacktriangleleft 平方の公式\\ =&(a+b)^2+2(a+b)c+c^2\\ &\blacktriangleleft Aをa+bに戻す\\ =&a^2+2ab+b^2+2ca+2bc+c^2\\ &\blacktriangleleft 平方の公式\\ =&a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\\ &\blacktriangleleft この順番にすると式が見やすい \end{align} であるから、$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$ が成り立つ。
これを使い、たとえば $(2x+y-3)^2$ は次のように計算する。
- うまい計算のやり方 \begin{align} &(2x+y-3)^2\\ =&(2x)^2+y^2+(-3)^2+2\cdot2xy\\ &\underbrace{\qquad+2\cdot y(-3)+2\cdot(-3)2x}_{慣れると省略できる}\\ =&4x^2+y^2+9+4xy-6y-12x \end{align}
- 普通の計算のやり方 \begin{align} &(2x+y-3)^2\\ =&(2x+y-3)(2x+y-3)\\ =&4x^2+2xy-6x+2yx+\\ &y^2-3y-6x-3y+9\\ =&4x^2+y^2+9+4xy-6y-12x \end{align}
3項の平方の公式
7.$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$
次に、$(x+y−z)(x−y+z)$ の展開を考えてみよう。
$-y+z=-(y-z)$ に注意し、2ヶ所にある $y-z$ を $A$ とおくとよい。 \begin{align} &(x+y-z)(x-y+z)\\ =&\{x+(y-z)\}\{x-(y-z)\}\\ &\blacktriangleleft -y+z=-(y-z)\\ =&(x+A)(x-A)\\ &\blacktriangleleft A=y-zとおき、\\ &\qquad式の一部を1つの文字とみなす\\ =&x^2-A^2\\ &\blacktriangleleft 和と差の積の公式\\ =&x^2-(y-z)^2\\ &\blacktriangleleft Aをy-zに戻す\\ =&x^2-(y^2-2yz+z^2)\\ &\blacktriangleleft 平方の公式\\ =&x^2-y^2+2yz-z^2\\ &\blacktriangleleft 符号に注意して(~~)を外す\\ \end{align}
吹き出し無題
はじめのうちは、共通部分を $A$ や $X$ などでおきかえるが、慣れてきたらおきかえずに計算できるよう練習しよう。
多項式の展開の練習~その2~
- $(3a-b+3c)^2$
- $(a^2+a-1)^2$
- $(x+y+z)(x+y-z)$
- $(2a-b+c)(2a+b+c)$
- \begin{align} &(3a-b+3c)^2\\ =&\boldsymbol{9a^2+b^2+9c^2-6ab+18ca}\\ &\quad\blacktriangleleft 3項の平方の公式参照 \end{align}
- \begin{align} &(a^2+a-1)^2\\ =&(a^2)^2+a^2+(-1)^2+2\cdot a^2\cdot a\\ &+2\cdot a\cdot(-1)+2\cdot(-1)\cdot a^2\\ &\quad\blacktriangleleft 3項の平方の公式参照\\ =&\boldsymbol{a^4+2a^3-a^2-2a+1} \end{align}
- $(x+y)$ が共通していることに注意して \begin{align} &(x+y+z)(x+y-z)\\ =&(x+y)^2-z^2\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照\\ =&\boldsymbol{x^2+2xy+y^2-z^2}\\ &\quad\blacktriangleleft 平方の公式参照 \end{align}
- $(2a+c)$ が共通していることに注意して \begin{align} &(2a-b+c)(2a+b+c)\\ =&(2a+c)^2-b^2\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照\\ =&\boldsymbol{4a^2+4ac+c^2-b^2}\\ &\quad\blacktriangleleft 平方の公式参照 \end{align}