条件つきの等式の証明
等式の中には,恒等式ではないが,ある条件のもとではつねに成り立つ等式がある.
たとえば, $a^2 − 2b^2 = ab$ は恒等式ではない( $a = b = 1$ を考えてみよ). しかし,$a + b = 0$ という条件の下では常に成り立つ. これを証明するには,条件 $a + b = 0$ から $b = − a$ が成り立つことを利用して
(左辺) $= a^2 − 2( − a)^2 = − a^2$
(右辺) $= a( − a) = − a^2$
より,(左辺)$=$(右辺)とすればよい.
一般に,ある条件のもとで成り立つ等式を証明するには,その条件式を証明すべき式に代入すればよい. そのことを次の例題で学んでいこう.
条件つきの等式の証明-その1-
次の等式を証明せよ.
- $a + b = 0$ のとき, $ab + a^2 = 0$
- $a + b = 0$ のとき, $a^2 − 2b^2 = ab$
- $ x + y = 1$ のとき,
$\qquad x^2 + y^2 + 1 = 2(x + y − xy)$
左辺を変形すると
(左辺)$ = a(a + b) = 0$ $\blacktriangleleft a+b=0$ を使った
よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.
$a + b = 0$より,$b = − a$ なので
(左辺)$=a^2 − 2( − a)^2 = − a^2$ $\blacktriangleleft b=-a$ を使った
(右辺) $= a( − a) = − a^2$
よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.
$x + y = 1$ より,$y = 1 − x$ なので
(左辺) $= x^2 + (1 − x)^2 + 1$ $\blacktriangleleft y=1-x$ を使った
$= x^2 + 1 − 2x + x^2 + 1 = 2(x^2 − x + 1)$
(右辺)$=2{x + (1 − x) − x(1 − x)}$ $\blacktriangleleft y=1-x$ を使った
$= 2(x + 1 − x − x + x^2) $
$= 2(x^2 − x + 1)$よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.
条件つきの等式の証明-その2-
次の等式を証明せよ.
- $xy = 1$ のとき,
$\qquad\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{1}{x}\right)=4$ - $x+\dfrac{1}{x}=3$ のとき,
$\qquad x^2+\dfrac{1}{x^2}=7$ - $xyz = 1$ のとき,
$\qquad\dfrac{1}{xy}+\dfrac{1}{yz}+\dfrac{1}{zx}=x+y+z$
$xy = 1$ より,$x\neq 0$ であるから,$y=\dfrac{1}{x}$ と変形できる.
これを左辺にもちいると
(左辺) $=\left(x+x\right)\left(\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{x}\right)$
$=2x\cdot\dfrac{2}{x}$
$=4=$ (右辺) となる.
$x+\dfrac{1}{x}=3$ を左辺にもちいると
(左辺) $=\left(x+\dfrac{1}{x}\right)^2-2\cdot x\cdot \dfrac{1}{x}$ $\blacktriangleleft a^2+b^2=(a+b)^2-2ab$ という変形を使った
$=3^2-2=7$ $\blacktriangleleft x+\dfrac{1}{x}=3$ を使った
より,(左辺) $=$ (右辺)である.
$xyz = 1$ より, $z=\dfrac{1}{xy}$ なので
(左辺) $=\dfrac{1}{xy}+\dfrac{1}{y\cdot\dfrac{1}{xy}}+\dfrac{1}{\dfrac{1}{xy}\cdot x}$
$=\dfrac{1}{xy}+x+y$
$=x+y+z=$ (右辺) $\blacktriangleleft z=\dfrac{1}{xy}$ を使った
となる.