数学I 第1章 数と式 — いろいろな数
自然数
自然数とは何か
ものの数を数えるとき、表現の仕方はいろいろだが、私たちは順序をつけて考えている。 たとえば
- 日本語ならば: 一、二、三、四、・・・
- 英語ならば: one、two、three、four、・・・
- ドイツ語ならば: ein、zwei、drei、vier、・・・
- フランス語ならば: un、deux、trois、quatre、・・・
順序をつけてものの数を数えるということは、たとえば、リンゴ
注 フランスの数学者集団ニコラ・ブルバキ(Nicolas Bourbaki, 1934年~) は「順序」のことを「母なる構造」と表現している。
愛着ある飼い猫のように、その個性が重要な場合には、数を数えることに意味は無い。 しかし、
注 数を数える代わりに、名前を付けるという方法もある。しかし、それも羊100匹だとメリー、ドリー、ヤリー、・・・と名付けるだけで大変である。
ものの数を数える行為によって生まれる数、
たとえば、次の数は全て自然数である。
自然数の図示
自然数の様子を図で見えるようにするため、以下のようなことを考えよう。
まず、向きのある直線(下図では右向き)上に原点
注 コンパスで順にたどるような感じである。

このようにすると、線分のつなぎ目の点として自然数を表現できる。
この自然数の図示によって生まれた、上図のような数を表す直線のことを数直線 (number line) という。数直線上のある点

整数
整数とは何か
自然数をものの個数と見ている限り、自然数どうしの差のうち、たとえば、
しかし、
(円)
の貸しになるように、
(円)
として
このような、自然数にマイナス(
たとえば、次の数は全て整数である。
整数の図示
整数の様子を図でみるためには、自然数のときと同じような操作を、原点

今後、数直線上の両端にある記号「
有理数
有理数とは何か
一般に、整数
注 rationalには「合理的な」や「理性的な」という意味があるが、ratioには「比」という意味もある。その点で、明治時代に日本に輸入されたとき、rational numberは“有比数”とでも訳されるべきだったのかもしれない。また、比があることがすなわち合理である、という古代ギリシアの数学(紀元前600年~300年頃)の考え方のなごりが興味深い。
注 | | 加法 | 乗法 | 減法 | 除法 | |---|---|---|---|---| | 自然数 | ○ | ○ | × | × | | 整数 | ○ | ○ | ○ | × | | 有理数 | ○ | ○ | ○ | ○ |
有理数の四則演算(しそくえんざん)(加法・乗法・減法・除法)の結果は有理数になる。このように、演算によって得られる数の集まりが、演算に使う数の集まりと同じになるとき、その数の集まりは四則演算について閉じている (closed) という。表は四則演算について、閉じているものに○、閉じていないものに×をつけてまとめたものである。ただし、除法について、
で割ることは考えないものとする。
ある整数を
有理数のうち、
たとえば、次の数は全て有理数である。
整数
有理数では、
有理数どうしの比の値
たとえば、有理数
複分数は、「分母にある分数の分母」と「分子にある分数の分母」の最小公倍数を分母と分子に掛けることにより、普通の分数の形(分母も分子も整数の形)になおすことができる。よって、複分数も有理数である。
次の複分数を、普通の分数の形になおしなさい。
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有理数と少数
有理数は筆算により 小数 (decimal number) になおすことができる。
たとえば、右図のような筆算を行うと
のように、割りきれて 有限小数 (finite decimal) になるもの のように、割り切れず 無限小数 (infinite decimal) になるもの
がある。無限小数の中でも、上の
循環小数は、循環する部分がわかるように、記号「
分数は小数で、小数は分数で表せ。
有理数の図示

一般に、
注 これは、コンパスと定規で作図できる。余裕のある人は確認してみよう。
有理数の間には必ず有理数がある
例えば
一般に、2つの有理数
こうして、2つの異なる有理数をどのように選んでも、その間に必ず有理数が存在することがわかる。
注 このことを、有理数の稠密(ちゅうみつ)性 という。
2つの異なる有理数の間には必ず有理数があるのだから、これを数直線上のいろいろな場所で考えると、数直線上には有理数に対応する点がびっしり詰まっているとわかる。

実数
無理数とは何か
さきほどの有理数の話から、数直線上にはびっしりと有理数が詰まっていることがわかった。では、今度は逆に、数直線上の点で表される値のすべてが、有理数として表せるのかについて考えてみよう。
たとえば、2辺の長さがそれぞれ
では、この点に対応する有理数はあるのか、つまり、
(ある事柄を証明するとき、仮にその事柄が間違っているものとして話をすすめると矛盾が導かれることを示し、そのことによってもとの事柄が成り立つと結論する論法がよく用いられる。この論法のことを背理法 (reduction to absurdity) という。背理法について詳しくはFTEXT 数学Aで学ぶ。)
解答を見る
この両辺を2乗すると
そこで、
この例題からわかるように、数直線上の点として表されるような値でも、有理数ではない数が存在する。そして、その数を無理数 (irrational number) という。
注 ir-rationalのirは否定を表す接頭語であり、irrationalとはrationalでない、つまり、比で表せないという意味である。
循環しない無限小数
これを限りなく繰り返すとき、両辺に現れる無限小数
なお、無理数の近似値を筆算によって求める方法については、『付録』を参照せよ。
実数とは何か
数直線上の点として表される数、すなわち有理数と無理数をあわせた数を実数 (real number) という。
有理数と無理数を考えることにより、数直線上の点はすきま無くみっちり埋まる。
注 このことを、実数の連続性 (continuity) といい、有理数の稠密性と区別される。詳しくはFTEXT 数学IIIで学ぶ。
たとえば
注 ネイピア数
について、詳しくはFTEXT 数学IIIで学ぶ。
今後、
以上見てきたいろいろな数について、まとめると次のようになる。


次の実数について、以下の問に答えよ。
- 自然数を選べ。
- 整数を選べ。
- 有理数を選べ。
- 無理数を選べ。
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絶対値
絶対値とは何か
数直線上で、原点
- 正の数はその値がそのまま絶対値となり、
- 負の数は符号を変えた数が絶対値となる。
符号を変えるには、

数直線上の2点

解答を見る
絶対値の中身が「
- a)
のとき、 であるから - b)
のとき、 であるから
以上a)、b)より、
が成り立つ。- a)
右欄外の表のように、4つの場合に分けて考える。
、 のとき
、 、 であるからとなり成立。 、 のとき
、 、 であるからとなり成立。 - ii)の証明において、
と を入れ替えればiii)の証明になっているので、成立する。
- ii)の証明において、
、 のとき
、 、 であるから
以上より、いずれの場合も
が成り立つ。まず、
であることを示す。a)
のとき 、 であるからとなり成立。 b)
のとき 、 であるからとなり成立。
以上a)、b)より
が成立。これより となり、 が成り立つ。
絶対値の性質
絶対値に関するこれらの等式は、式変形の方法の1つとしてこれからよく用いる。初めは、
- は2乗すると絶対値は外れる(付く)
- は掛け算のところで絶対値は切れる(つながる)
- は割り算のところで絶対値は切れる(つながる)
のように記憶するとよい。
元記事: http://www.ftext.org/text/section/57(取得日 2026-08-07)
最終更新: 2026-08-08
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