数学I 第4章 論理と集合 — 命題の結合

この節の前提命題/集合と集合の関係

一見複雑な命題も、よくみると小さな命題が組み合わさってできている。正しさに着目する限り、その組み合せ方は「かつ」、「または」、「~ない」、「ならば」の4通りを考えれば十分である。以下では、その組み合わさり方のパターンをみていく。

命題の「かつ」と「または」

命題の「かつ」

§

定義1命題の「かつ」

2つの命題 に対して、「 は共に真である」という命題を

「 かつ ( and )」

と表す。

この新しい命題「 かつ 」の真偽をまとめると、次の表のようになる。

かつ
真 真 真
真 偽 偽
偽 真 偽
偽 偽 偽

この表を真偽値表 (truth table) という。

例えば、命題 をそれぞれ

  • 「ペンギンは鳥類である」 (真)
  • 「 は より小さい」 (偽)

としたとき、「 かつ 」つまり「ペンギンは鳥類であり、かつ、 は より小さい」の真偽は、 のうち が偽であるから、全体として偽となる。

命題の「または」

§

定義2命題の「または」

2つの命題 に対して、「 の少なくとも一方は真である」という命題を

「 または ( or )」

と表す。

この新しい命題「 または 」の真偽値表は、次のようになる。

または
真 真 真
真 偽 真
偽 真 真
偽 偽 偽

例えば、命題 をそれぞれ

  • 「ペンギンは鳥類である」 (真)
  • 「 は より小さい」 (偽)

としたとき、「 または 」つまり「ペンギンは鳥類であるか、または、 は より小さい」の真偽は、 のうち が真であるから、全体として真となる。

問題1命題の「かつ」と「または」

次のそれぞれにおいて、「 かつ 」と「 または 」の真偽を答えよ。

解答を見る
  1. なので、命題 は偽であり、また、命題 は真である。よって

    「 かつ 」は

    偽

    「 または 」は

    真

  2. 命題 は真であり、命題 も真である。よって

    「 かつ 」は

    真

    「 または 」は

    真

  3. 命題 は偽であり、命題 も偽である。よって

    「 かつ 」は

    偽

    「 または 」は

    偽

命題の否定

命題の否定について

§

定義3命題の否定

ある命題 に対して、 が真の場合には偽に、 が偽の場合には真となる命題を、 の 否定 (negation) といい

「 でない (not )」

と書く。 の否定は、記号 で表すこともある。

この新しい命題 の真偽値表は、次のようになる。

真 偽
偽 真

例えば、真である命題として、命題 を

「ペンギンは鳥類である」 (真)

とすると、この命題の否定 は

「ペンギンは鳥類ではない」 (偽)

となる。また、偽である命題として、命題 を

「 は より小さい」 (偽)

とすると、この命題の否定 は、「 は より小さくはない」すなわち

「 は 以上である」 (真)

となる。

命題の「ならば」

命題の「ならば」について

§

定義4命題の「ならば」

2つの命題 に対して、「もし が真であるならば、 は真である」という命題は、簡単に

「 ならば (if then )」

と書かれ、記号で と表す。

このとき、初めの命題 を

仮定 (assumption)

といい、後の命題 を

結論 (conclusion)

という。

2つの命題 の真偽それぞれについて、この新しい命題 の真偽をまとめると、次の表のようになる。

真 真 真
真 偽 偽
偽 真 真
偽 偽 真

仮定 が偽のときは、結論 の真偽にかかわらず、全体として真になることに注意しよう。このように、仮定が偽であるために「 ならば 」が真になることを空虚な真 (vacuous truth) という。こうなる理由は次の例を考えてみるとわかりやすい。

ある人が私たちに

「もしテストで100点をとれた ならば、美味しいものをおごってあげる 」

という約束したとしよう。そのとき、もし私たちがテストで100点をとったのに、美味しいものをおごってもらえなかったら、この人はうそをついたことになる。しかし、テストで100点をとれなかったときには、たとえおごってもらえなくても、この人はうそをついたことにならないし、また、たとえおごってもらったとしても、やはりこの人はうそをついたことにならない。

このように、日常的に用いている「ならば」は、仮定が偽のときには結論が真でも偽でも、全体としては偽とはならないという主張なのだと考えられる。ここで、100点をとれなかったからといって、この約束が無かったことになるのではないことに注意しよう。『命題』で学んだように、命題は真か偽のどちらか一方に定まるものであった。つまり、偽とならない以上、「 ならば 」は真である。それゆえ、「ならば」に対する真偽の割り当ては、上の表のようになるのである。

同値とは何か

§

定義5命題の同値

2つの命題 に対して、「 かつ 」という命題は、簡単に と書かれる。

が真であるとき、命題 と は同値 (equivalence)であるという。

2つの命題 の真偽それぞれについて、この新しい命題 の真偽をまとめると、次の表のようになる。

真 真 真 真 真
真 偽 偽 真 偽
偽 真 真 偽 偽
偽 偽 真 真 真

この表からわかるように、 と が同値となるのは、 と がともに真であるときか と がともに偽であるとき、つまり と の真偽が一致するときである。言い換えると、同値である2つの命題は、真偽に関して意味する内容が等しいということである(その意味で同値と呼ぶ)。

例として と、 の否定すなわち の真偽値表を書き並べてみると、次のようになる。

真 偽 真
偽 真 偽

この表をみると、 と の真偽値は一致しているので同値である。これは、2重否定「 でないということはない」が「 である」と同じ意味であることを示している。

問題2「ならば」のいいかえ

下の真偽値表を埋め、「 」と「 または 」が同値、すなわち が成り立つことを示せ。

または
真 真
真 偽
偽 真
偽 偽
解答を見る
または
真 真 偽 真 真
真 偽 偽 偽 偽
偽 真 真 真 真
偽 偽 真 真 真

この例題より、「 」と「 または 」の真偽が一致するのが確かめられるので、次のことがいえる。

§

定理6「ならば」のいいかえ

2つの命題 に対して が成り立つ。

つまり、「 ならば 」は「 でない、または 」と言い換えられる。

問題3ド・モルガンの法則(命題版)

「 かつ 」を 、「 または 」を と書く。下の真偽値表を埋め、次の関係が成り立つことを示せ。

真 真
真 偽
偽 真
偽 偽
解答を見る
真 真 偽 偽 真 真 偽 偽 偽 偽
真 偽 偽 真 偽 真 真 真 偽 偽
偽 真 真 偽 偽 真 真 真 偽 偽
偽 偽 真 真 偽 偽 真 真 真 真

この例題より、 と の真偽と、 と の真偽が一致するのが確かめられるので、次のことがいえる。

§

定理7ド・モルガンの法則(命題版)

2つの命題 に対して が成り立ち、これをド・モルガンの法則という。

つまり、「 かつ 」の否定は「 でない、または でない」、「 または 」の否定は「 でない、かつ でない」と言い換えられる。

逆・裏・対偶

§

定義8逆・裏・対偶

の形をした命題に対して

を の逆 (converse)

を の裏 (inverse)

を の対偶たいぐう (contraposition)

という。

四角形の4つの頂点に命題 p ⇒ q、q ⇒ p、pの否定 ⇒ qの否定、qの否定 ⇒ pの否定が配置され、左右が「逆」、上下が「裏」、対角線が「対偶」の両向き矢印で結ばれている。

ここで、命題 が真であっても、その逆 や裏 が真であるとは限らないことに注意しよう。例えば、命題「 ならば 」は真であるが、その逆「 ならば 」は、 のとき でありながら とならないので偽である。また、その裏「 ならば 」も、同じ のとき でありながら となるので偽である。一方、対偶ともとの命題の間には、次のような関係がある。

問題4対偶は同値であることの証明

下の真偽値表を埋め、次の関係が成り立つことを示せ。

真 真
真 偽
偽 真
偽 偽
解答を見る
真 真 偽 偽 真 真
真 偽 偽 真 偽 偽
偽 真 真 偽 真 真
偽 偽 真 真 真 真

この例題より、 と の真偽が一致するのが確かめられるので、次のことがいえる。

§

定理9対偶は同値

2つの命題 に対して が成り立つ。

最終更新: 2026-10-27

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