数学I 第4章 論理と集合 — 条件の結合
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この節の前提 命題の結合 / 条件と真理集合
前の節では、ある条件 p(x) を真とする x の集まり、真理集合を学んだ。命題が組み合わされて命題が作れたように、条件の場合にも条件の組み合わせによって、新たに条件を作ることができる。この新たに作られた条件の真理集合は、集合の基礎で学んだ集合と対応させて理解することができる。
条件の「かつ」と「または」
「かつ」の真理集合
§
定義1条件の「かつ」
2つの条件 p(x) 、q(x) に対して、「p(x),q(x) は共に真である」という主張は条件となり
「p(x) かつ q(x) 」
と書く。
いま、ある条件 p(x),q(x) において、変数 x のとり得る範囲を考え、それを全体集合 U とし、p(x),q(x) の真理集合をそれぞれ P,Q とする。
『命題の「かつ」』 でみたように、命題 p(a),q(a) (a∈U) が共に真のときに限り、命題「p(a) かつ q(a) 」は真になるので、条件「p(x) かつ q(x) 」の真理集合は P∩Q となる。
「または」の真理集合
§
定義2条件の「または」
2つの条件 p(x),q(x) に対して、「p(x),q(x) の少なくとも一方は真である」という主張は条件となり
「p(x) または q(x) 」
と書く。
いま、ある条件 p(x),q(x) において、変数 x のとり得る範囲を考え、それを全体集合 U とし、p(x),q(x) の真理集合をそれぞれ P,Q とする。
『命題の「または」』 でみたように、命題 p(a),q(a) (a∈U) が共に偽のときに限り、命題「p(a) または q(a) 」は偽になるので、それ以外のときを考えて、条件「p(x) または q(x) 」の真理集合は P∪Q となる。
条件の否定
否定の真理集合
§
定義3条件の否定
条件 p(x) に対して
「p(x) ではない」
という主張は条件となり、条件 p(x) の否定という。
条件 p(x) の否定は、記号 p(x) で表すこともある。
いま、ある条件 p(x) において、x のとり得る範囲を考え、それを全体集合 U とし、命題 p(a) (a∈U) が真となるような要素 a の集合、つまり条件 p(x) の真理集合を P とする。
『命題の否定』 でみたように、命題 p(a) が偽のときに命題 p(a) は真になるので、条件 p(x) の真理集合は P の補集合 P となる。
問題1条件の否定
x,y は実数とする。次の条件の否定を答えよ。
x=1
x≧-2
x+y>0
x は無理数である
解答を見る
「x は 1 である」の否定は「x は 1 ではない」、よって
x≠1
「x は-2 以上である」の否定は「x は -2 以上ではない」、つまり「x は -2 より小さい」、よって
x<-2
「x と y を足したものは 0 より大きい」の否定は「x と y を足したものは 0 より大きくはない」、つまり「x と y を足したものは 0 以下である」、よって
x+y≦0
「x は無理数である」の否定は「x は無理数ではない」、つまり
「x は有理数である」
条件の「ならば」
「ならば」の真理集合
§
定義4条件の「ならば」
2つの条件 p(x),q(x) に対して、「もし p(x) が真であるならば、q(x) は真である」という主張は条件となり
「p(x) ならば q(x) 」
と書き、記号では p(x)⇒q(x) と表す。
このとき、初めの条件 p(x) を仮定といい、後の条件 q(x) を結論という。
いま、ある条件 p(x),q(x) において、変数 x のとり得る範囲を考え、それを全体集合 U とし、p(x),q(x) の真理集合をそれぞれ P,Q とする。
『命題の「ならば」』 でみたように、 a∈U として命題 p(a) が真で命題 q(a) が偽のときに限り命題 p(a)⇒q(a) は偽になるので、それ以外の場合を考えて、条件 p(x)⇒q(x) の真理集合は P∪Q となる。
必要条件と十分条件
ここまで、条件 p(x)⇒q(x) の真理集合を考えてきた。条件は x の値が決まるまで真偽が決まらないので、それ自体は命題ではない。
ところで、『命題』 の問題「真・偽の判断」では、「 x²=9 ならば x=3 」の真偽を答えた。x の値を決めていないのに、命題として扱っている。これは、この文を「どんな x をとっても、 x²=9 ならば x=3 である」という意味で読んでいたからである。そう読めば、 x=-3 のとき x²=9 なのに x=3 でないので、この主張は偽と決まる。
このように、条件 p(x)⇒q(x) の全体に「全体集合内のすべての x において」を付けると、x の値によらず真偽が1つに決まる。つまり
A:「全体集合内のすべての x において、 p(x)⇒q(x) は真となる」
という主張は命題となる。
注 「すべての x について」のように、x の動く範囲を定めて条件から命題を作ることを量化 (quantification) という。論理学では「すべての x について」を記号 x (全称記号 )、「ある x が存在して」を記号 x (存在記号 )で表し、命題Aは x (p(x)⇒q(x)) と書く。 は All の A を、 は Exists の E を裏返した文字である。
条件の「ならば」の図のような場合では、白抜きの部分の要素 a では、p(a) は真、q(a) は偽だから命題「 p(a)⇒q(a) 」は偽である。つまり、命題Aは偽となる。
この要素 a のことを、この命題の反例 (counterexample) という。
しかし、次の図のように、条件 p(x),q(x) の真理集合 P,Q が P⊂Q となる場合には、全体集合内のいかなる要素をとろうとも、 p(x)⇒q(x) は真となるので、この命題Aは真となる。
§
定義5必要条件と十分条件
全体集合内のすべての x に対して、 p(x)⇒q(x) が真であるとき
q(x) は p(x) であるための必要条件 (necessary condition) である
p(x) は q(x) であるための十分条件 (sufficient condition) である
という。
注 例えば、P を鳥類の集合、Q を動物の集合とする。何か要素を選んだとき、それが鳥類であるには、それ以前にまず動物であることが“必要”である。それゆえ、動物であることは鳥類であることの必要条件という。また、何か要素を選んだとき、それが鳥類であれば、動物であることに“十分”である。それゆえ、鳥類であることは動物であることの十分条件という。とはいえ、このように覚えるのは混乱しやすく難しい。そこで、はじめのうちは、次のように覚えておくとよい。
“必要”や“十分”という言葉の意味についてはこだわらず、真理集合 P,Q において「小さい方が十分条件」、「大きい方が必要条件」と単純に覚えてしまおう。ただし、これが使えるのは一方の真理集合がもう一方を含んでいるときである。どちらも相手を含まないときは、どちらの向きにも反例があるので、必要条件でも十分条件でもない。
§
定義6必要十分条件
また、全体集合内のすべての x に対して、 p(x)⇒q(x) と q(x)⇒p(x) がともに真であるとき
q(x) は p(x) であるための必要十分条件 (necessary and sufficient condition) である
または同値 (equivalence) であるといい、 p(x)⇔q(x) と書く。
この場合は、次の図のように真理集合 P と Q は等しく、p(x) は q(x) であるための必要十分条件でもある。
問題2必要条件と十分条件
次の四角の中に
(ア) 必要条件であるが十分条件ではない
(イ) 十分条件であるが必要条件ではない
(ウ) 必要十分条件である
(エ) 必要条件でも十分条件でもない
のうち、適当なものを選んで入れよ。
p(x) は q(x) であるための、[A]
p(x): x²=2x q(x): x=2
p(x, y) は q(x, y) であるための、[B]
かつ p(x, y):x≧0 かつ y≦0 q(x, y):xy≦0
p(x, y) は q(x, y) であるための、[C]
かつ かつ p(x, y):xy=0 かつ x+y=0 q(x, y):x=0 かつ y=0
p(x) は q(x) であるための、[D]
p(x):x>0 q(x):x≠1
解答を見る
p(x) ⇔ x(x-2)=0 ⇔ x=0∨x=2
これより
p(x),q(x) の真理集合をそれぞれ P,Q とすると図のような関係になっている
p(x)⇒q(x) は偽 (反例 x=0 )
p(x)q(x) は真
となるので、[A] には(ア)が入る。
積 xy が 0 以下になるのは、x,y の符号が異なるときか、少なくとも一方が 0 のときだから
q(x, y) ⇔ (x≧0∧y≦0)∨(x≦0∧y≧0)
これより
p(x, y),q(x, y) の真理集合をそれぞれ P,Q とすると図のような関係になっている
p(x, y)⇒q(x, y) は真
p(x, y)q(x, y) は偽 (反例 x=-1 かつ y=1 など)
となるので、[B] には(イ)が入る。
p(x, y) に関して、まず
xy=0 ⇔ x=0∨y=0
このうち、さらに x+y=0 を満たす x,y は x=0 かつ y=0 である。これより
p(x, y),q(x, y) の真理集合をそれぞれ P,Q とすると図のような関係になっている
p(x, y)⇒q(x, y) は真
p(x, y)q(x, y) は真
つまり、 p(x, y)⇔q(x, y) であるから、[C] には(ウ)が入る。
p(x),q(x) の真理集合をそれぞれ P,Q とすると図のような関係になっている
p(x)⇒q(x) は偽 (反例 x=1 )
p(x)q(x) は偽 (反例 x=-1 など)
となるので、[D] には(エ)が入る。
「すべて」と「ある」
「すべて」と「ある」の否定
『必要条件と十分条件』でみたように、条件 p(x) に「全体集合内のすべての x について」を付けると命題になる。同じように、「p(x) を満たす x が少なくとも1つある」という主張も命題になる。
§
定義7「すべて」と「ある」
条件 p(x) の真理集合を P 、全体集合を U とする。
「すべての x について p(x) 」とは、 P=U ということである
「ある x について p(x) 」(p(x) を満たす x が存在する)とは、 P≠∅ ということである
例えば、U を実数全体とすると、「すべての x について x²≧0 」は真であり、「ある x について x²=-1 」は偽である。
この2つの命題を否定すると、どうなるだろうか。「すべての x について p(x) 」が偽であるとは、 P=U でないこと、つまり P に入らない x が少なくとも1つあることである。言い換えると「ある x について p(x) でない」となる。同じように、「ある x について p(x) 」が偽であるとは、 P=∅ ということ、つまり「すべての x について p(x) でない」となる。
§
定理8「すべて」と「ある」の否定
「すべての x について p(x) 」の否定は「ある x について p(x) でない」
「ある x について p(x) 」の否定は「すべての x について p(x) でない」
つまり、「すべて」を否定すると「ある」が現れ、「ある」を否定すると「すべて」が現れる。「全員が合格した」の否定は「全員が不合格だった」ではなく「不合格の人がいる」であり、「合格した人がいる」の否定は「全員が不合格だった」である。
注 これは『ド・モルガンの法則(命題版)』 の量化版にあたる。 U={a1,a2,…,an} のとき、「すべての x について p(x) 」は「p(a1) かつ p(a2) かつ … かつ p(an) 」、「ある x について p(x) 」は「p(a1) または p(a2) または … または p(an) 」と同じであり、「かつ」の否定が「または」に変わるのと同じことが起きている。記号では x p(x)⇔ x p(x) 、 x p(x)⇔ x p(x) と書く。
特に、命題A「すべての x について p(x)⇒q(x) 」の否定を考えてみよう。『「ならば」のいいかえ』 と『ド・モルガンの法則(命題版)』 から、 p(x)⇒q(x) の否定は「p(x) かつ q(x) でない」になるので、命題Aの否定は
「ある x について、p(x) かつ q(x) でない」
となる。これは「反例となる x が存在する」ということであり、命題Aが偽であることを示すには反例を1つ挙げればよい、ということと一致する。
問題3「すべて」と「ある」の否定
次の命題の否定を作れ。また、もとの命題と否定した命題のどちらが真か答えよ。ただし、x は実数、n は整数とする。
すべての x について、 x²≧0 である。
ある x について、 x²=-1 である。
すべての n について、n が偶数ならば n² は 4 の倍数である。
すべての x について、 x²=9 ならば x=3 である。
ある n について、 n²=2 である。
解答を見る
否定は「ある x について、 x²<0 である」。実数の2乗は 0 以上なので、もとの命題が真 。
否定は「すべての x について、 x²≠-1 である」。実数の2乗が負になることはないので、否定した命題が真 。
否定は「ある n について、n は偶数であるが n² は 4 の倍数でない」。n が偶数のとき n=2k (k は整数)とおけ、 n²=4k² は 4 の倍数となるので、もとの命題が真 。
否定は「ある x について、 x²=9 であるが x≠3 である」。 x=-3 がこれを満たすので、否定した命題が真 。
否定は「すべての n について、 n²≠2 である」。 n²=2 となる整数 n は存在しないので、否定した命題が真 。
最終更新: 2026-10-14
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