数学I 第2章 関数と方程式・不等式 — 1次不等式と1次関数

不等式の性質

不等式とは何か

たとえば

「ある数 倍してから を加えた数は、 より大きい」

ということを、不等号を用いて表すと となる。 この のように

定義1不等式 §

2つの数の大小関係を、不等号を使って表したものを不等式 (inequality) という。

等式の場合と同じように、不等号の左側にある式を左辺 (left side)、右側にある式を右辺 (right side) という。 の左辺は 、右辺は である。やはり、等式の場合と同じように、左辺と右辺をあわせて両辺 (both sides) という。

ここで不等号の種類をまとめると以下のようになる。

読み方 意味
より小さい( 未満である)
以下である または
より大きい
以上である( 未満である) または
問題1不等式で表す

次の文章を、不等式を使って表せ。

  1. の和は、 倍より小さい。
  2. 倍から 引いた数は、 倍以上である。
解答を見る
  1. は、 より小さい。

    より小さい」は

  2. は、 以上である。

    以上」は

不等式の性質について

ここでは として、不等式について成り立つ性質を考えていこう。

以下の説明では、不等式の性質を、数直線上の点の移動として理解できるように図が載せてある。ただ式を追うのではなく、点の移動のイメージをもつようにしよう。

  1. 両辺に同じ数を足す(引く)場合

    a+2b+2

    左辺、右辺それぞれに を加えた は、不等式 を満たす。

    a-3b-3

    また、左辺、右辺それぞれから を引いた も、不等式 を満たす。

    つまり、「不等式の両辺に同じ数を足しても(引いても)、もとの不等式と不等号の向きが変わらない」といえる。

  2. 両辺に正の数を掛ける(割る)場合

    2a2b

    左辺、右辺それぞれに を掛けた は、不等式 を満たす。

    a/3/3

    また、左辺、右辺それぞれを で割った値 も、不等式 を満たす。

    つまり、「不等式の両辺に同じ正の数を掛けても(割っても)、もとの不等式と不等号の向きが変わらない」といえる。

  3. 両辺に負の数を掛ける(割る)場合

    -2a-2b

    左辺、右辺それぞれに を掛けた は、不等式 を満たす。

    -a/3-b/3

    また、左辺、右辺それぞれを で割った値 も、不等式 を満たす。

    つまり、「不等式の両辺に同じ負の数を掛ける(割る)と、もとの不等式と不等号の向きが逆になる」といえる。

以上をまとめると次のようになる。

定理2不等式の性質 §
  1. すべての実数
  2. のとき
  3. のとき
問題2不等式の性質

のとき、次のそれぞれ大小関係を、不等号を使って表せ。

解答を見る
  1. 負の数で割ると不等号の向きは逆になる

暗記1不等式の移項の仕組み
解答を見る

以上のことから、不等式は等式の場合と同じように移項(いこう) (transposition) できるのがわかる。ただし、不等式の場合には「両辺に同じ負の数を掛けたり割ったりすると、もとの不等式と不等号の向きが逆になる」ことに注意しよう。

1次不等式の解法

1次不等式の解法とは

不等式 を満たす はどのような値だろうか。

たとえば、 を満たすが、 を満たさない。

一般に、不等式を満たす の値をその不等式の解 (solution) といい、すべての解を求めることを不等式を解く (solve) という。では、実際にこの不等式 を解いてみよう。 これが、不等式 の解である。つまり、 より大きければ、 を満たす。

不等式を移項して整理することにより などの形に変形できる不等式を、一般に1次不等式 (linearinequality) という。

連立不等式

が満たすべき不等式が2つ以上あるとき、それらをまとめて連立不等式 (simultaneous inequalities) という。連立不等式を解くとは、全ての不等式を同時に満たす の範囲を求めることである。

問題3連立不等式
解答を見る
  1. まず、 を解く。 次に、 を解く。

    1の図

    以上の を共通して満たす

  2. まず、 を解く。 次に、 を解く。

    2の図

    以上の を共通して満たす は、存在しないので、答えは解なし

    条件を満たす の値がない場合はこのように答える

1次不等式の応用

問題41次不等式の応用
  1. 地点から 離れた 地点まで歩いた。はじめは急ぎ足で毎時 、途中から疲れたので毎時 の速さで歩いた。所要時間が 時間以内のとき、急ぎ足で何 以上歩いたか求めよ。
  2. の食塩水と の食塩水がある。 の食塩水 の食塩水を何 か混ぜて、 以上の食塩水を作りたい。 の食塩水を何 以上混ぜればよいか求めよ。
解答を見る
  1. 急ぎ足で歩いた距離を として、 について解けばよい。

    1の図

    疲れて歩いた距離は となり、歩くのにかかる時間はそれぞれ、 時間、 時間となる。

    全体の所要時間は 時間以内であるから を満たす を求めればよい。

    負の数を掛ける・割るときは逆符号

    よって、急ぎ足ではkm以上歩いた。

  2. の食塩水を 混ぜるとして、 について解けばよい。

食塩水の量(g) 食塩の量(g)
 の食塩水  の中には  の食塩が溶けている。また、混ぜる  の食塩水  の中には、 の食塩が溶けている。

これらを混ぜて、濃度が 以上になるから を満たす を求めればよい。 よって、 の食塩水は 以上混ぜればよい。

1次不等式と1次関数の関係

1次不等式と1次関数の関係について

1次方程式と1次関数でみたように1次方程式と1次関数の間に密接な関係があった。それと同じように、1次不等式と1次関数にも密接な関係がある。

たとえば、1次不等式 の解について考える。この1次不等式の「左辺を とおいた1次関数」 を考える。すると、不等式 を解くためには となる の範囲を求めればよい。よって、右のグラフから である。

1次不等式(1)の範囲 実際、この1次不等式を解いてみると となり、確かに1次関数の より大きくなる の範囲となっている。

問題51次方程式をグラフを使って解く

次の1次不等式をグラフを使って解け。

解答を見る
  1. 1の図

    右図より、 となるのは のとき。よって、1次不等式 の解は となる。

  2. 2の図

    右図より、 となるのは のとき、よって1次不等式 の解は となる。

  3. 3の図

    右図より、 となるのは のとき、よって1次不等式 の解は となる。

  4. 4の図

    右図より、 となるのは のとき、よって1次不等式 の解は となる。

定理31次不等式の解 §

の場合の、1次不等式と1次関数の解の関係はつぎのようにまとめることができる。

のグラフ y=ax+bのグラフ
の解
の解
の解
の解
の解

絶対値を含む1次関数・方程式・不等式

絶対値と方程式・不等式

絶対値でも学んだように、実数 の絶対値 は、数直線上での原点と実数 に対応する点との距離を表すので、次のことがいえる。

定理4絶対値と方程式・不等式の関係 §

絶対値を含む の方程式、不等式に関して ただし、 とする。

絶対値と方程式・不等式の関係の図
絶対値と方程式・不等式の関係の図
問題6絶対値を含む1次方程式・1次不等式
解答を見る
  1. なので、 より、 である。

    のときは のときは

  2. なので、 より

  3. なので

  4. なので、 より

場合に分けて絶対値を外す

以下のような問題では、場合に分けて絶対値を外す必要がある。(絶対値参照)

  • 絶対値を含む1次関数の式のグラフを書く
  • の形でない方程式・不等式を解く
問題7絶対値を含む1次関数

次の式で与えられた関数のグラフを描け。

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  1. 1のグラフ
    1. 、つまり のとき
    2. 、つまり のとき

    i、iiより、グラフは右図のようになる。

  2. 2のグラフ
    1. 、つまり のとき
    2. 、つまり のとき

    i、iiより、グラフは右図のようになる。

問題8絶対値を含む1次方程式

次の方程式を解け。

解答を見る
    1. 、つまり のとき これは、 に適している。
    2. 、つまり のとき これは、 に適さない。

    iまたはiiを満たすものが解となり、 である。

    1. 、つまり のとき これは、 に適している。
    2. 、つまり のとき これは、 に適している。

    iまたはiiを満たすものが解となり、 である。

    1. 、つまり のとき これは、 に適さない。
    2. 、つまり のとき これは、 に適さない。

    i、iiのどちらにも満たす解がないので、解なしが答えとなる。

    実際、 のグラフを両方書いてみると、交点をもたない。

問題9絶対値を含む1次不等式
解答を見る
    1. 1-iの図
      1-iの図

      、つまり のとき これと、 を合わせて、

    2. 1-iiの図
      1-iiの図

      、つまり のとき これと、 を合わせて、

    iまたはiiを満たすものが解となり、 である。

    1. 2-iの図
      2-iの図

      、つまり のとき これと、 を合わせて、

    2. 、つまり

    2-iiの図

    
    

    のとき これと、 を合わせて、

    iまたはiiを満たすものが解となり、 である。

元記事: http://www.ftext.org/text/section/62(取得日 2026-08-07)

最終更新: 2026-08-08

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