数学I 第5章 三角比 — 鋭角の三角比

この節ではまず、直角三角形について考え、より小さな角(鋭角)について三角比の基礎を学ぶ。どのような多角形も、対角線を引くことによっていくつかの三角形に分割できる。逆にいえば、適当な三角形を組み合せていくことにより、任意の多角形を作ることができる。そのため、三角形は多角形の中でも最も基本的な図形であるといえる。ここではまず、三角形の分析のための基礎となる、直角三角形について考えてみる。

正接

三角形の表記に関する注意

において、以下のように略することが多い。 今後、特に断りのない限りこの記法にしたがうこととする。

三角形ABCがあり、各頂点の内側に角の大きさA、B、C、それぞれの向かい合う辺BC、CA、ABの側に長さa、b、cが示されている。

直角三角形の表記に関する注意

図のような直角三角形 からみるとき

  • のことを斜辺 (hypotenuse)
  • のことを対辺 (opposite side)
  • のことを底辺 (base)

という。

直角三角形ABCにおいて、∠Cが直角で、頂点Aの左側には目のマークが描かれている。辺ABに斜辺、辺BCに対辺、辺CAに底辺と記載されている。 このうち底辺、対辺は、 から直角をみることによって相対的に決まる。図で描かれたときに、下の部分にあるから底辺というのではない。

たとえば、次の図のように斜めになっている直角三角形でも、点 からみたときの斜辺、対辺、底辺は、それぞれ辺 となる。

頂点Cが直角の直角三角形ABCにおいて、辺ABに斜辺、辺BCに対辺、辺CAに底辺と添えられており、頂点Aの下には目のマークが描かれている。 この章の図にある“目”のマークは、本文中で「~からみたときの」とある場合の説明の補助として使われている。自分も同じ所から見つめているつもりになって、図形を考えてみよう。

川を渡らずに川幅を知る方法

次の図において、川を渡ることなく、C点から対岸のB点までの距離BCを求めるにはどうしたらよいだろうか。

斜めに流れる川を挟んで直角三角形ABCが描かれている。手前の岸にある辺ACの長さは40m、∠Cは直角で、対岸の木がある点Bを見通す∠Aの大きさは35°である。 まず、C点から見て、直線CBと直角の方向にA点を適当に定め、C点からA点までの距離を測る。

たとえば、これは40mであったとする。次に、A点から見て、直線ABと直線ACのつくる角の大きさを測る。たとえば、これは であったとする。

が直角の直角三角形であるから、この縮図 を、たとえば、 として描くと図のようになる。

∠C'が直角の直角三角形A'B'C'があり、∠A'=35°、辺A'C'=3cmである。辺B'C'の長さを示す位置には、四角で囲まれたアとcmが書かれている。 そこで、辺 の長さを測ると約 になっている(実際に定規(じょうぎ)で測ってみよう)。

ここで、 は相似であるから が成り立つ。この値は、いわばACに対するCBの倍率であることに注意しよう。

実際には、 であったから と計算できる。

このように、実際に川を渡らずとも距離BCが求められたのは、適当な縮図 を使い、ACに対するCBの倍率(比)を計算したためである。この値は縮図の大きさによらない、 という角度に関する固有の値である。

の答え

正接の定義

一般に、 が直角である直角三角形 において、 から見たときの の値は、 の大きさに関係無く、 の大きさだけで決まる。

が直角で の大きさが等しい2つの直角三角形は、2組の角がそれぞれ等しいので相似であり、一方は他方を拡大または縮小したものになっているからである。

たとえば、図の の0.75倍の大きさで描かれているので、 となり、直角三角形の大きさとは関係ないことがわかる。

直角三角形ABCの内部に、角Aを共有する一回り小さい直角三角形AB'C'が重ねて描かれている。∠Cと∠C'は直角で、辺ACは底辺、辺BCは対辺、辺ABは斜辺と書かれている。 ここで、この の値を 正接(せいせつ)または、タンジェント (tangent) といい、 と書く。

§

定義1正接の定義

図の直角三角形 において とする。

∠Cを直角とする直角三角形ABCにおいて、底辺ACの長さはb、高さBCの長さはaと示されている。頂点Aの左外側には、角Aを見つめる目のマークが描かれている。
左下に角A、右下に直角をもつ直角三角形があり、底辺の長さがb、高さがaと記されている。その直角三角形の内部に、底辺から高さへと重なるようにアルファベットのtの筆記体が描かれている。

問題1正接の定義

次の図において、 をそれぞれ求めよ。

左には、直角を挟む2辺の長さが3と4で、長さ3の辺と斜辺の間に角Aがある直角三角形。右には、直角を挟む2辺の長さが4と2で、長さ4の辺と斜辺の間に角Bがある直角三角形。
解答を見る

図より

左側には底辺の長さが3、高さが4で1つの角がAである直角三角形が、右側には底辺の長さが4、高さが2で1つの角がBである直角三角形が並んでいる。

正弦と余弦

正弦と余弦の定義

正接の場合と同じように、 が直角である直角三角形 において、 から見たときの の値や、 の値は、 の大きさに関係無く、 の大きさだけで決まる。

たとえば、図の の0.75倍の大きさで描かれているが となり直角三角形の大きさは関係ないのがわかる。

直角三角形ABCと、角Aを共有する小さな直角三角形AB'C'が重なって描かれている。斜辺ABに「斜辺」、底辺ACに「底辺」、対辺BCに「対辺」と記載され、角Aの左側には目のイラストが添えられている。 ここで、 の値を 正弦(せいげん)または、サイン (sine) といい、 と書く。

また、 の値を 余弦(よげん)または、コサイン (cosine) といい、 と書く。

§

定義2正弦・余弦の定義

次の図の直角三角形 において とする。

∠Cが直角である直角三角形ABCがあり、斜辺ABの長さはc、底辺ACの長さはb、高さBCの長さはaと示されている。頂点Aの左側には角Aを見る目のイラストが添えられている。

左下が角A、右下が直角で、斜辺がc、底辺がb、高さがaの直角三角形に重ねて、角Aから斜辺を通って高さへ向かう筆記体のsが描かれている。 直角を右下、角Aを左下に持つ直角三角形があり、底辺がb、高さがa、斜辺がcと表記されている。角Aを挟むように斜辺から底辺へ筆記体のcが重ねて描かれている。

問題2正弦・余弦の定義

次の図において、

  1. 長さ を求めよ。
  2. を求めよ。
  3. を求めよ。
直角三角形が2つある。左は角Aをもつ直角三角形で、角Aと直角にはさまれた辺(角Aに隣り合う辺)の長さが3、角Aの向かい側の辺の長さが4、斜辺がxである。右は角Bをもつ直角三角形で、角Bに隣り合う辺の長さが4、角Bの向かい側の辺の長さが2、斜辺がyである。
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  1. 三平方の定理より、

  2. 図より定義にしたがって

    右下に直角がある直角三角形があり、左下の角が角Aと指定されている。各辺の長さは、底辺が3、高さにあたる縦の辺が4、斜辺が5である。

  3. 図より定義にしたがって

    左下の角がB、右下の角が直角である直角三角形。水平な底辺の長さが4、右側の高さが2、斜辺の長さが2√5とそれぞれ記されている。

三角比の値

三角比の値

正接と正弦および余弦をまとめて、三角比 (trigonometric ratio) という。いろいろな角度に関する三角比の値を三角比の表にまとめてある。

この表よりたとえば、 の値は約 、また のときの の大きさは約 とわかる。

暗記1三角比の値

次の問に答えよ。

  1. 3辺の長さが の直角三角形を用い、 を求めよ。また、 を求めよ。
  2. 3辺の長さが の直角三角形を用い、 を求めよ。
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  1. 1辺の長さが の正三角形を、1つの頂点から向かい合う辺へ引いた垂線で半分にすると、3辺の長さが の直角三角形になる。このとき正三角形の の角が2等分されるから、その角の大きさは であり、 の角と向かい合う辺の長さが である。次の直角三角形より

    左下の角が30°、右下の角が直角である直角三角形がある。底辺の長さが√3、高さが1、斜辺の長さが2とそれぞれ示されている。

    また、次の図のように向きを変えて

    左下の角が60°、右下の角が直角である直角三角形。底辺の長さが1、高さとなる右側の辺の長さが√3、斜辺の長さが2と示されている。

  2. 直角二等辺三角形の残りの2つの角は等しく、その和は であるから、どちらも である。次の直角三角形より

    左下の角の大きさが45°、右下の角が直角である直角三角形がある。底辺の長さが1、高さが1、斜辺の長さが√2と表されている。

問題3三角比どうしの関係

  1. である直角三角形 について、次の問に答えよ。

    1. であったとする。斜辺の長さが であるとき、他の2辺の長さを求めよ。
    2. a の三角形を利用して、 の値を求めよ。
  2. 上の1 のやり方をまねて、次の問に答えよ。ただし、 である。

    1. のとき、 の値を求めよ。
    2. のとき、 の値を求めよ。
    3. のとき、 の値を求めよ。
解答を見る
    1. 直角三角形 を図のように考える。

      角Aを左下、直角を右下とする直角三角形があり、斜辺が3、右側の辺がa、底辺がbと示されている。三角形の内部には、角Aから斜辺、右側の辺へとたどる筆記体のsが描かれている。

      の値は に等しく、 より 。このとき、三平方の定理より であるから である。よって、直角三角形 の他の2辺の長さは、 である。

    2. a で求めた値を書き込めば図のようになる。

      角Aを左下、直角を右下とする直角三角形。斜辺の長さが3、右側の縦の辺の長さが2、底辺の長さが√5と各辺に書き込まれている。

      これに の定義を用いれば である。

    1. となる直角三角形の1つとして、次の図が考えられる。

    左下の角が角A、右下の角が直角である直角三角形。斜辺の長さが5、高さの長さが3、底辺の長さがxと、3つの辺の長さが示されている。

    このとき、底辺の長さを とすると、三平方の定理より であるから よって、 となる。 2. となる直角三角形の1つとして、次の図が考えられる。

    左下の角がA、右下の角が直角である直角三角形。底辺の長さが1、斜辺の長さが3と与えられており、対辺の長さがyと表記されている。

    このとき、対辺の長さを とすると、三平方の定理より であるから よって、次のように求められる。 3. となる直角三角形の1つとして、次の図が考えられる。

    底辺の長さが1、高さが7の直角三角形があり、右下の角が直角になっている。左下の角に記号Aがつけられ、斜辺の長さがzと示されている。

    このとき、斜辺の長さを とすると、三平方の定理より であるから よって、次のように求められる。

三角比の相互関係

の間にはどのような関係があるか

三角比どうしの関係の例題でみたように、同じ角度に対する三角比の値は、互いにばらばらなものではなく、ある関係によって結ばれている。

以下では、この三角比の間に成り立つ関係を、一般的に導いてみよう。

図の直角三角形において であるから、 と表すことができる。つまり が成り立つ。また、三平方の定理より であるから、これに を代入して が成り立つ。普通 などは、それぞれ と書く。

つまり が成り立つ。

暗記2 と他の三角比との関係

という関係から、次の式を導け。

解答を見る
  1. の両辺を で割ると

  2. の両辺を で割ると

§

定理3三角比の相互関係

図の直角三角形において

  1. の関係
  2. の関係
  3. の関係
  4. の関係

が成り立つ。

角Cが直角である直角三角形ABCがあり、右上が頂点B、左下が頂点Aである。頂点Aの角の内側には、角Aを示す弧と記号Aが書き込まれている。 上にtan A、左下にsin A、右下にcos Aが配置されている。各文字の間はii)、iii)、iv)の両矢印で結ばれており、中央に向かう破線にはi)が付されている。

三角比どうしの関係の例題を、今度はこの関係を使って解いてみよう。

問題4三角比の相互関係の利用

三角比の相互関係を使って、次の問いに答えよ。ただし、 である。

  1. のとき、 の値を求めよ。
  2. のとき、 の値を求めよ。
  3. のとき、 の値を求めよ。
解答を見る
  1. より

    なので、 である。

    また、 より

  2. より

    なので、 である。

    また、 より

  3. より

    なので、 である。

    また、 より

の三角比

図の直角三角形において であるから、以下のように表すことができる。

直角三角形ABCで、∠Cが直角、辺BCがa、辺ACがb、辺ABがcである。角Aと角Bが示されており、頂点Bの右上には視点を表す目のイラストが描かれている。
§

定理4 の三角比

三角比について が成り立つ。

直角が∠Cである直角三角形ABCで、左下の角の大きさがA、右上の角が90°-Aと表されている。頂点Bの近くには、角Bからの視線を表す目のマークが描かれている。

これより、 の三角比は、 の三角比になおすことができる。

次の例題で確かめてみよう。

問題5 の三角比の利用

次の三角比を 以下の角の三角比で表せ。

解答を見る

2.

3.

三角比の利用

三角比から辺の長さを求める

次の図の三角形において、 であるが、この式の両辺に を掛けて という式を得る。 についても同じようにして となる。これらの式は、三角比から辺の長さを求めるときに用いられる。

左下の角がA、右下の角が直角である直角三角形が示されている。斜辺の長さがc、底辺の長さがb、高さの長さがaとそれぞれ表されている。
§

定理5三角比から辺の長さを求める

次の図の直角三角形において が成り立つ。

左下の角がA、右下の角が直角である直角三角形がある。斜辺の長さがc、底辺の長さがb、右側の垂直な辺の長さがaと示されている。

問題6三角比と辺の長さ

次の図形について、次の問いに答えよ。ただし、 とする。

  1. のとき、長さが に等しい線分を、それぞれ答えよ。
  2. のとき、 の長さを、 で表せ。
線分ACを共有する2つの直角三角形ABCとACDがあり、∠Bと∠ACDが直角である。また、∠ACBの大きさがB、∠CADの大きさがAと示されている。
解答を見る
  1. また、 より、

問題7三角比の応用

三角比の表を使って、以下の問に答えよ。ただし、小数第2位を四捨五入して答えなさい。なお、三角比の表より である。

  1. 目の高さが1.5mにある人が、木から5.0m離れた地点に立って木のてっぺんを見上げた。

    すると、水平な地面と視線のなす角

  2. 凧たこ揚あげをしていたら、水平な地面に対し の角度で長さ50.0mのひもが伸びきった。この凧は地面からおよそ何mの高さにあるか。

    ただし、ひもを持つ手は1.0mの高さにあり、糸が一直線に伸びているとする。

地面から1.5mの高さにある目の位置と、そこから5.0m離れて立つ木が描かれている。目の位置から木の先端を見上げる視線と水平線のなす角が42°と示されている。
解答を見る
  1. 水平な地面上の点Aから垂直に立つ線分TAと目の位置Oに対し、∠Hが直角の直角三角形OTHがある。∠TOH=42°、OH=5.0m、Oの高さは1.5mと示されている。

    図のように をとると、木の高さは の長さになる。

    に注目して

    よって、木の高さはおよそ

  2. 点Oから点Tへ長さ50.0mの線分が斜めに伸び、水平線OHとなす角は50°である。Tから地面の点Aへ下ろした垂線とOHの交点Hで∠OHTは直角をなし、Oの地面からの高さは1.0mである。

    図のように をとると、たこの高さは の長さになる。

    に注目して

    よって、たこの高さはおよそ

最終更新: 2026-08-13

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