数学A 第2章 確率 — 確率分布と期待値

確率変数と確率分布

確率変数とは何か

10本のくじがあり,そこから1本のくじを引くという試行を考える. A賞が当ると1000円,B賞が当ると500円,C賞が当ると100円もらえるものとする.

A賞,B賞,C賞の当る確率は,それぞれ であるから,賞金と確率の関係は表のようにまとめることができる.

ここで,1本のくじを引いた結果もらえる賞金を 円とすれば, は1000,500,100のどれかの値をとる. このとき, がどの値をとるかは試行の結果によって決まる.

また, となるときの確率を のように書くとすると,これはA賞に当るという事象の確率であるから

と書くことができる.他のものも同様にして

と書ける.

一般に,いまの のように,試行の結果によってその値が定まる変数を確率変数(probability variable)という. 確率変数を表すのには,大文字のアルファベット を使うことが多い.

確率分布とは何か

先程まとめた表

は,確率変数と,その値となるときの確率の対応を示したものであり, この対応のことを確率分布(probability distribution)という.確率分布を上のように表にしてまとめたものを確率分布表(probability distribution chart)という

表以外にもグラフでまとめたものもあり,それは確率分布グラフという.

確率変数 が, という値をとる試行での確率分布が

とすると,確率分布表は

となる.

期待値

期待値とは何か

さて,先程のくじ引きにおいて,このくじを1回引くとき,平均していくらの賞金が期待できるかについて考えてみよう.

このくじの賞金は総額で

であるから,くじ1本あたりの賞金は,平均して

と考えられる.

この計算の見方を少し変えると(総額= , くじの本数= とすると)

と表すこともできる.

一般に,確率変数 のとり得る値のすべてが

であり,その値をとるときの確率がそれぞれ

であるとする.つまり,確率分布が のとき

の値を,確率変数 期待値(expextation)または平均(mean)といい と表す.

先程のくじ引きの例では,くじ1本あたりの賞金の平均値が期待値である.

定義1期待値の の定義 §

確率分布が のとき,

期待値

と定義する.

問題1期待値の計算~その1~

次の1. と2. ではどちらが有利と考えられるか.

  1. さいころを1回振り,(出た目) 100円もらえる.

  2. さいころを2回振り,1回でも6の目が出たら1200円もらえる.

  3. と2. それぞれの期待値を求めてから判断する.

解答を見る
  1. もらえる金額を 円とすると,確率分布は
  2. 2回のさいころの結果,出る目の順列は 通りあり,これらは同様に確からしい.このうち,1回でも6の目が出るのは,(数えて)11通りあるので,もらえる金額を 円とすると,確率分布は

以上1. と2. の期待値の結果から,

2. の方が有利

と考えられる.

問題2期待値の計算~その2~

次の問いに答えよ.ただし,計算には期待値の定義を使うこと.

  1. 1,2,3,4と数字の書いてあるカードがそれぞれ1枚ずつ計4枚ある.カードを2枚引くとき,そのカードの番号の和を確率変数 として,期待値 を求めよ. また,カードの番号の積を確率変数 として,期待値 を求めよ.
  2. 1,2,3の数字の書いてあるくじ(引いたら元に戻すものとする)を2回引き, その数字の和を確率変数 として,期待値 を求めよ. また,数字の積を確率変数 として,期待値 を求めよ.
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  1. 確率変数 の確率分布は次のようになる.
  2. 確率変数 の確率分布は次のようになる.

確率変数の1次式の期待値

確率変数 のとる値が のとき, の1次式

という値をとる,別の新しい確率変数であると考える.

確率分布を とすると, ならば

が成り立つ.

よって,確率変数 の期待値

となる.

問題3確率変数の1次式の期待値

さいころ投げを1回行い,出た目を確率変数 とするとき, を求めよ.

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の確率分布は次のようになる.

これより

(参考) の確率分布

いま,この例題において,確率変数 の計算の様子をわかりやすくするため

2X+1 2 1+1 2 2+1 2 3+1 2 4+1 2 5+1 2 6+1
P

となおしてから,期待値 を計算してみると

つまり, が成り立つ.

解答を見る

確率変数 の確率分布を

とする( は自然数)このとき

暗記1確率変数の1次式の期待値

を確率変数, を定数とするとき

が成り立つことを証明せよ.

解答を見る

の確率分布は次のようになる.

これより

(参考) の確率分布

いま,この例題において,確率変数 の計算の様子をわかりやすくするため

2X+1 2 1+1 2 2+1 2 3+1 2 4+1 2 5+1 2 6+1
P

となおしてから,期待値 を計算してみると

つまり, が成り立つ.

解答を見る

確率変数 の確率分布を

とする( は自然数)このとき

定理2確率変数の1次式の期待値の公式 §

を確率変数, を定数とするとき

が成り立つ.

この公式は,確率変数を 倍すれば,期待値(平均)は 倍になり, 確率変数に を加えれば,期待値は だけ大きくなることを主張している. 感覚的には明らかといえるだろう.

確率変数の和の期待値

確率変数 の確率分布が ,確率変数 の確率分布が ,となる試行を考える.

が値 をとり, が値 をとる確率を と書くとし

とする.

2つの確率変数 はいろいろな値をとるが,それらを足した値をもまたいろいろな値をとり, この値を別の新たな確率変数と考えることもできる.この新しい確率変数

と書くことにする. の確率分布表は以下のようになる.

このとき, の期待値

問題4確率変数の和の期待値

硬貨1枚とさいころ1個を投げる試行を考える.硬貨に表が出たときは1,裏が出たときは0を対応させる確率変数を とする.また,さいころに出た目を確率変数 とする. を求めよ.

解答を見る

とすると, のとる値は1から7までの整数となる.

例えば, となるのは のときか, のときであり,これらは排反であるから

である.同様にして,計算すると次のようにまとめられる.

これより, の期待値

となる.

(参考1) の確率分布

(参考2) の確率分布

いま,この例題において,確率変数 の計算の様子をわかりやすくするため

となおしてから,期待値 を計算してみると

つまり, が成り立つ.

解答を見る

確率変数 の確率分布を

確率変数 の確率分布を ,とし

とする.

の確率分布表は以下のようになる.

このとき, の期待値

暗記2確率変数の和の期待値

を確率変数とするとき

が成り立つことを証明せよ.

解答を見る

とすると, のとる値は1から7までの整数となる.

例えば, となるのは のときか, のときであり,これらは排反であるから

である.同様にして,計算すると次のようにまとめられる.

これより, の期待値

となる.

(参考1) の確率分布

(参考2) の確率分布

いま,この例題において,確率変数 の計算の様子をわかりやすくするため

となおしてから,期待値 を計算してみると

つまり, が成り立つ.

解答を見る

確率変数 の確率分布を

確率変数 の確率分布を ,とし

とする.

の確率分布表は以下のようになる.

このとき, の期待値

定理3確率変数の和の期待値の公式 §

を確率変数とするとき

が成り立つ.

独立な確率変数の積の期待値

硬貨投げとさいころ投げのように,独立試行では確率変数 のとる値すべての組 に対して

が成り立つ.

一般に,2つの確率変数 があって, のとるすべての値 のとる値 に対して

が成り立つとき,確率変数 は互いに独立(independent)であるという.

問題5独立な確率変数の積の期待値

硬貨1枚とさいころ1個を投げる試行を考える. 硬貨に表が出たときは1,裏が出たときは0を対応させる確率変数を とする. また,さいころに出た目を確率変数 とする. を求めよ.

解答を見る

とすると, のとる値は0から6までの整数となる.

例えば, となるのは のときであるから

である.同様にして,計算すると次のようにまとめられる.

これより, の期待値

となる.

(参考1) の確率分布

(参考2) の確率分布

いま,この例題において,確率変数 の計算の様子をわかりやすくするため

となおしてから,期待値 を計算してみると

つまり, が成り立つ.

解答を見る

確率変数 の確率分布を

確率変数 の確率分布を ,とすると, は独立なので

が成り立つ.

の確率分布表は以下のようになる.

このとき, の期待値

暗記3独立な確率変数の積の期待値

を独立な確率変数とするとき

が成り立つことを証明せよ.

解答を見る

とすると, のとる値は0から6までの整数となる.

例えば, となるのは のときであるから

である.同様にして,計算すると次のようにまとめられる.

これより, の期待値

となる.

(参考1) の確率分布

(参考2) の確率分布

いま,この例題において,確率変数 の計算の様子をわかりやすくするため

となおしてから,期待値 を計算してみると

つまり, が成り立つ.

解答を見る

確率変数 の確率分布を

確率変数 の確率分布を ,とすると, は独立なので

が成り立つ.

の確率分布表は以下のようになる.

このとき, の期待値

定理4独立な確率変数の積の期待値の公式 §

を確率変数とするとき

が成り立つ.

問題6公式を使った期待値の計算

期待値の計算~その2~と同じ問題を,今度は公式を上手に使って解け.

  1. 1,2,3,4と数字の書いてあるカードがそれぞれ1枚ずつ計4枚ある.カードを2枚引くとき,そのカードの番号の和を確率変数 として,期待値 を求めよ. また,カードの番号の積を確率変数 として,期待値 を求めよ.
  2. 1,2,3の数字の書いてあるくじ(引いたら元に戻すものとする)を2回引き, その数字の和を確率変数 として,期待値 を求めよ. また,数字の積を確率変数 として,期待値 を求めよ.
解答を見る
  1. はじめに引いたカードの番号を確率変数 ,2枚目に引いたカードの番号を確率変数 とすると の確率分布は次のようになる.
  2. はじめに引くくじの番号を確率変数 ,2回目に引くくじの番号を確率変数 とすると, の確率分布は次のようになる.

元記事: http://www.ftext.org/text/section/100(取得日 2026-08-07)

最終更新: 2026-08-07

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