数学A 第1章 場合の数 — 数え上げの基本
ものの数を正しく数えるには「数えもらしをしない」「同じものを繰り返して数えない」ことが大切である。数える個数が少ないときには、適当に数えても間違いは出にくいが、数える個数が多いときには、何らかの方針をもって数え上げないとミスを犯しやすくなる。ここでは、数を数え上げるときに、私達が普段何気なく使っている基本的な方法について確認していこう。
整理して考えるということ
表でまとめる
ここでは、1から4の目が書いてある正四面体のさいころを2回振る場合と、1から4の数字が書いてある4枚のカードから続けて2枚引く場合の2つについて、起こりうる場合をすべて書き出してみる。
まずは、表でまとめてみる。
正四面体のさいころを振った場合
- 順列でまとめた場合
各マスの左側の数字が1回目に出た目、右側の数字が2回目に出た目を表す。 - 組合せでまとめた場合
1回目と2回目に出た目の順番は区別しないので、上の表で、例えば「2,1」と「1,2」は同じものとなり、この表には片側の「1,2」のみ記される。
- 順列でまとめた場合
カードを引く場合
順列でまとめた場合
各マスの左側の数字が1回目に引いたカード、右側の数字が2回目に引いたカードを表す。同じカードは2度引けないので、例えば「1,1」などはない。
組合せでまとめた場合
1回目と2回目に引いたカードの順番は区別しないので、上の表で、例えば「2,1」と「1,2」は同じものとなり、この表には片側の「1,2」のみ記される。
樹形図でまとめる
今度は、同じ内容を枝分かれした木のような形の樹形図 (tree diagram)でまとめてみる。
正四面体のさいころを振った場合
順列でまとめた場合
左側の数字が1回目に出た目、右側の数字が2回目に出た目を表す。
組合せでまとめた場合
1回目と2回目に出た目の順番は区別しないので、上の図で、例えば「2,1」と「1,2」は同じものとなるので、この図には片側の「1,2」のみ記される。
カードを引く場合
順列でまとめた場合
左側の数字が1回目に引いたカード、右側の数字が2回目に引いたカードを表す。同じカードは2度引けないので(例えば「1,1」などはない)、除外してある。
組合せでまとめた場合
1回目と2回目に引いたカードの順番は区別しないので、上の図で、例えば「2,1」と「1,2」は同じものとなるので、この図には片側の「1,2」のみ記される。
問題1表や樹形図の利用
次の問に答えよ。
- 1から4の目が書いてある正四面体のさいころを2回振り、出る目の順列を考える。2つの目の和が5となるのは何通りか。
- 1から4の目が書いてある正四面体のさいころを2回振り、出る目の組合せを考える。2つの目の和が5となるのは何通りか。
- 1から4までの数字が書いてある4枚のカードから、連続して2枚のカードを引く。はじめに引いたカードの数字が、あとに引いたカードの数字より小さくなるのは何通りか。
- 1から4までの数字が書いてある4枚のカードから、連続して2枚のカードを引く。2枚のカードの数字の和が5以上となる組合せは何通りあるか。
解答を見る
順列か組合せなのかを考えて、表や樹形図でまとめてから数える。以下の解答では、表でまとめた場合の解答である。樹形図についてまとめた場合には、次の図を参照のこと。数える樹形図の枝にはチェックマーク✓が入れてある。
下の表で、和が5になるものを数えればよい。「1,4」「2,3」「3,2」「4,1」の4通り。
下の表で、和が5になるものを数えればよい。「1,4」「2,3」の2通り。
下の表で、はじめに引いたカードの数字が、あとに引いたカードの数字より小さくなるものを数えればよい。「1,2」「1,3」「1,4」「2,3」「2,4」「3,4」の6通り。
下の表で、2枚のカードの数字の和が5以上となるものを数えればよい。「1,4」「2,3」「2,4」「3,4」の4通り。
積の法則・和の法則
物を数えるときに使う考え方
先程の『整理して考えるということ』では、表や樹形図などを使って、情報を整理することを学んだ。このように整理してしまえば、理論的にはすべてのものの数を数えることができる。
しかし、表や樹形図を作成するにはあまりに数が大きすぎる場合があるので、表や樹形図を書かずとも、数を数えられるようにならなければいけない。
以下では、数を数えるときに使う、もっとも基本的な考え方である、積の法則と和の法則について確認する。これを応用すれば、表や樹形図を書かなくても、ものの数を数えることができるようになる。
積の法則
「3種類のケーキから1つ、2種類の飲み物から1つ選んで頼むケーキセットの決め方は何通りか」という問題は、次のように考えることができる。
まず、事柄A,Bを
- A:ケーキを選ぶ
- B:飲み物を選ぶ
とおくと、Aの方法3通りのそれぞれに対してBの方法2通りが決まるから、ケーキセットの決め方は
定理1積の法則
2つの事柄A,Bについて、Aの起こり方が
和の法則
「区別する大小2個のさいころを投げる場合、出た目の数の和が6の倍数となるのは何通りか」という問題は、次のように考えることができる。
まず、事柄A,Bを
- A:出た目の数の和が6である
- B:出た目の数の和が12である
とおくと、この2つの事柄が両方同時に起こることはないので、それぞれの事柄の起こる数 を足せばよく
定理2和の法則
2つの事柄A,Bについて、Aの起こり方が
なお、3つ以上の事柄についても、どの2つも同時に起こることがないならば、同じように足し合わせればよい。
集合の要素の個数と場合の数
“場合”を集合の要素に対応させる
ある事柄の起こり方が全部で
この事柄の起こり方は、集合の要素に対応させることができる。
例えば、①の球が3個、②の球が2個、計5個の球があるとする。
この中から3個選んで、順に1列に並べるという事柄をAとすると事柄Aには、次の図のように7通りの場合がある。

これを順に
このように、事柄における“場合”は、集合の要素に簡単に対応させることができる。 このように対応させることにより、場合の数を求める際、『集合の要素の個数』で学んだことが利用できる。
以下、特に断りのない限り、事柄Xと集合
積の法則・和の法則(集合版)
問題2積の法則・和の法則の利用
1、2、3、4、5、6の数字が書いてあるさいころを1回振り、さらに1、2、3、4の数字が書いてある4枚のカードから1枚引くとする。
- 2つの数字の出方には全部で何通りの場合があるか。
- 2つの数字の和が4の倍数となるのは何通りか。
解答を見る
さいころの数字6通りのそれぞれに対して、カードの数字は4通りに定まるから、積の法則より
《補足》 このことを、集合で表現すると以下のようになる。
:「さいころを1回振る」 :「カードを1枚引く」 とおくと、求める場合の数は
となり2つの数字の和が4の倍数となるのは
i) 2つの数字の和が4の場合
ii) 2つの数字の和が8の場合
に分けることができ、i)の場合は(さいころ,カード)の順で
の3通りあり、 ii)の場合も
の3通りある。 また、これらは同時に起こることはないから、和の法則より
《補足》 このことを、集合で表現すると以下のようになる。
:「2つの数字の和が4である」 :「2つの数字の和が8である」 とおくと、求める場合の数は
となり、 であるから
補集合での考え方
問題3補集合の利用
1、2、3、4、5、6の数字が書いてあるさいころを1回振り、さらに1、2、3、4の数字が書いてある4枚のカードから1枚引くとする。
2つの数字の和が4の倍数とは"ならない"のは何通りか。
解答を見る
積の法則・和の法則の利用の例題(1)で求めた全体24通りのうち、「2つの数字の和が4の倍数となる」のは(2)より、6通りである。
よって、「2つの数字の和が4の倍数とはならない」のは
《補足》 このことを、集合で表現すると以下のようになる。
ここで、
全体集合
この問題は、補集合の考え方を使わなくても、例えば和の法則で次のように解くこともできる。
とおくと、和が4の倍数になるさいころの数字を除いて数えればよいから、カードの数字が1のときは3の1通りを除いて
また、どの2つの事柄も同時におこることがなく、この4つですべての場合が尽くされているので
となるが、補集合を考えたときに比べてかなり面倒である。
そこで、次のような原則を引き出すことができるだろう。
定理3補集合で考えるときのポイント
全体集合
として、
ド・モルガンの法則
問題4ド・モルガンの法則
1、2、3、4、5、6の数字が書いてあるさいころを1回振り、さらに1、2、3、4の数字が書いてある4枚のカードから1枚引くとする。 2つの数字の積が偶数となるのは何通りか。
解答を見る
2つの数字の偶奇とその積の偶奇の関係は下の表のようになる。
これより、積が偶数になる場合より、奇数になる場合の方が数えやすそうだとわかるので、補集合を考えてみることにする。
とおくと、求める場合の数は
ここで、『ド・モルガンの法則』より
であり、集合
となるので、積の法則から
よって
通り
包含と排除の原理
問題52集合の包含と排除の原理
1、2、3、4、5、6の数字が書いてあるさいころを1回振り、さらに1、2、3、4の数字が書いてある4枚のカードから1枚引くとする。 2つの数字の積が偶数となるのは何通りか。『包含と排除の原理』を用いて求めよ。
解答を見る
『ド・モルガンの法則』の例題の場合と同じように
とおくと、求める場合の数は
が成り立つ。また、集合
となる。
ここで、
まず、
また、
そして、
となるので
通り
問題6集合を利用した数え上げのまとめ
1から100までの自然数のうち、次のような数は全部でいくつあるか。
- 3で割りきれ、かつ、7で割りきれる数。
- 3で割りきれるか、または、7で割りきれる数。
- 3で割りきれなく、かつ、7で割りきれない数。
- 3で割りきれないか、または、7で割りきれない数。
解答を見る
事柄A、Bをそれぞれ
とする。まず、
であるから
である。
「3で割りきれ、かつ、7で割りきれる数」は集合で
と表すことができ、 これは結局「21で割りきれる数」のことである。 あまり16であるから「3で割りきれるか、または、7で割りきれる数」は集合で
と表すことができる。求める場合の数は
である。全体集合をとすると であり、『ド・モルガンの法則』より であるから求める場合の数は
である。『ド・モルガンの法則』より であるから
最終更新: 2026-08-20
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