数学I 第4章 論理と集合 — いろいろな証明法

対偶法

対偶法とは何か

対偶は同値でみたように、命題 は同値、すなわちこの2つの命題の真偽に関する意味は同じになるので、命題 を証明する代わりに、命題 を証明してもいい。このようないいかえにより、証明する論法のことを対偶法 (contraposition) という。

例えば

「すべての整数 について、 が偶数ならば は偶数である」

という命題を証明してみよう。

は同じ を2回かけたものなのだから、 が偶数なら も偶数であることは自明ともいえるが、いざ証明せよといわれると難しい。

そこで、この命題の対偶である

「すべての整数 について、 が奇数ならば は奇数である」

を考えてみよう。こちらの命題であるならば、次のように解答を作ることができる。

【解答】

奇数 はある整数 を用いて、 と表すことができるから は偶数であるから、それに を加えた は奇数である。

問題1対偶法

次の命題を証明せよ。

  1. すべての整数 について、 が奇数ならば、 はともに奇数である。
  2. すべての実数 について、 ならば、 かつ である。
解答を見る
  1. この命題の対偶は

    「すべての整数 について、 または が偶数であるならば は偶数である」

    となる。

    偶数 はある整数 を用いて、 と表すことができるから となり、 は偶数である。

    が偶数である場合も、ある整数 を用いて、 と表すことができるから、 となり、 は偶数である。

    以上より、対偶の命題が証明されたので、もとの命題

    「すべての整数 について、 が奇数ならば はともに奇数である」

    も証明された。

  2. この命題の対偶は

    「すべての実数 について、 または であるならば である」

    となる。

    まず、一般に実数 において、 であり、 となるのは のときに限る。これは実数 についても同様である。

    いま、実数 のとき、 となるから となり、 である。

    また、実数 のとき、 であるから となり、 である。

    以上より、対偶の命題が証明されたので、もとの命題

    「すべての実数 について、 ならば かつ である」

    も証明された。

背理法

背理法とは何か

ある命題を証明するとき、その命題の否定を仮定して話をすすめると、つじつまが合わなくなること(矛盾(むじゅん) (contradiction))を示し、そのことによって、もとの命題が成り立つと結論する論法がよく用いられる。この論法のことを背理法(はいりほう) (reduction to absurdity) という。

背理法とは何か

背理法という言葉は、一見難しそうなイメージを与えるかもしれないが、実は私達が日常的に使っている論法である。例えば、「あなたがこの文章を読んでいる」ことの証明を考えてみよう。もし、あなたがこの文章を読んでいない(否定)と仮定すると、あなたがこの文章の内容を理解していることと矛盾する。よって、「あなたはこの文章を読んでいる」と証明できるといった具合である。

問題2背理法

次の命題を証明せよ。

  1. 3つの整数 を満たすとき、 のうち少なくとも1つは偶数である。
  2. 三角形の内角のうち、少なくとも1つは 以上である。
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  1. 3つの整数 の全てが奇数であると仮定する。

    のうち少なくとも1つは偶数である」の否定は「 の全てが奇数である」となる

    このとき、 もすべて奇数である。ここで、左辺 は奇数どうしの和であるから偶数となるが、右辺 は奇数であり、 を満たすことと矛盾する。

    よって、 のうち少なくとも1つは偶数である。

  2. 3つの内角の全てが 未満であると仮定する。

    「少なくとも1つは 以上である」の否定は「全てが 未満である」となる

    このとき、3つの内角の和は 未満となり、三角形の内角の和が であることと矛盾する。

    三角形の内角のうち、少なくとも1つは 以上である。

暗記1有名な背理法の応用例

が有理数でないことを証明せよ。

解答を見る

が有理数であると仮定する。

整数 でない整数 によって の形で表せる数を、有理数(ゆうりすう) (rational number) という。

つまり と表される「既約(きやく)分数である」と仮定する。

のように、分母と分子の間に 以外の公約数をもたない分数のことを、既約分数 (irreducible fraction) という。簡単にいえば、もうこれ以上約分できない分数のことである。

ただし、 は整数、 でない整数である。

この両辺を 乗すると ここで、左辺は の倍数なので、右辺 の倍数である。したがって、 の倍数である。そこで、 は整数)とおくと、 ここで、右辺は の倍数なので、左辺 の倍数となり、 の倍数となる。しかし、そうすると、 がともに の倍数ということになり、最初の「既約分数である」という仮定に矛盾する。

」の形をした背理法

「ならば」のいいかえでもみたように、「 」は、「 または 」と同値なので、この否定は

ド・モルガンの法則(命題版)参照

である。したがって、 が真であることを背理法で証明したいときには「 かつ 」を仮定して矛盾を導くことになる。

問題3 の背理法~その1~
  1. が無理数ならば も無理数であることを証明せよ。
  2. が無理数ならば も無理数であることを証明せよ。
解答を見る
  1. という有理数であると仮定すると

    有理数どうしの差は有理数である

より、 は有理数となる。

これは、 が無理数であることに矛盾する。よって、 は無理数である。 2. という有理数であると仮定すると

 有理数どうしの比(分数)は有理数である

より、 は有理数となる。

これは、 が無理数であることに矛盾する。よって、 は無理数である。

実数のうち、有理数でないものを無理数という。実数、無理数について詳しくはいろいろな数を参照のこと。

暗記2 の背理法~その2~

が有理数のとき であることを証明せよ。

解答を見る

より

有理数どうしの比(分数)は有理数である

いま、 と過程すると、 となるが、 は有理数であるから は有理数となる。これは、 が無理数であることに矛盾する。よって、 である。

また、このとき から となる。

この例題から推測できるように、一般に次のことがいえる。

定理1有理数と無理数は独立している §

が有理数、が無理数のとき が成り立つ。

元記事: http://www.ftext.org/text/section/74(取得日 2026-08-07)

最終更新: 2026-08-07

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