数学I 第5章 三角比 — 三角比の拡張

これまでは、直角三角形を用いて鋭角の三角比を考えてきた。より一般的な三角形を分析するための準備として、ここでは三角比の考えを直角・鈍角・へと拡張し、からまでの三角比を統一的に扱おう。

座標と三角比の関係

単位円

座標平面上の原点 を中心とする半径 の円を単位円 (unit circle) という。

xy座標平面上に原点 O を中心とする円が描かれている。x 軸との交点には右側に 1、左側に -1、y 軸との交点には上側に 1、下側に -1 がそれぞれ記されている。 三角比は、この単位円を用いて( 以上に)拡張される。

三角比の拡張について

三角比の定義を、斜辺が である直角三角形 において考えてみよう。

すると、正弦、余弦、正接はそれぞれ と書ける。つまり、斜辺の長さが である直角三角形では

「対辺の長さは の値を表し、底辺の長さは の値を表す」

ことがわかる。

∠Qが直角である直角三角形OPQがあり、∠POQの大きさはθ、斜辺OPの長さは1である。辺OQに「底辺」、辺PQに「対辺」と添えられている。 この を、図のように単位円の(上半分の)中に描いてみよう。そのようにすれば、

  • 座標が
  • 座標が

となる。

座標平面上に原点Oを中心とする半径1の半円がある。第一象限の周上に点P(cos θ, sin θ)があり、斜辺OPの長さが1、x軸との角がθ、Pからx軸へ下ろした垂線の足をQとする直角三角形OPQが描かれている。 このように、「単位円周上の点の座標」として三角比をとらえなおすと、角度が鋭角でなくても三角比を考えることができる。そこで、 の範囲にある角 の三角比を、次のように定義しなおそう。

§

定義1三角比の拡張

を原点とする座標平面上に単位円の上半分をとり、その周上に一点 をとる。

軸の正の部分 に対し、 とするとき とする。

ただし、点 座標が のとき、つまり のときは を定義しない。

座標平面上の原点Oを中心とする半径1の半円上に点P(x, y)があり、線分OPの長さは1、x軸の正の部分とOPのなす角はθである。点Pのx座標にcos θ、y座標にsin θが添えられている。 たとえば、 が鈍角のときは次のようになる。

  1. 例: の三角比

    座標平面上の半径1の半円で、x軸の正の部分となす角が120°である動径OPが描かれている。点Pの座標は(-1/2, √3/2)で、Pからx軸へ下ろした垂線の足がQである。

    図より、 の直角三角形であることに注意しよう。)

  2. 例: の三角比

    座標平面上に原点Oを中心とする半径1の半円があり、x軸上の点(-1, 0)に点Pがある。x軸の正の向きからの回転角180°と、線分OPの長さが1であることが示されている。

    図より、

三角比の値のまとめ

角度が の場合の三角比は、頭の中で次のような図を思い描き、素早く求められるようになろう。

座標平面上に描かれた半径1の半円において、0°から180°までの角度の位置にある円上の点から各軸へ点線が引かれ、各点のx座標とy座標の値が表されている。

問題1有名角の三角比

上の図をもとに下の表を完成させよ。

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なし

三角比を含む方程式と不等式

問題2三角比を含む方程式

以下の式を満たす を求めよ。ただし とする。

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  1. 座標平面上に原点Oを中心とする半径1の半円があり、直線x=-√3/2と半円の交点をP、x軸へ下ろした垂線の足をQとします。OPの長さは1、OQの長さは√3/2で、動径OPが表す角はθです。

    図のように、上半分の単位円周上において、 座標が である点を取る。

    このとき、 は辺の長さが の直角三角形なので つまり、

  2. 座標平面上に描かれた単位円の上半分の弧と、直線 y=(√2)/2 との2つの交点を P, P' とし、線分 OP, OP' および各点から x 軸に下ろした垂線 PQ, P'Q' が示されている。

    図のように、上半分の単位円周上において、 座標が である点を取る。

    そのような点は2つ存在し、 とも 直角二等辺三角形であるので つまり、 、または、

  3. 座標平面上に原点を中心とする半径1の半円と直線 y=-√3x が描かれている。その交点をP、Pからx軸に下ろした垂線の足をQとし、x軸の正の部分と動径OPのなす角をθとしている。

    動径の傾きが に一致するので、図のように、傾き の直線を引く。

    は辺の長さが の直角三角形なので つまり、

  4. 座標平面上に半径1の単位円の上半分があり、点(0, 1)を通る直線 y=1 が引かれている。x軸の正の部分からy軸の正の部分までのなす角が θ で示されている。

    上半分の単位円周上において、 座標が である点を取ればよい。

    このとき、図より、

問題3三角比を含む不等式

以下の式を満たす を求めよ。ただし とする。

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  1. 座標平面上に半径1の上半分の単位円があり、直線 x=-√3/2 より左側の領域が塗られている。動径OPが表す角150°の点Pから、点(-1,0)までの円弧が太線で示されている。

    上半分の単位円周上において であればよい。そのようになるのは、図の太線部分であるので

  2. 座標平面上の単位円の上半分において、直線 y=√2/2 より上の領域が着色されている。円周上の角 45°の点Pから 135°の点P'までの、両端が白丸の円弧が太線で示されている。

    上半分の単位円周上において であればよい。そのようになるのは、図の太線部分であるので

  3. xy平面上の単位円の上半分のうち、点(1, 0)から点(0, 1)の手前までの弧と、直線y=-√3xとの交点Pから点(-1, 0)までの弧が太線で描かれ、角xOPの大きさが120°と示されている。

    上半分の単位円周上において であればよい。ただし、 のときは動径が 軸に重なり、その傾き、つまり が定義されないので除く。そのようになるのは、図の太線部分であるので

拡張された三角比の相互関係

拡張された三角比の相互関係について

拡張された三角比においても、三角比の相互関係で学んだ三角比の相互関係 が成り立つ。以下でこれらのことを確認してみよう。

図の単位円において であるから、 と表すことができる。つまり が成り立つ。また、三平方の定理より、 であるから が成り立つ。ここで、 かつ 、つまり のとき、 の両辺を で割って、 を用いると また、 、つまり のとき、 の両辺を で割って、 を用いると

座標平面上に原点Oを中心とする半径1の半円があり、動径OPとx軸の正の向きとのなす角をθとする。点P(x, y)のx座標がcos θ、y座標がsin θ、OPの長さが1であることが描かれている。
§

定理2拡張された三角比の相互関係

のとき、次の式が成り立つ。

  1. の関係
  2. の関係
  3. の関係
  4. の関係

三角比どうしの関係と同じ問を、拡張された三角比の相互関係を使って解いてみよう。ただし、今回は から までの範囲で考える。

問題4拡張された三角比の相互関係の利用

拡張された三角比の相互関係を使って次の問に答えよ。ただし である。

  1. のとき、 の値を求めよ。
  2. のとき、 の値を求めよ。
  3. のとき、 の値を求めよ。
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よって、 が鋭角の場合と鈍角の場合の両方があり得るので、符号は1つに決まらない。

また、 より、

2.

より

なので、

また、 より 3.

より よって、 である。

また、 より

であるので、 は不適。

よって

問題5三角比の計算

次の式を簡単にせよ。

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2.

の三角比

図のように、単位円周上に角 の動径 と角 の動径 をとる。

の座標を とすると、 は合同なので、点 の座標は となるから と表すことができる。

単位半円上に角θを表す動径OPと、角θ'を表す動径OP'がある。点P(x, y)からx軸へ、点P'(-y, x)からy軸へ垂線を下ろした2つの直角三角形OPQとOP'Q'が描かれている。 ここで、 であるから、次のようにまとめることができる。

§

定理3 の三角比

の三角比において が成り立つ。

座標平面上の単位半円において、角θを表す動径OP上の点P(x, y)に対し、角90°+θを表す動径OP'上の点P'の座標が(-y, x)になることが示されている。

これより、 の三角比は、 の三角比になおして、その値を求めることができる。

問題6 の三角比の利用

次の式を満たすように の中に より小さい角を入れよ。

解答を見る

2.

3.

の三角比

図のように、単位円周上に角 の動径 と角 の動径 をとる。

の座標を とすると、2点 軸に関して対称なので、点 の座標は となるから と表すことができる。

座標平面上の単位半円において、y軸に関して線対称な2点P(x, y)とP'(-x, y)があり、動径OPの表す角がθ、動径OP'の表す角がθ'で、θ'=180°-θである。 ここで、 であるから、次のようにまとめることができる。

§

定理4 の三角比

の三角比において が成り立つ。

これからも、 の三角比は、 の三角比になおして、その値を求めることができる。

問題7 の三角比の利用

次の式を満たすように の中に より小さい角を入れよ。

解答を見る

2.

3.

最終更新: 2026-08-12

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