数学I 第5章 三角比 — 三角比の拡張
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これまでは、直角三角形を用いて鋭角の三角比を考えてきた。より一般的な三角形を分析するための準備として、ここでは三角比の考えを直角・鈍角・0°へと拡張し、0°から180°までの三角比を統一的に扱おう。
座標と三角比の関係
単位円
座標平面上の原点 O を中心とする半径 1 の円を単位円 (unit circle) という。
三角比は、この単位円を用いて(90° 以上に)拡張される。
三角比の拡張について
三角比の定義を、斜辺が 1 である直角三角形 OPQ において考えてみよう。
すると、正弦、余弦、正接はそれぞれ
sinθ=PQ/OP=PQ cosθ=OQ/PO=OQ tanθ=QP/OQ=sinθ/cosθ
と書ける。つまり、斜辺の長さが 1 である直角三角形では
「対辺の長さは sinθ の値を表し、底辺の長さは cosθ の値を表す」
ことがわかる。
この △OPQ を、図のように単位円の(上半分の)中に描いてみよう。そのようにすれば、
- P の x 座標が cosθ
- P の y 座標が sinθ
となる。
このように、「単位円周上の点の座標」として三角比をとらえなおすと、角度が鋭角でなくても三角比を考えることができる。そこで、 0°≦θ≦180° の範囲にある角 θ の三角比を、次のように定義しなおそう。
§
定義1三角比の拡張
点 O を原点とする座標平面上に単位円の上半分をとり、その周上に一点 P をとる。
x 軸の正の部分 OX に対し、∠POX を θ(0°≦θ≦180°) とするとき
cosθ=(点Pのx座標) sinθ=(点Pのy座標) tanθ=(点Pのy座標)/(点Pのx座標)=(直線OPの傾き)
とする。
ただし、点 P の x 座標が 0 のとき、つまり θ=90° のときは tanθ を定義しない。
たとえば、θ が鈍角のときは次のようになる。
例:120° の三角比
図より、
cos120°=-1/2 sin120°=√3/2 tan120°=-√3
(△OPQ が QO:OP:PQ=1:2:√3 の直角三角形であることに注意しよう。)
例:180° の三角比
図より、
cos180°=-1 sin180°=0 tan180°=0
三角比の値のまとめ
角度が 0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°、150°、180° の場合の三角比は、頭の中で次のような図を思い描き、素早く求められるようになろう。
問題1有名角の三角比
上の図をもとに下の表を完成させよ。
| θ |
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0° |
30° |
45° |
60° |
90° |
120° |
135° |
150° |
180° |
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| sinθ |
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| cosθ |
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| tanθ |
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解答を見る
| θ |
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0° |
30° |
45° |
60° |
90° |
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| sinθ |
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0 |
1/2 |
√2/2 |
√3/2 |
1 |
| cosθ |
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1 |
√3/2 |
√2/2 |
1/2 |
0 |
| tanθ |
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0 |
1/√3 |
1 |
√3 |
なし |
| θ |
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120° |
135° |
150° |
180° |
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| sinθ |
|
√3/2 |
√2/2 |
1/2 |
0 |
| cosθ |
|
-1/2 |
-√2/2 |
-√3/2 |
-1 |
| tanθ |
|
-√3 |
-1 |
-1/√3 |
0 |
三角比を含む方程式と不等式
問題2三角比を含む方程式
以下の式を満たす θ を求めよ。ただし 0°≦θ≦180° とする。
- cosθ =-√3/2
- sinθ=√2/2
- tanθ=-√3
- sinθ=1
解答を見る
図のように、上半分の単位円周上において、x 座標が -√3/2 である点を取る。
このとき、△OPQ は辺の長さが 1:2:√3 の直角三角形なので
∠POQ=30°
つまり、 θ=180°-30°=150°。
図のように、上半分の単位円周上において、y 座標が √2/2 である点を取る。
そのような点は2つ存在し、△OPQ、△OP'Q' とも 直角二等辺三角形であるので
∠POQ=45° , ∠P'OQ'=45°
つまり、 θ=45°、または、 θ=180°-45°=135°。
動径の傾きが tan に一致するので、図のように、傾き -√3 の直線を引く。
△OPQ は辺の長さが 1:2:√3 の直角三角形なので
∠POQ=60°
つまり、 θ=180°-60°=120°。
上半分の単位円周上において、y 座標が 1 である点を取ればよい。
このとき、図より、 θ=90°。
問題3三角比を含む不等式
以下の式を満たす θ を求めよ。ただし 0°≦θ≦180° とする。
- cosθ≦-√3/2
- sinθ>√2/2
- tanθ>-√3
解答を見る
上半分の単位円周上において
(x座標の値)≦-√3/2
であればよい。そのようになるのは、図の太線部分であるので 150°≦θ≦180°。
上半分の単位円周上において
(y座標の値)>√2/2
であればよい。そのようになるのは、図の太線部分であるので 45°<θ<135°。
上半分の単位円周上において
(動径の傾き)>-√3
であればよい。ただし、 θ=90° のときは動径が y 軸に重なり、その傾き、つまり tanθ が定義されないので除く。そのようになるのは、図の太線部分であるので 0°≦θ<90°,120°<θ≦180°。
拡張された三角比の相互関係
拡張された三角比の相互関係について
拡張された三角比においても、三角比の相互関係で学んだ三角比の相互関係
tanθ=sinθ/cosθ, sin²θ+cos²θ=1 1+1/tan²θ=1/sin²θ, tan²θ+1=1/cos²θ
が成り立つ。以下でこれらのことを確認してみよう。
図の単位円において
cosθ=x , sinθ=y
であるから、tanθ は
tanθ=y/x=sinθ/cosθ
と表すことができる。つまり
tanθ=sinθ/cosθ ①
が成り立つ。また、三平方の定理より、 x²+y²=1 であるから
sin²θ+cos²θ=1 ②
が成り立つ。ここで、 sinθ≠0 かつ cosθ≠0、つまり θ≠0°,90°,180° のとき、② の両辺を sin²θ で割って、 tanθ=sinθ/cosθ を用いると
1+cos²θ/sin²θ=1/sin²θ ∴1+1/tan²θ=1/sin²θ ③
また、 cosθ≠0、つまり θ≠90° のとき、② の両辺を cos²θ で割って、 tanθ=sinθ/cosθ を用いると
sin²θ/cos²θ+1=1/cos²θ ∴tan²θ+1=1/cos²θ ④
§
定理2拡張された三角比の相互関係
角 θ が 0°≦θ≦180° のとき、次の式が成り立つ。
- sinθ、cosθ、tanθ の関係
tanθ=sinθ/cosθ (θ≠90°)
- sinθ と cosθ の関係
sin²θ+cos²θ=1
- tanθ と sinθ の関係
1+1tan²θ=1sin²θ (θ≠0°,90°,180°)
- cosθ と tanθ の関係
tan²θ+1=1cos²θ (θ≠90°)
三角比どうしの関係と同じ問を、拡張された三角比の相互関係を使って解いてみよう。ただし、今回は 0° から 180° までの範囲で考える。
問題4拡張された三角比の相互関係の利用
拡張された三角比の相互関係を使って次の問に答えよ。ただし 0°≦α≦ 180° である。
- sinα=3/5 のとき、cosα、tanα の値を求めよ。
- cosα=1/3 のとき、sinα、tanα の値を求めよ。
- tanα=7 のとき、cosα、sinα の値を求めよ。
解答を見る
sin²α+cos²α=1
cos²α=1-sin²α=1-(3/5)²=16/25
よって、 cosα=±√(16/25)=±4/5。α が鋭角の場合と鈍角の場合の両方があり得るので、符号は1つに決まらない。
また、 tanα=sinα/cosα より、
のときのときcosα=4/5のときtanα=(3/5)/(4/5)=3/4 cosα=-4/5のとき tanα=(3/5)/(-4/5)=-3/4
2.
sin²α+cos²α=1 より
sin²α=1-cos²α=1-(1/3)²=8/9
sinα≧0 なので、 sinα=√(8/9)=2√2/3。
また、 tanα=sinα/cosα より
tanα=(2√2/3)/(1/3)=2√2
3.
tan²α+1=1/cos²α より
cos²α=1/(1+tan²α)=1/(1+7²)=1/50
よって、 cosα=±√(1/50)=±√2/10 である。
また、 tanα=sinα/cosα より
7=sinα/(±√2/10) ∴sinα=7×(±√2/10)=±7√2/10
0α であるので、 sinα=-7√2/10 は不適。
よって
cosα=√2/10 , sinα=7√2/10
問題5三角比の計算
次の式を簡単にせよ。
- (sinθ+cosθ)²+(sinθ-cosθ)²
- cosθ/(1+sinθ)-cosθ/(1-sinθ)
解答を見る
(sin θ+cosθ)²+(sinθ-cosθ)² =sin²θ+2sinθ+cos²θ +sin²θ -2sinθ+cos²θ =2(sin²θ+cos²θ) =2
2.
cosθ/(1+sinθ)-cosθ/(1-sinθ) =(cosθ(1-sinθ)-cosθ(1+sinθ))/(1+sinθ)(1-sinθ) =(-2cosθ)/(1-sin²θ) =-2cosθ/cos²θ =-2sinθ/cosθ =-2tanθ
90°+θ の三角比
図のように、単位円周上に角θ の動径 OP と角 とする90°+θ(=θ'とする) の動径 OP' をとる。
点 P の座標を (x,y) とすると、△OPQ と △OP'Q' は合同なので、点 P' の座標は (-y,x) となるから
sinθ'=x=cosθ
cosθ'=-y=-sinθ
tanθ'=x/(-y)=-x/y=-1/tanθ
と表すことができる。
ここで、 θ'=90°+θ であるから、次のようにまとめることができる。
§
定理3 90°+θ の三角比
角 θ が 0°≦θ≦90° の三角比において
sin(90°+θ)=cosθ
cos(90°+θ)=-sinθ
tan(90°+θ)=-1/tanθ (0°<θ<90°)
が成り立つ。
これより、 90°<θ≦180° の三角比は、 0°<θ≦90° の三角比になおして、その値を求めることができる。
問題6 90°+θ の三角比の利用
次の式を満たすように [A] の中に 90° より小さい角を入れよ。
- sin100°=cos[A]
- cos179°=-sin[A]
- tan125°=-1/tan[A]
解答を見る
sin100°=sin(90°+10°)=cos10°
2.
cos179°=cos(90°+89°)=-sin89°
3.
tan125°=tan(90°+35°)=-1/tan35°
180°-θ の三角比
図のように、単位円周上に角 θ の動径 OP と角 とする180°-θ(=θ'とする) の動径 OP' をとる。
点 P の座標を (x,y) とすると、2点 P、P' は y 軸に関して対称なので、点 P' の座標は (-x,y) となるから
sinθ'=y=sinθ
cosθ'=-x=-cosθ
tanθ'=y/(-x)=-y/x=-tanθ
と表すことができる。
ここで、 θ'=180°-θ であるから、次のようにまとめることができる。
§
定理4 180°-θ の三角比
角θ が 0°≦θ≦180° の三角比において
sin(180°-θ)=sinθ
cos(180°-θ)=-cosθ
tan(180°-θ)=-tanθ (θ≠90°)
が成り立つ。
これからも、 90°<θ≦180° の三角比は、 0°≦θ<90° の三角比になおして、その値を求めることができる。
問題7 180°-θ の三角比の利用
次の式を満たすように [A] の中に 90° より小さい角を入れよ。
- sin100°=sin[A]
- cos179°=-cos[A]
- tan125°=-tan[A]
解答を見る
sin100°=sin(180°-80°)=sin80°
2.
cos179°=cos(180°-1°)=-cos1°
3.
tan125°=tan(180°-55°)=-tan55°
最終更新: 2026-08-12
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