はじめに、 a1, a2, …, an のどれかが 0 のときは、(右辺)の相乗平均が 0 となり、 (左辺)の相加平均は 0 以上であるから、関係式は明らかに成り立つ。 そこで以下では、 a1, a2, …, an はすべて正であるとしてよい。
証明は、次の2つの手を組み合わせて行う。
手順1 n 個の場合が成り立つならば、 2n 個の場合も成り立つ(個数を2倍に増やす手)
手順2 n 個の場合が成り立つならば、 n-1 個の場合も成り立つ(個数を1つ減らす手)
n = 2 の場合は不等式の証明 ですでに示してあるので、手順1 を k 回繰り返せば n=2^k+1 の場合が証明できる。 その後、手順2 を繰り返し用いれば、どの自然数 n にも降りてくることができ、 すべての自然数 n で相加相乗平均の関係式 が証明できる。
注 このように、まず 2, 4, 8, … と飛び飛びの個数で示しておき、そこから1つずつ降りて間を埋める証明の方法を、前進後退帰納法 という。コーシーによる相加相乗平均の関係の証明として知られている。
手順1(個数を2倍に増やす)
n 個の正の数で関係式が成り立つことを前提として、 2n 個の正の数 a1, a2, …, a2n でも関係式が成り立つことを示す。
前半の n 個と後半の n 個の相乗平均を、それぞれ
G1=√[n]a1a2… an G2=√[n]an+1an+2… a2n
とおくと、 G1>0 、 G2>0 であり、前提より
(a1+a2+…+an)/n≧ G1 an+1+an+2+…+a2nn≧ G2
が成り立つ。また、 G1 と G2 をかけると
G1G2=√[n]a1a2… a2n
である。よって、 2n 個の数の相加平均は
a1+a2+…+a2n2n =1/2((a1+…+an)/n+an+1+…+a2nn) ≧(G1+G2)/2 ≧√G1G2 =√√[n]a1a2… a2n =√[2n]a1a2… a2n
となり、 2n 個の場合も成り立つことが示された。
注 (G1+G2)/2≧√G1G2 は、 n = 2 の場合の相加平均と相乗平均の関係 を、 G1 と G2 の2つの数に使ったものである。 また、最後の変形では累乗根の基本性質 の5. √[m]√[n]a=√[mn]a を使った。
n = 2 の場合から出発してこの手順を k 回繰り返せば、 n=4, 8, …, 2^k+1 の場合が次々に証明できる。
手順2(個数を1つ減らす)
n≧2 とする。 n 個の正の数で関係式が成り立つこと、すなわち
√[n]a1a2…an≦(a1+a2+…+an)/n
を前提として、 n-1 個の正の数 a1, a2, …, an-1 でも関係式が成り立つことを示す。
n-1 個の数に、つけ加えても相加平均が変わらないような数 x 、つまり
a1+a2+…+an-1+xn =a1+a2+…+an-1n-1
となる x=a1+a2+…+an-1n-1 (>0) を用いる。
つまり、 a1, a2, …, an-1, x という n 個の数の相加平均は、 x 自身に等しい。
そこで、この n 個の数に前提を用いると
√[n]a1a2… an-1x ≦a1+a2+…+an-1+xn=x
となる。両辺とも正であるから、両辺を n 乗しても不等号の向きは変わらず
a1a2… an-1・a1+a2+…+an-1n-1 ≦(a1+a2+…+an-1n-1)^n
両辺を x=a1+a2+…+an-1n-1>0 で割ると
a1a2… an-1 ≦(a1+a2+…+an-1n-1)^n-1
両辺とも正なので、 n-1 乗根をとって
∴√[n-1]a1a2… an-1≦a1+a2+…+an-1n-1
となり、 n-1 個の場合も成り立つことが示された。 この手順を使えば、個数を1つずつ、いくらでも降りてくることができる。
すべての自然数で成り立つこと
以上の2つの手順から、どの自然数 n でも関係式が成り立つことがわかる。
実際、 n≧2 である自然数 n に対して、 n≦2^k+1 となる自然数 k を1つとると、 n = 2 の場合から手順1 を k 回繰り返して 2^k+1 個の場合が示され、 そこから手順2 を 2^k+1-n 回繰り返せば、 n 個の場合に降りてくることができる。 n = 1 のときは、関係式は a1≧ a1 となって当然成り立つ。
注 等号についても同様に追いかけることができる。 手順1 で等号が成り立つのは、前半の n 個・後半の n 個がそれぞれすべて等しく、 さらに G1=G2 となるとき、すなわち 2n 個すべてが等しいときである。 手順2 で等号が成り立つのは、 a1, a2, …, an-1, x がすべて等しいとき、 すなわち a1=a2=…=an-1 のときである。 よって、一般の場合も等号が成立するのは a1=a2=…=an のときとなる。