数学II 第1章 式と証明 — 複素数

複素数とその演算

複素数の導入

1次方程式 は整数の範囲に解をもたないが,有理数の範囲では という解をもつ. また,2次方程式 は有理数の範囲に解をもたないが,実数の範囲では という解をもつ.

このように,数の考え方を広げることで,方程式が新しく解をもつ場合がある.

実数の2乗は負にはならないので,2次方程式 は実数の範囲に解をもたない. では,どのように数の考え方を広げれば,この方程式も解をもつだろうか. 以下では,そのことについて考えていく.

図

複素数の定義

2乗すると となる数を新しく考え,それを記号 で表し,虚数単位(imaginary unit)という.つまり

である.実数は2乗しても負にはならないので, は実数ではない.

さらに, を実数として の形に表される数を考え, それを複素数(complex number)という. また, のことであると決めるので,やはり複素数である ( は\FTEXTだけで使う表記であり,一般的な記号ではない.説明のため一時的にもちいるだけで,後に使わなくなる).

たとえば

などは,どれも複素数である.

複素数 において, 実部(real part)虚部(imaginary part)という.

問題1複素数

次の複素数の実部,虚部をいえ.

解答を見る
  1. 実部は,虚部は
  2. 実部は,虚部は
  3. 実部は,虚部は
  4. 実部は,虚部は

複素数の相等

2つの複素数の実部と虚部がそれぞれ等しいとき,その2つの複素数は等しいという.つまり

定義1複素数の相等 §

を実数とする.2つの複素数 が等しいことを

かつ

と定義する.

問題2複素数の相等

次の等式を満たす実数を求めよ.

解答を見る
  1. は実数なので,実部と虚部を比較すると

これを解くと となる. 2. は実数なので,実部と虚部を比較すると


これを解くと となる.

を実数とするとき,複素数 を一文字のギリシア文字で表すことがある. つまり, などと書く. 複素数 に対して, を,共役(conjugate)な複素数といい, で表す.

定義2共役な複素数 §

を実数とし,複素数 とする. このとき,

と定義する.は共役であるという.

複素数の加法と減法

次に複素数どうしの加法と減法について定義する.

定義3複素数の加法・減法 §

を実数とする. 2つの複素数 の和を

差を

と定義する.

複素数の加法と減法

2つの複素数の加法では,実部を足し合わせたものを新しい実部に,虚部を足し合わせたものを新しい虚部にもつ 複素数を作ることである,と覚えればよい.減法も同様に覚えられる.

問題3複素数の加法と減法

次の計算をせよ.

解答を見る

複素数の乗法

次に複素数どうしの乗法について定義する.

定義4複素数の乗法 §

を実数とする. 2つの複素数 の積を

と定義する.

この計算結果を暗記しようとすると難しい. そこで, の計算の とみなして, 普通の文字式の計算と同じように展開していくと覚えやすい.

その際,がでてきたら に変えていけばよい.

←普通の文字式のように展開した に変えた ←実部と虚部にまとめた

この計算のやり方は,現時点ではただの記憶法にすぎないが,後に正当化される.

問題4複素数の乗法~その1~

次の計算をせよ.

解答を見る
  1. 展開して計算していくと

  2. 展開して計算していくと

  3. 展開して計算していくと

  4. 展開して計算していくと

問題5複素数の乗法~その2~

複素数において,の虚部はになることを証明せよ.

解答を見る

とおくと, であるから

複素数の除法

次に複素数どうしの除法について定義する.

定義5複素数の除法 §

を実数とする. 2つの複素数 の商を

と定義する.だたし, または とする.

乗法の場合と同じように,この計算結果も暗記するのは難しい. そこで,の計算のを,やはり とみなして,文字式と同様の計算をすると覚えやすい.

次の計算にあるように,計算の初めに分母に共役な複素数 を,分母と分子にかけ,分母を実数に変えるのがポイントである.

←分母と分子に をかけた

←普通の文字式のように展開した に変えた をくくってまとめた を含む項と含まない項に分けた

この計算のやり方も,現時点ではやはり記憶法にすぎないが,後に正当化される.

問題6複素数の除法

次の計算をせよ.

解答を見る
  1. 分母に共役な複素数を分母子にかけて

  2. 分母に共役な複素数を分母子にかけて

  3. 分母に共役な複素数を分母子にかけて

  4. 分母に共役な複素数を分母子にかけて

を同一視する

⊕ と+ を同一視する

複素数 は,虚部が,すなわち のとき, となるが,これを単にと書き,実数のことだと考える. また,実部が,すなわち のとき, となるが,これを単にと書く. 特に, かつ のとき,純虚数(pure imaginary)という.

このように決めると

単に のとき, 虚数(imaginary)という.

を2つの複素数の和で書き換えた に書き換えた

と表せるので,結局 と表してかまわない,つまり は混同させてかまわないことになる.

これから以下では,はすべて + と表記するようにする. も同様である.

暗記1複素数の実数条件と純虚数条件

を複素数とするとき,次のことを証明せよ.

  1. が実数である」 が純虚数である」
解答を見る
  1. とおくと, であるので

以上から, つまりは実数である. 2. とおくと, であるので


以上から, つまりは純虚数である.

定理6複素数の実数条件と純虚数条件 §

複素数について,次のことがいえる.

が実数である」

が純虚数である」

複素数の性質

暗記2複素数の性質

複素数において

または

を証明せよ.

解答を見る

は明らかなので,以下ではを証明する.

とおく.

の両辺にをかけて

よって

(上の式を①,下の式を②とする.)

①となるのは, つまり ,または のときである.

のときは,②も成立.

のときは, であれば②が成立.

以上より,( かつ )または( かつ ),つまり または が示せた.

暗記3共役な複素数の性質

を複素数とするとき,次の等式を証明せよ.

解答を見る

負の数の平方根

数の範囲を,いままでみてきたような複素数にまで拡張すれば,負の数の平方根を求めることができる. 例として, の平方根を求めてみよう.

の平方根は,方程式 の解である. を利用して

つまり, の平方根はである. 一般には次のようにまとめられる.

定義7負の数の平方根 §

のとき,の平方根は,である.

特に, の平方根はである.

問題7負の数の平方根

次の数の平方根を求めよ.

解答を見る

負の数 の平方根のうち,のことをと表す.

定義8負の数の平方根の表し方 §

のとき, とする.

問題8負の数の平方根の計算

次の式を計算せよ.

解答を見る

負の数の平方根

この例題のの計算で

とすると間違いになる. このタイプの間違いを防ぐためには,を見たら,まず始めにの形に直して計算するとよい.

が実数のとき は一般には成り立たない.このことを,次の例題で確認しておこう.

問題9負の数の根号の計算

次の問いに答えよ.ただし, かつ のとき, および が成り立つことは使ってよい.

  1. かつ のとき, であることを証明せよ.
  2. かつ のとき, であることを証明せよ.
解答を見る
  1. (1) かつ のとき

    (左辺)

    (右辺)

  2. (2) かつ のとき

    (左辺)

    (右辺)

2次方程式の解の公式の拡張

2次方程式の解の公式の拡張について

実数を係数にもつ2次方程式

を解くことを考える. \FTEXT 数学Iで学んだときには,解を実数の範囲でしか考えていなかったが,ここではより広く複素数の範囲で 解を考えることにする.

を変形していくと

複素数の範囲では負の数の平方根も求められるので, の符号が何であっても

と表せ, となる.

定理92次方程式の解の公式の拡張 §

実数を係数にもつ2次方程式 の解は ( の値の符号が何であっても)

と表せる.

問題102次方程式の複素数の範囲での解

次の2次方程式を解け.

解答を見る
  1. 2次方程式の解の公式より

  2. 2次方程式の解の公式より

  3. 両辺にを掛けると

    であるから,2次方程式の解の公式より

  4. 両辺にを掛けると

    であるから,2次方程式の解の公式より

2次方程式の判別式

2次方程式 について,\FTEXT 数学Iでは

  1. のとき,2つの異なる解をもつ.
  2. のとき,重解をもつ.
  3. のとき,解は存在しない.

と学んだが,解を複素数の範囲まで拡張して考えるならば,次のようにまとめられる.

定理102次方程式の判別式 §

2次方程式 の判別式 について

  1. のとき,異なる2つの実数解をもつ.
  2. のとき,重解(実数解) をもつ.
  3. のとき,異なる2つの虚数解をもつ.

となる.

問題11解の判別

次の2次方程式の解を判別せよ.

解答を見る
  1. 判別式をとすると

    1. ,すなわち のとき,異なる2つの実数解をもつ.
    2. ,すなわち のとき,重解をもつ.
    3. ,すなわち のとき,異なる2つの虚数解をもつ.
  2. 判別式をとすると

    のグラフは右図のようであるから

    1. ,すなわち のとき,異なる2つの実数解をもつ.
    2. ,すなわち のとき,重解をもつ.
    3. ,すなわち のとき,異なる2つの虚数解をもつ.

元記事: http://www.ftext.org/text/section/107(取得日 2026-08-07)

最終更新: 2026-08-08

この節についてAIに質問する

この節に書かれている内容だけを根拠に答えます。個人情報は書かないでください。