数学II 第7章 積分法 — 微積分学の基本定理
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前の章で学んだ微分法と、この章で学んでいる積分法には、実は密接な関係がある。この関係を利用すると、定積分の計算がおどろくほど楽に実行できるようになる。ここでは、その関係について学んでいこう。
微積分学の基本定理について
微積分学の基本定理とは
簡単のため以下では
- f(t)≧0
- a≦x
- h>0
として考えていくことにする。
STEP1:∫f(t)dt を x の関数 S(x) と考える
まず、定積分 ∫f(t)dt について考える。
この値は、次の図のように a≦t≦x の区間で y=f(t) と t 軸が囲む面積を表すので、a を定数、x を変数と考えると、この値は x の関数となっている( x が決まれば面積が決まる)。
そこで
∫f(t)dt=S(x)
と表すことにする。
STEP2: S(x+h)-S(x) の図形的意味を考える
このような S(x) を導入すると
S(x+h)=∫f(t)dt =(a から x+h までの部分の面積) S(x)=∫f(t)dt =(a から x までの部分の面積)
であるから、その差は
S(x+h)-S(x) =(太線で囲まれた部分の面積)
となる。すなわち
S(x+h)-S(x)=∫f(t)dt
であり、これは x≦t≦x+h の区間で y=f(t) と t 軸が囲む面積を表している。
STEP3:面積で評価する
ここで、下図のように x≦t≦x+h における f(t) の最大値を M、最小値を m とすると(x を定数とみれば、m や M は h の関数である)、面積を比較することにより
m×h≦S(x+h)-S(x) ≦M×h ①
が成り立つ(下の図参照)。
STEP4: h→0 の極限を考える
① の辺々を h で割ると
m≦(S(x+h)-S(x))/h≦M ②
ここで h→0 という極限を考えると、区間 x≦t≦x+h の幅はどんどん狭くなっていき
となるので、はさまれた (S(x+h)-S(x))/h も (S(x+h)-S(x))/h→f(x) となる。つまり
limh→0(S(x+h)-S(x))/h=f(x) ③
となる。
いま、③ の左辺は関数 S(x) の導関数 (d/dx)S(x) の定義式そのものであるので、③ は (d/dx)S(x)=f(x)、つまり
d/dx∫f(t)dt=f(x)
を表している。
§
定理1微積分学の基本定理
関数 f(x) において
d/dx∫f(t)dt=f(x)
が成り立つ。ただし、a は定数とする。
定積分の基本公式
原始関数とは何か
微分すると f(x) になる関数を、f(x) の原始関数 (primitive function) という。つまり
F'(x)=f(x)
のとき、F(x) を f(x) の原始関数という。
原始関数は一通りには定まらない。たとえば、x³、 x³+2、 x³-√5 などは微分すると、どれも 3x² となるので、これらはすべて 3x² の原始関数である。任意の定数 A を x で微分すると 0 になるので、一般には x³+A で表されるものすべてが 3x² の原始関数となる。
これから、次のことがいえる。
§
定理2原始関数どうしの差は定数
f(x) の原始関数 F1(x)、F2(x) があったとき
F1(x)=F2(x)+C
となるある定数 C が存在する。
証明
F1(x)、F2(x) はどちらも f(x) の原始関数であるから、その差を微分すると
{F1(x)-F2(x)}'=f(x)-f(x)=0
となる。導関数がつねに 0 である関数は、グラフ上のどの点でも接線の傾きが 0、つまりグラフが水平な直線となるので定数である。よって、 F1(x)-F2(x)=C となる定数 C が存在し、 F1(x)=F2(x)+C となる。
また、原始関数について次のことがいえる。
∎
§
定理3原始関数の性質
関数 f(x)、g(x) の原始関数をそれぞれ F(x)、G(x) とする。つまり F'(x)=f(x)、 G'(x)=g(x) とすると
- F(x)+G(x) は関数 f(x)+g(x) の原始関数である。
- kF(x) は関数 kf(x) の原始関数である。
が成り立つ。ただし、k は定数とする。
証明
- F(x)+G(x) を微分すると
{F(x)+G(x)}'=F'(x)+G'(x) =f(x)+g(x)
となり、 F(x)+G(x) は確かに f(x)+g(x) の原始関数である。
- kF(x) を微分すると
{kF(x)}'=kF'(x) =kf(x)
となり、kF(x) は確かに kf(x) の原始関数である。
特に、多項式の関数の原始関数については次のようになる。
∎
§
定理4多項式の関数の原始関数
任意の定数を A として
- x^n の原始関数は (1/(n+1))x^n+1+A
- (ax+b)^n の原始関数は 1/a(n+1)(ax+b)^n+1+A
である。ただし、n は 0 以上の整数、a、b は定数で a≠0 とする。
証明
- (1/(n+1))x^n+1+A を x で微分すると
((1/(n+1))x^n+1+A)' =1/(n+1)・(n+1)x^n =x^n
となるので、確かに x^n の原始関数である。
- 1/a(n+1)(ax+b)^n+1+A を x で微分すると(←『微分の計算法則iv)』参照)
(1/a(n+1)(ax+b)^n+1+A)' =1/a(n+1)・a(n+1)(ax+b)^n =(ax+b)^n
となるので、確かに (ax+b)^n の原始関数である。
∎
問題1原始関数を求める
次の関数 f(x) の原始関数 F(x) を求めよ。ただし、任意の定数を表すときには C とせよ。
- f(x)=x³
- f(x)=3x⁴
- f(x)=3x²+5x+2
- f(x)=2x⁵-3x²+6x-2
- f(x)=(x-1)(x+3)
- f(x)=x²(1-x)
- f(x)=(x-3)⁴
- f(x)=(3x-2)⁴
解答を見る
- F(x)=(1/4)x⁴+C
- F(x)=3・(1/5)x⁵+C =(3/5)x⁵+C
- F(x)=3・(1/3)x³+5・(1/2)x²+2・ x+C =x³+(5/2)x²+2x+C
- F(x)=2・(1/6)x⁶-3・(1/3)x³ +6・(1/2)x²-2・x+C =(1/3)x⁶-x³+3x²-2x+C
- f(x)=(x-1)(x+3) を展開すると
f(x)=x²+2x-3
なので
F(x) =(1/3)x³+2・(1/2)x²-3・x+C =(1/3)x³+x²-3x+C
- f(x)=x²(1-x) を展開すると
f(x)=x²-x³
なので
F(x)=(1/3)x³-(1/4)x⁴+C
- F(x)=1/5(x-3)⁵×1/1+C =1/5(x-3)⁵+C
- F(x)=1/5(3x-2)⁵×1/3+C =1/15(3x-2)⁵+C
定積分の基本公式について
さて、∫f(t)dt を x の関数と考えて
∫f(t)dt=F1(x)
とおくと、『定積分の性質iii)』より ∫f(t)dt=∫f(t)dt+∫f(t)dt なので
∫f(t)dt=∫f(t)dt-∫f(t)dt =F1(c)-F1(b) ①
が成り立つ。
また、『微積分学の基本定理』より
(d/dx)F1(x)=d/dx∫f(t)dt=f(x)
が成り立つので、F1(x) は f(x) の原始関数である。
ここで、『原始関数どうしの差は定数』であるから、f(x) の原始関数のうち、ある1つを F(x) とすると
F1(x)=F(x)+C
となる定数 C が存在するので、① の F1(c)-F1(b) について
F1(c)-F1(b) =(F(c)+C)-(F(b)+C) =F(c)-F(b)
が成り立つ。つまり
§
定理5定積分の基本公式
f(x) の原始関数を F(x) とすると
∫f(t)dt=[F(x)]b^c
が成り立つ。ただし、[F(x)]b^c とは F(c)-F(b) のことである。
この公式は次のことを教えてくれる。つまり、定積分 ∫f(t)dt を見たら、「長方形に分割し、面積の総和を求め、極限をとる」といった一連の手続きを踏むのではなく、「微分したら f(x) になる原始関数 F(x) を探し、 F(c)-F(b) を計算すればよい」ということである。
いいかえるならば、定積分 ∫f(t)dt を計算するには、f(t) の原始関数を探せばよい、すなわち微分と逆の操作(積分)をすればよいということである。このことをイメージで表すと、下の図のようになる。
では、実際どれほど楽に定積分の計算ができるようになるのか、『定積分』の節の例題『定義を利用した定積分の計算』を再び取り上げ確認してみよう。
問題2原始関数を利用した定積分の計算~その1~(再掲)
次の値を求めよ。
- ∫xdx
- ∫x²dx
- ∫x²dx
- ∫x³dx
解答を見る
- 『定積分の基本公式』∫xdx=[(1/2)x²]0¹ (注) 『定積分の基本公式』 =1/2・1²-1/2・0² =1/2
- 『定積分の基本公式』∫x²dx=[(1/3)x³]0¹ (注) 『定積分の基本公式』 =1/3・1³-1/3・0³ =1/3
- 『定積分の基本公式』∫x²dx=[(1/3)x³]1² (注) 『定積分の基本公式』 =1/3・2³-1/3・1³ =(8-1)/3 =7/3
- 『定積分の基本公式』∫x³dx=[(1/4)x⁴]0¹ (注) 『定積分の基本公式』 =1/4・1⁴-1/4・0⁴ =1/4
問題3原始関数を利用した定積分の計算~その2~
次の値を求めよ。
- ∫(x³-2x+1)dx
- ∫(4x³+3x²-5x-3)dx
- ∫x²(x-3)dx
- ∫(x+1)(x-3)dx
- ∫(x²+1)dx-∫(x²+1)dx
- ∫(x²-2x+1)dx+∫(x²-2x+1)dx
- ∫(x+1)³dx
- ∫1/2(2x-1)⁴dx
解答を見る
- 『定積分の基本公式』∫(x³-2x+1)dx =[(1/4)x⁴-x²+x]-1² (注) 『定積分の基本公式』 =(4-4+2)-(1/4-1-1) =15/4
- 『定積分の基本公式』∫(4x³+3x²-5x-3)dx =[x⁴+x³-(5/2)x²-3x]0¹ (注) 『定積分の基本公式』 =(1+1-5/2-3)-0 =-7/2
- 『定積分の基本公式』∫x²(x-3)dx =∫(x³-3x²)dx =[(1/4)x⁴-x³]1² (注) 『定積分の基本公式』 =(4-8)-(1/4-1) =-13/4
- 『定積分の基本公式』∫(x+1)(x-3)dx =∫(x²-2x-3)dx =[(1/3)x³-x²-3x]-2¹ (注) 『定積分の基本公式』 =(1/3-1-3) -(-8/3-4+6) =-3
- 『定積分の性質』『定積分の性質』『定積分の基本公式』∫(x²+1)dx-∫(x²+1)dx =∫(x²+1)dx+∫(x²+1)dx (注) 『定積分の性質ii)』 =∫(x²+1)dx (注) 『定積分の性質iii)』 =[(1/3)x³+x]-1² (注) 『定積分の基本公式』 =(8/3+2)-(-1/3-1) =6
- 『定積分の性質』『定積分の基本公式』∫(x²-2x+1)dx +∫(x²-2x+1)dx =∫(x²-2x+1)dx +∫(x²-2x+1)dx =∫(x²-2x+1)dx (注) 『定積分の性質iii)』 =[(1/3)x³-x²+x]-2² (注) 『定積分の基本公式』 =(8/3-4+2) -(-8/3-4-2) =28/3
- 『定積分の基本公式』∫(x+1)³dx =[1/4(x+1)⁴]0¹ (注) 『定積分の基本公式』 =4-1/4=15/4
- 『定積分の基本公式』『多項式の関数の原始関数』よりをかける∫1/2(2x-1)⁴dx =[1/5(2x-1)⁵×(1/2)]-1^1/2 (注) 『定積分の基本公式』 (注) 『多項式の関数の原始関数』ii)より1/2をかける =0-(-243/10)=243/10
問題4定積分で表された関数
関数 f(x)=∫(t²-t-2)dt の極大値、極小値を求めよ。
解答を見る
『微積分学の基本定理』を使ったf'(x)=x²-x-2=(x+1)(x-2) (注) 『微積分学の基本定理』を使った
であるから、f(x) の増減表は次のようになる。
| x |
… |
-1 |
… |
2 |
… |
| f'(x) |
+ |
0 |
- |
0 |
+ |
| f(x) |
↗ |
極大 |
↘ |
極小 |
↗ |
これより、f(x) は x=-1 のとき極大、 x=2 のとき極小となるのがわかる。
f(x)=∫(t²-t-2)dt =[(1/3)t³-(1/2)t²-2t]-1^x =(1/3)x³-(1/2)x²-2x-7/6
であるから、極大値 f(-1)=0、極小値 f(2)=-9/2。
最終更新: 2026-08-12
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