数学B 第5章 平面ベクトルと平面図形 — ベクトルの内積
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ベクトルの正射影
ベクトルのなす角の定義
0 でない2 つの a,b に対して,点 O を始点として
a =OA, b =OB
となるように点 A,B をとる.このとき,∠AOB の大きさ θ は,a,b によって決まる.この θ を,a と b のなす角(included angle) という.
a と b のなす角は,a と b が同じ向きのときは 0° であり,a と b 向きがすれるにつれだんだん大きくなり,a と b が開ききって互いに逆向きとなるとき 180° となる.

それ以上ベクトルが開いたときには,角度の狭いほうをなす角とするので,a と b のなす角 θ の取り得る範囲は 0°≦θ≦180° となる.
ベクトルの正射影と有向距離
0 でない2 つのa,b に対して,点O を始点として
a =OA , b =OB
となるように点A,B をとる.
いま,右図の点B からから直線OA に下ろした垂線の足をH とする.このとき,OHをb のa への正射影(orthogonal projection) ベクトルといいb→a と表す.正射影ベクトルb→a は,a,b とそのなす角θを用いて次のように表すことができる.
0° ≦ θ ≦ 90° のとき
b→a = OH/OAOA = (OBcos θ)/OAOA =(|b| cos θ)/|a|a
90° < θ ≦ 180° のとき
b→a = − OH/OAOA = −(OB cos(180° − θ))/OAOA =(|b| cos θ)/|a|a
つまり, 0° ≦ θ ≦ 180° で b→a =(|b| cos θ)/|a|aと表せる.この|b| cos θの値のことを,b→aの有向距離または符号付長さという.
なお,b→a の大きさは
|b→a| =|(|b| cos θ)/|a|a|
=(|b cos θ|)/|a||a|=|b cos θ|
で表される.
【例】
ますめの一辺の長さが1 の右図において
- b→a の有向距離は4
- c→a の有向距離は4
- d→a の有向距離は0
- e→a の有向距離は−2
- f→a の有向距離は−4
となる.
ベクトルの内積
ベクトルの内積の定義
任意の2 つのベクトル,a,b に対して内積(inner product)という演算 a ・ b を次のように定義する.
a ≠ 0 かつ b ≠ 0のとき
「a の大きさに,b→a の有向距離をかけたもの」,すなわち
a ・ b = |a| × |b |cosθ
とする.ここで,θ はa とb のなす角である.
a = 0 または b = 0 のとき
a ・ b = 0
とする.
§
定義1ベクトルの内積
a,b に対して,内積 a ・ b を
a ・ b = |a| |b| cos θ
とする.ここで,θ はa とb のなす角である.
また, a = 0 または b = 0 のとき, a ・ b = 0とする.
正射影ベクトルの内積での表し方
b のa への正射影ベクトルb→a は
b→a =(|b| cos θ)/|a|a =(|a||b| cos θ)/|a|²a ∵分母分子に|a| をかけた =(a ・ b)/|a|²a ∵a ・ b = |a||b| cos θ
と表すことができる.
内積の計算法則
ベクトルの内積に関して,次の計算法則が成り立つ.
§
定理2内積に関する計算法則
- 交換法則
a ・ b = b ・ a
- 結合法則
a ・ (kb) = k(a ・ b)
- 分配法則
a ・ (b +c) = a ・ b + a ・ c
- a ・ a ≧ 0
証明
ゼロベクトルを含む場合の成立は明らかなので,以下ベクトルはすべてゼロベクトルでないとする.
a とb のなす角をθ とすると
a ・ b = |a| |b| cos θ b ・ a = |b| |a| cos θ
より, a ・ b = b ・ a
右図において, kb→a = kb→a より
(a ・ (kb))/|a|²a = k(a ・ b)/|a|²a
a ≠ 0 だから,係数を比較して
(a ・ (kb))/|a|² = k(a ・ b)/|a|²
⇔ a ・ (kb) = k(a ・ b)
右図において, (b+c)→a =b→a +c→a より
(a ・ (b+c))/|a|²a =(a ・ b)/|a|²a +(a ・ c)/|a|²a ⇔ (a ・ (b+c))/|a|²a =((a ・ b)/|a|² +(a ・ c)/|a|²)a
a ≠ 0 だから,係数を比較して
(a ・ (b+c))/|a|² =((a ・ b)/|a|² +(a ・ c)/|a|²)
⇔ a ・ (b +c) = a ・ b + a ・ c
等しいベクトルどうしのなす角は0° であるから
a ・ a = |a||a|cos 0°= |a|²≧ 0
等号成立は |a| = 0,つまり a = 0のときに限る.
∎
問題1内積の計算法則
次の計算が成り立つことを,内積の定義および内積の計算法則1.~3.を用いて証明せよ.なお,2. を証明する際には1. を使ってよい.
- (a + b) ・ c = a ・ c + b ・ c
- (sa + tb) ・ (ua + vb)
= su |a|²+ (sv + tu)a ・ b + tv |b|²
解答を見る
- (a + b) ・ c = c ・ (a + b) (注) 計算法則1. = c ・ a +c ・ b (注) 計算法則3. = a ・ c + b ・ c (注) 計算法則1.
- (sa + tb) ・ (ua + vb) = (sa + tb) ・ (ua) + (sa + tb) ・ (vb) (注) 計算法則3. = (sa) ・ (ua) + (tb) ・ (ua) + (sa) ・ (vb) + (tb) ・ (vb) (注) 1. = su(a ・ a) + tu(b ・ a) + sv(a ・ b) + tv(b ・ b) (注) 計算法則2. = su(a ・ a) + (tu + sv)a ・ b + tv(b ・ b) (注) 計算法則1. = su |a|²+ (tu + sv)a ・ b + tv |b|² (注) 定義
問題2意味のある演算とない演算
次に表す式のうち,無意味なものには×を,意味のあるものには○つけよ.
- a + a ・ b
- (a ・ b) ・ c
- a ・ b ・ c
- a(b ・ c)
- (a ・ b)/a
- (a ・ b)/|a|
解答を見る
- (×)a はベクトルで a ・ b は実数.よって,ベクトルと実数の和となり無意味である.
- (○) a ・ b は実数でc はベクトル.よって,c の a ・ b 倍の意味をもつ.
- (×)2 つの・のうち,どちらを内積の記号とみるかで意味するものが異なるので無意味である.
- (○) b ・ c は実数でa はベクトル.よって,a の b ・ c 倍の意味をもつ.
- (×)ベクトルに除法はないので,分母にa がある時点で無意味である.
- (○) a ・ b は実数で|a| も実数であるのでその比を表す.
成分表示された平面ベクトルの内積
成分表示された2 つのベクトル, a =(ax,ay),b =(bx,by)の内積について考えてみよう.
まず, ex =(1,0),ey =(0,1)という2 つのベクトル(基本ベクトル(fundamental vector) )をとる.それぞれのベクトルの大きさは1 であり,なす角は90° であるから
|ex | = |ey | = 1 ①
ex ・ ey = 0 ②
∵|ex | |ey | cos 90° = 0
が成り立つ.
ここで,a は
a =(ax,ay)=(ax,0)+(0,ay) =ax(1,0)+ay(0,1)
であるから,a を,ex,ey に分解すると
a = ax ex + ay ey ③
となる.
同様にして
b = bx ex + by ey ④
となる.
よって, ,③, ④より
a ・ b = (ax ex + ay ey) ・ (bx ex + by ey) = axbx |ex |²+ (axby + aybx) ex ・ ey + ayby |ey |² = axbx |ex |²+ ayby |ey |² ∵② = axbx + ayby ∵①
となる.
§
定理3成分表示されたベクトルの内積
, a =(ax,ay),b =(bx,by)のとき
a ・ b = axbx + ayby
となる.
暗記1ベクトルを用いた三角形の面積公式
右の図のように,a とb で張られる三角形の面積をSとする.
- S を|a| と|b| と a ・ b を用いて表せ.
- , a =(ax,ay),b =(bx,by)であるとき,S を,,,ax,ay,bx,by を用いて表せ.
- 座標平面上に3 点,,A(2, 1),B(7, 2),C(4, 5) をとる.このとき,△ABC の面積を求めよ.
解答を見る
a とb のなす角を θ (0° ≦ θ ≦ 180°) とおき, |a| を三角形の底辺とみると,高さは
|b| sin θ とかけるから,三角形の面積S は
底辺高さよりであり,よりだから内積の定義S = 1/2|a| × |b| sin θ (注) S = 1/2(底辺)×(高さ) = 1/2|a| |b| √(1 − cos² θ) (注) sin² θ + cos² θ = 1 より sin² θ = 1 −cos² θ であり, 0° ≦ θ ≦ 180° より sin θ ≧ 0 だから = 1/2√(|a|² |b|² - |a|² |b|² cos² θ) = 1/2√(|a|² |b|² - (a ・ b)²) (注) 内積の定義
よって, S =1/2√(|a|² |b|² - (a ・ b)²)と表せる.
, a =(ax,ay),b =(bx,by)のとき
|a| = √ax² + ay² |b| = √bx² + by² a ・ b = axbx + ayby
であるから, S =1/2√(|a|² |b|² - (a ・ b)²)に代入して
S=1/2((ax² + ay²)( bx² + by²). .- (axbx + ayby)²)^1/2 = 1/2√ax²by²+bx²ay²-2axbxayby =1/2√( (axby - bxay)²) =1/2| axby - bxay |
よって, S =1/2| axby - bxay |と表せる.
,AB =OB −OA =(7,2)−(2,1)=(5,1), AC =OC −OA =(4,5)−(2,1)=(2,4)
より,△ABC の面積S’は
S’= 1/2|5 ・ 4 − 1 ・ 2| = 9
§
定理4ベクトルを用いた三角形の面積公式
, a =(ax,ay),b =(bx,by)のとき,a とb で張られる三角形の面積S は
S = 1/2|axby – bxay|
ベクトルの垂直条件
0 でない2 つのベクトル,a とb のなす角が90° とき,a とb は垂直(perpendicular) であるといい, a⊥b と表す.また,0 はすべてのベクトルに対し垂直と定める.
このとき,a とb の内積は, a ・ b = |a||b| cos 90°= 0 となる.逆に, a ・ b = 0 ならば a⊥b といえる.つまり
a⊥b ⇔a ・ b = 0
である.
また,成分表示された2 つのベクトル, a =(ax,ay)と b =(bx,by)が垂直であるとき
(ax,ay)・(bx,by)= 0 ⇔ axbx + ayby = 0
が成り立つ.
§
定理5ベクトルの垂直条件
, a ≠ 0,b ≠ 0 であり, , a =(ax,ay),b =(bx,by)とする.
a⊥b ⇔ a ・ b = 0
⇔ axbx + ayby = 0
問題3外心の位置ベクトル
, , AB = 3,BC = 7,CA = 5 である△ABC がある. , ,AB = b,AC = c,△ABC の外心をO とするとき,以下の問いに答えよ.
- b ・ c を求めよ.
- AO をb とc をもちいて表せ.
解答を見る
△ABC に∠A からみる余弦定理を使うと
AB・ AC・cos θ = (AB²+ AC²− BC²)/2 = (9 + 25 – 49)/2 =(−15)/2
であるから
b ・ c = AB・ AC・cos θ = (−15)/2
AO = xb + yc とおく.
まず,DO とAB は直交するから
DO ・ AB = 0 ⇔ (AO − AD)・ AB = 0 ⇔ (xb + yc − 1/2b)・ b = 0 ⇔ (x − 1/2) |b|²+ yb ・ c = 0 ⇔ 9(x − 1/2)+ yb ・ c = 0 ⇔ 9(x − 1/2)− 15/2y = 0 ①
また,EO とAC は直交するから
EO ・ AC = 0 ⇔ (AO − AE) ・ AC = 0 ⇔ (xb + yc − 1/2c)・ c = 0 ⇔ xb ・ c +(y − 1/2)|c|²= 0 ⇔ xb ・ c + 25(y − 1/2)= 0 ⇔ − 15/2x + 25(y − 1/2)= 0 ②
式,①,②を連立して
\begin{eqnarray}
\left{
6x − 5y = 3 −3x + 10y = 5
\right.
\Longleftrightarrow
\left{
x = 11/9 y = 13/15
\right.
\end{eqnarray}
よって, AO =11/9b + 13/15c.
問題4垂心の位置ベクトル
, , AB = 5,BC = 6,CA = 4 である△ABC がある. , ,AB = b,AC = c,△ABC の垂心をH とするとき,以下の問いに答えよ.
- b ・ c を求めよ.
- AH をb とc をもちいて表せ.
解答1を見る
△ABC に∠A からにらむ余弦定理を使うと
AB・ AC・cos θ = (AB²+ AC²− BC²)/2 = (25 + 16 – 36)/2 =5/2
であるから, b ・ c = AB・ AC・cos θ = 5/2
AH = xb + yc とおく.
まず,CH とAB は直交するから
CH ・ AB = 0 ⇔ (AH − AC)・ AB = 0 ⇔ (xb + yc − c)・ b = 0 ⇔ x|b|²+ (y-1)b ・ c = 0 ⇔ 25x+ (y-1)5/2 = 0 ⇔ 10x+y = 1 ①
また,BH とAC は直交するから
BH ・ AC = 0 ⇔ (AH − AB) ・ AC = 0 ⇔ (xb + yc − b)・ c = 0 ⇔ (x-1)b ・ c +y|c|²= 0 ⇔ (x-1)5/2 + 16y= 0 ⇔ 5x+32y= 5 ②
式,①,②を連立して
\begin{eqnarray}
\left{
10x + y = 1 5x + 32y = 5
\right.
\Longleftrightarrow
\left{
x = 3/35 y = 1/7
\right.
\end{eqnarray}
よって, AH =3/35b + 1/7c.
解答2を見る
(【解答1】と同じ)
ベクトルの正射影を考え
AD =(b ・ c)/|b|²b =(5/2)/25b = 1/10b ①
同様にして
AE = 5/32c ②
である.
まず,点H は線分BE 上にあるから, BH : HE = s :1 – s とおくと
AH = (1 − s)AB + sAE ⇔ AH = (1 − s)b + 5s/32c ③
また,点H は線分CD 上にあるから, CH : HD = t :1 – t とおくと
AH = tAD + (1 − t)AC ⇔ AH = t/10b + (1 − t)c ④
いま,b とc は1 次独立であるから, ,③, ④ より
{ arrayl 1 − s = t/10 5s/32 = 1 – t array . ⇔ { arrayl 10s + t = 10 5s + 32t = 32 array . ⇔ { arrayl s =32/35 t = 6/7 array .
よって, AH =3/35b + 1/7c.
最終更新: 2026-08-10
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